翔ぶが如くのあらすじと感想第42話「佐賀の乱」。佐賀士族の反乱。江藤は佐賀城を奪うが、大久保はこの乱の鎮圧に不退転の決意で挑む。一方世間は鹿児島の大西郷の動きを固唾を飲んで見守っているが・・・?明治編を引っ張って来た江藤新平の最期!翔ぶが如くのあらすじと感想第42話

翔ぶが如くのあらすじ第42話「佐賀の乱」

明治7年(1874年)2月、福岡城。官軍の司令官は薩摩の野津鎮雄陸軍少将である。福岡県県令山根と野津は作戦会議を開いていた。佐賀城は既に江藤を首領とする佐賀士族に奪われている。



「野津少将!大久保卿がお見えです!」

「お見えって?どこにじゃ?」

「この城にです!」



官軍の本営がおかれたこの城に内務卿大久保利通が姿を現す。

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翔ぶが如くのあらすじ第42話上巻「佐賀城攻防戦」

「この度の不祥事、誠に申し訳ございません・・・!」



福岡県県令山根は今回の不手際を詫びる。しかし、大久保は即座に現在の戦況を問う。これには官軍の司令官を務める野津少将が答える。



「目下、佐賀城は佐賀士族の手にあります」

「また、昨日攻撃をかけましたが佐賀士族の前に全滅しております」



大久保は佐賀城と福岡城の地図を見ながら今後の方針を示す。即ち、佐賀の反乱が他府県に広がる前に鎮圧する。





大久保が最も気にしていたのは佐賀士族が福岡藩の士族にも反乱に加わるように呼び掛ける事だ。
しかし。



「只今までの探索ではそのような動きは来ておりません」

「・・・来ていない・・・?」



切れ者江藤にしては妙だが・・・。



「熊本は?まだなら早急に手当をして下さい」

「血を見れば、血が騒ぐものです」



その頃、佐賀城内では江藤が学問の講義をしていた。江藤について来た佐賀士族達は少々戸惑っている。目下、政府軍と第二の維新を戦っているはずだが・・・?



「・・・江藤先生・・・我々はこのような事をしていて良いのでしょうか?」

「このような事とは?」

「今は戦いの最中では・・・」



江藤は自分は常に「法」を以て正義を為してきたと話す。そして、今回佐賀が立ったのは正義の為。即ち、土佐と薩摩を立たせるためであると説く。



「我々は正義の松明を掲げたのだ!」



佐賀士族達はやや戸惑いながら江藤を見上げていた。




しかし、江藤の言う事もあながち的外れをは言えない。政府に反発して野に下った西郷は西郷を慕う元近衛兵達と薩摩にある。世間は西郷が立ち上がるという噂が流れていた。




西郷は久光に呼び出される。西郷と大山が待つ事しばし、久光が現れる。久光もまた、大山と同じく幕末のままの姿である。



「吉之助!此度佐賀で乱がおこっているがお前はこれに加わるつもりか?」

「そのような事は決して!それは反逆にございもす・・・!」

「しかし、世間はそうは見ておらん!」



久光は世間の噂を「消す」には西郷が桐野達元近衛兵を率いて政府軍に加わるべきではないかとと問う。西郷は隠居の身であると抗弁するが、一方で西郷は未だ「陸軍大将」のままであり、仮に軍勢を率いても差し障りがある訳ではない。また、御親兵を率いて廃藩置県を断行し久光を裏切った事を持ち出し本心を述べよと迫る。



「薩摩は動かん事が薩摩の為にございもす!」

「身命に誓ってこの西郷吉之助、動くつもりはございません!」



「そうか・・・相分かった!」



西郷は動かない。しかし、大山は何故久光の命令を断ったのかと咎める。



「一蔵どんと仲直りするよい機会ではないか!」



大山はそう話すが西郷は、



「動かない事が大久保の為になる」



と、話す。
鎮台の兵はほぼ皆徴兵された「百姓や町人」であり士族ではない。その、「徴兵された兵」が勝つ事で大久保の新しい政府も自信と力を持つはずであると。



「今回は一蔵どん自ら出陣しておる」

「その覚悟で来ているはずだ」

「また、江藤っちゅうお人は右に出る者がおらんほど賢い男じゃが・・・」

「機を見る事が出来ない」



「じゃっとん・・・もし佐賀の士族が敗れたら・・・」



大山は複雑な感情を吐露する。戦争は士族の専売特許だったはずだが、佐賀士族が百姓に負けるようでは天地がひっくり返ると。もはや、名実ともに「武士」の存在異議が問われる。



「そいも時代の流れでごわす」



西郷は静かにそう話す。




佐賀城攻防戦は激しさを増していた。大久保は自ら前線へと立ち戦況を視察する。




今回の戦い挑む大久保と江藤の覚悟については圧倒的に大久保に分があったと言える。佐賀士族だけで広がりを見せなかった「佐賀の乱」は徐々に鎮圧されていく。



「この戦は負けだな」

「江藤先生!私達は江藤先生と一緒に討死する覚悟です!」



江藤は「玉砕」を主張する佐賀人に対して、



「負け戦で死ぬのは犬死である」

「行き残れ。私もまだ政府でやるべき事がある」



「え、江藤先生は何処に・・・?」



「西郷の元へ向かう」



「江藤先生!大西郷は我々の誘いを断りました!」



「直接行けば変わる事もある」



江藤は佐賀城を脱した。しかし、その行方はようとして知れなかった。




東京ではポリス隊に捕らえられていた矢崎が牢から川路の執務室へと連れてこられる。矢崎は既に岩倉暗殺未遂の犯人が逮捕されている事を知っていた。



「私を拘留する理由はなんですか!?」

「これこそ!貴方の元上司でもある江藤先生が言っている官の横暴である!」


「そうだ・・・だから君を釈放する」



川路は縁あって色々と仕事を頼んでしまったが、これからは政治の裏側には顔を出すなと忠告する。そして、江藤が佐賀の乱で敗北したことも教えるのであった。

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翔ぶが如くのあらすじ第42話中巻「江藤と西郷」

矢崎八郎太は釈放されると五郎八と千草の暮らす長屋を訪ねる。色々とあったが五郎八と千草は矢崎の来訪を歓迎してくれる。



「よく無事に戻ったねぇ!まずは遠慮はいらねぇよ!」

「ゆっくりと休みな・・・!」



「ありがとうございます・・・しかし・・・」

「ここへ来たのはお金の無心に参りました・・・!」



顔を見合わせる五郎八と千草。



「いったい何に使うんだい?」



五郎八が何故銭が必要なのかを尋ねると矢崎は九州へ戻り江藤と行動を共にするためと答える。佐賀は政府に鎮圧され危険であり思い留まるように説得するが・・・。



「私にとって江藤先生はやはり恩人なんです」



江藤の言う「万民が法の下の平等な社会」を純粋に追い求める江藤について行きたいのだと語る。



「そうかい・・・分かった!お前さんにとっては大切な事なんだな」

「ちょいと銭の算段に出かけてくるぜ」



大河姫

五郎八さん!そいつはあきまへん!こんな奴に銭を貸したら・・・!本人の為になりもはん!嗚呼‥・五郎八さんは生粋の江戸っ子や・・・。




銭に困る者もいれば・・・そうでもないものもある。海老原穆の創設した「草思社」がある市ヶ谷の千絵の屋敷では天下国家について昼から熱い議論が行われていた。



「おいは一蔵どんに恨みがある訳ではないが・・・」



今回の「佐賀の乱」鎮圧に関しての議論である。皆、大久保が佐賀の乱鎮圧に際して、「司法・行政・軍事」を委任されて自ら鎮圧にあたった事を問題視していた。



「これこそ独裁!」

「御維新の精神は万機公論にて決すべしだったはず!」



海老原は諸悪の根源は大久保であると語る。



「海老原様、お弁当が届きました」

「おお!千絵さん!そんな時間か!皆たもってくりやえ!」



海老原は集思社の面々にはいつも仕出し弁当を頼み食事をふるまっていた。



「海老原様ちょっと・・・」

「はい、千絵さんどないしもした?」

「お昼ご飯くらいは十蔵に準備させますよ?」

「はぁ・・・」

「折角新聞社は好調なのに・・・」

「ん?あ!銭の心配ですか!そいなら心配いりもはん!おいは金持ちやで・・・」



海老原はそう笑うのであった。




佐賀では大久保が佐賀城へ入城し乱の後始末を精力的に行っていた。しかし、首魁の江藤に関しては行方が知れなかった。



「大久保卿!ようやく江藤の行方が分かりました!行き先は薩摩です!」



一同にやや動揺が広がるが・・・



「西郷前参議なら心配はなか!」

「立つならとっくに立ち、この佐賀城を囲んでいる・・・」



大久保は自分に言い聞かせているようでもあった。




江藤は佐賀城を脱するとようやく西郷邸へとたどり着く。



「主人は留守ですが・・・」

「ならば待たせて頂きたい・・・軒先でもどこでも構いません」

「しかし・・・いつ帰って来るのか・・・」



「江藤先生ではございませんか!?」



帰って来た小兵衛は江藤の為に「行方知れず」の西郷の行方を探す。西郷は鰻温泉で湯治の際中であった。



「江藤どん・・・一別以来でございもすなぁ」

「さぞつかれた事でしょう。まずは温泉に入りやんせ」



「私は湯治に来たわけではありません」

「西郷先生・・・共に立っては頂けないでしょうか?」



江藤は政府の腐敗を批判して共に下野した同志ではないかと語る。



「江藤どん・・・おいはただ真っ直ぐに朝鮮へ行きたかった・・・」

「太政官を辞するに辺り誰とも気脈を通じてはおらん」



江藤は粘り強く西郷を説得する。今、政府が恐れているのは大西郷と薩摩兵児達であり、また佐賀へ銃口を向けたは薩摩に向けたも同義であると。



「江藤どん・・・そげな事よりもご自分の始末をどうするおつもりでございもすか?」

「私個人の事など国家の前では些末な事!私は己の政治信条を貫くのみです!」



西郷は江藤の覚悟を聞いて頷く。



「江藤どん、やはり今夜は寝もんそ」



「エ・・・?」



「おいも若い頃は気が立ったもんでございもすが・・・」

「気が立っている時に物事が成った試しがなかでございもす」

「江藤どん・・・汗臭かぁ・・・やはり湯に入りもんそ」



結局二人は共に鰻温泉に浸かり休む事に。江藤は湯に浸かる「大西郷」を不思議そうな目で見つめていた。




翌朝。




西郷は朝靄の中庭先に出ると江藤に思いがけない提案をする。



「ひとつだけ案がございもす」



「それは!?」



「大山綱良という者がおりもす」

「その者を通じて久光公にすがられたらよか」



小兵衛が既に江藤の人相書きは全国に手配されている事を知り知らせてくれたことも伝える。



大河姫

歴史的「指名手配第一号」です。因みに、制度の制定者は江藤新平その人




確かに江藤の言う通り政府が最も恐れているのは薩摩である。さらに、維新が成ったのは、



「薩摩の財力と武力があったればこそ」



と、いう事もあり久光には遠慮がある。



関連記事:→薩摩の財政を再建した調所広郷の活躍は蘭癖のおかげ

関連記事:→尚武の風土、江戸時代を通じて薩摩は最もアレが多い


江藤は反発する。
政府に居た頃、久光は政府の行う事には悉く難癖をつけて来た。



「じゃっとん!おまんさぁを庇護できるのはあんお方しかおわはん」



「貴公は私に久光公の袖に逃げ込み大久保に頭を下げろと言うのですか!?」



「そん通りでごわす!」



「断る!私は薩摩に命乞いに来たのではない!」

「貴公を説得に来たのです!」



暫し沈黙が流れる。



「再度申し上げる!我らと立つ事をご決心ありたい!」



「そいは出来もはん」


「何故!?」



「江藤どん!!!おはんは三千に兵を見殺してきもした!」

「そげな大将と行動を共にする事は出来もはん!!」

「悪い事は言わん・・・おいの言う通りにせんと」

「当てがちがいもす・・・江藤さぁ」



江藤は涙を流し俯く。



「分かりました・・・しかし、私は自首いたします」



江藤は東京へ行き、自分の信念を披露すると言う。



「これも戦いです。私はあくまでも戦います」



江藤は西郷の元を後にする。西郷に見送られる江藤。




西郷は江藤の左肩に手を置くと愛おしいそうに軽く掴み撫でる。江藤は全身に何か「力」が流れてくるように感じる。江藤は「大西郷」の大きさをこの時初めて知ったような気がした。




江藤はこの後土佐で逮捕され佐賀へ送られる事になる。

翔ぶが如くのあらすじ第42話下巻「新しい日本人」

「母上!母上!!」

「なんですか騒々しい!」

「母上!寅太郎どんのとこでは菊次郎さぁが国元へ帰国したと言っちょりもす!」



三男の利武と四男の達熊は子供ながら一緒に留学していた兄たちが帰国しない事を不思議に感じていた。。
満寿は、



「ないごて我が家の兄上達はアメリカへ残ったでごわんそかい?」

「それは、兄上達はまだ学問の途中だからでしょう?」

「・・・父上も佐賀迄来ていると聞きました。いつ鹿児島へ戻りましょうか?」



父の事も気になるようだ。



「お仕事がお忙しいんでしょう」

「さ!母の忙しいから外で剣術の練習でもしにいきやんせ!」



達熊はすぐに外へ出ていくが、利武は何か感じるものがあったようだ。何かを言いかけたが達熊を追って外へ出かけて行った。




西郷は開梱小屋で農具の手入れをしていた。そこへ、田舎の開梱小屋にはまったく似つかわしくない洋装の細身で背の高い男が近づいて来ていた。西郷は農具にかかりきりで気付かない。



「父上・・・!」

「・・・菊次郎か・・・?」

「はい!西郷菊次郎只今国元へ帰国しもした!」

「そうかぁ・・・よう戻った!」

「今日あたりはこの開梱小屋におられると小兵衛叔父から聞きもした」

「まあ、あがりやんせ!」



西郷は逞しくなった菊次郎を見て目を細める。



「従道叔父のいる東京に留まったら良かったのだがなぁ」



西郷は菊次郎のとの再会を喜ぶが学んだ事を東京で活かして欲しかったとも話す。この田舎ではせっかく学んで来た事も活かす事が出来ないと。



「おはんは東京に残るべきだった・・・」

「はい・・・」



菊次郎はやや俯く。西郷はせっかく戻って来たのに言い過ぎたと感じたのだろうか?



「じゃっとん・・・!良く来た!」



菊次郎はその後西郷邸に戻ると糸にも帰国の挨拶をする。



「菊次郎さぁ・・・良く戻りもした・・・!立派になって!」

「母上・・・ありがとうございもす」

「父上はなんと言っていましたか?」

「・・・東京に残るべきだったと・・・」

「そうですか・・・」



糸もまた、今は「難しい時代」であり父隆盛の言う通り、東京に残った方が良かったと思うと話す。



「はい・・・しかし、難しい時だからこそ父上の側にいたかったのです」

「菊次郎さぁはもう立派な大人じゃ・・・自分で決めた事には母な何も言いません」



糸は菊次郎の芯の強さを感じる。



大河姫

菊次郎役は六浦誠君。いや、実は我が孫義信の少年期も演じていた。




一方、土佐で捕らえられた江藤新平は佐賀に送られると佐賀臨時裁判所で裁判を受ける事になる。江藤は自らの考えをこの裁判を通して披歴するつもりでいたが・・・。権大判事河野敏鎌は判決文を読む。



「・・・逆意を逞しくするかどによって除族の上梟首申し付ける」



驚く江藤。
梟首とは江戸時代で言うところの「獄門(さらし首)」である。



「これは裁判ではないぞ!」



江藤は叫ぶ。
正式な裁判手続きは踏まれなかったのだ。奇しくも判決を言い渡した河野敏鎌は江藤の元部下である。江藤は大久保の姿をみつけると憎悪の言葉を投げつける。



大久保は無表情のまま臨時裁判所を後にする。




刑はその日に内に執行された。




江藤の変わり果てた姿を見て泣いている青年が1人。矢崎八郎太はついに生きている江藤と会う事は出来なかった。




刑執行の後、大久保は佐賀の様子を従道に尋ねる。



「政府を恐れてか、際立った意見は聞かれませんでした」

「しかし、私の意見として、江藤への処分は些か重過ぎたのではないでしょうか?」

「江藤は正四位朝臣兼司法卿まで務めた男です」

「反乱は断固許せぬとしても、これでは政府への憎悪は大久保卿一身に集中しもす」



従道は大久保の身を案じていた。



「それで良い。信吾どん、江藤を東京に送って正式な裁判にかけたらどうなったと思う?」



「分かりません、が、それが正しい法の在り方だったと思いもす」



「江藤にあの論理をもって自身の行動を弁護させれば岩倉三条の腰は砕けた」



「はい・・・」



「東京政府の権威など決して強大なもんではない」



信吾は大久保が言わんとしている事は理解出来る部分もある。



「おはんは軍人じゃ。今度の反乱で全国の不平士族が結束して立ち上がった時」

「空になった東京を突く事はいとも簡単だったと知っているはずじゃ」

「それ故、政府の姿勢を萬天下に示したのじゃ」

「特にそれを薩摩に対して見せつけねばならんかった」

「例え誰であっても吉之助さぁを担がせてはならん・・・だから事も急いだ」



大久保はこれしか方法はなかったと信吾に、いや自分にも言い聞かせるように話す。従道は大久保の覚悟を改めて思い知る。全て、確信犯なのだ。




西郷は「江藤死す」の報を知り、惜しい事だと菊次郎に話す。あれ程、諸外国の制度に通じて、しかもその論理を組み立て制度を作れる男はおらん。



「一蔵どん以外にはあれ程のビンタ(頭)を持つ者はおらん」

「江藤という男の失敗は佐賀から抜けきれんかった事じゃ・・・」

「おはんには「新しい日本人」として生きて欲しか」



西郷は「新しいモノ」を創るには犠牲が必要であり、その為に維新で多くの血が流れたこと、そして、自分自身も本来そこで死ぬべきだったと語る。



「おいは、薩摩を捨てる事は出来ん」



菊次郎はまるでその事はとうの昔から分かっているような表情で黙って父隆盛の話を聞いている。




以上、翔ぶが如くのあらすじと感想第42話「佐賀の乱」でございます。

翔ぶが如くの感想42話「佐賀の乱」

翔ぶが如くの第二部を牽引してきた江藤新平が亡くなりました。江藤を通して「西郷」と「大久保」の生き方を照らしていたように思いました。



「佐賀藩から抜けきれなかった」



藩閥を憎んでいたはずの江藤が無意識の内に「佐賀藩」に拘っていたのは皮肉な話でしょうか。しかし、だからこそ西郷は「共感」をした部分もあったように感じます。

翔ぶが如くの感想42話「西郷と大久保の中間」

誤解を恐れずに言うと、西郷と大久保の中間にいるのが江藤新平なんだと思います。




大久保的要素で言えば、西郷も言っていましたが、



「諸外国の制度に通じて、しかもその論理を組み立て制度を作れる男」


という処。




いや、大久保は2年間の洋行を経て、今がある訳ですが、江藤はこの日本にいながら書物から学び、先進的な諸外国の制度に精通したわけですから、ある意味では大久保以上のビンタ(頭)と言えるかもしれません。




明治編の第1話「揺れる新政府」で登場した時は、



「アクは強いがカミソリのようによく切れる男」



と、評しておりました。




大久保は江藤新平にはある意味で「期待」をしている様子が伺い知れますね。そして、江藤自身も「薩長憎し」と言えども、カネに汚く狡猾なだけの長州や、ひたすら女の尻を追いかける薩摩の芋侍は兎も角、大久保の「頭脳」には一目置いていいました。




西郷的な要素もあります。江藤は西郷を全く評価していませんでした。



「何の役にも立たない人の道なぞ説いている」



と、寧ろ軽蔑する感じでしたね。




しかし、一方で「親分」として「書生」の面倒を見るという部分は西郷に近い。実際、江藤の元にはこの翔ぶが如くで描かれているように、矢崎や河合のような書生達が多く出入りしており、江藤は自分の身銭を切って面倒を見ていました。




ただ、西郷は江藤の「能力」は高く評価していても、その「志」が、



「政府の役人か御用商人の番頭か分からん輩」



と、同じだと思っていたとのではないかと思います。




もう少し分かりやすく言うと、



「山県有朋と同じ程度(か、毛が生えた程度)」



と、いう扱いですね。
しかし、



「佐賀の乱」



を経て、それが誤りであった事に気付いたように思います。

翔ぶが如くの感想42話「江藤と西郷」

留守政府の中で西郷が多少なりとも、



「認めていた」



のは板垣退助だけだと思います。板垣は「軍人肌」であり、維新でもその方面では大いに活躍をしています。また、カネカネカネの長州閥とは一線を画し、身綺麗でもあります。




江藤に関しては「征韓論論争」では行動を共にしたものの、西郷はそれを「打算から出ている」と気付いていたと思います。




佐賀の乱を経て、江藤と西郷は再会します。




しかし、二人の間には深い河が流れていた。




それが、最後の最後でその河に橋が架かった気がしました。



「三千の兵を見殺しにしてきた!」



それはそうなんですが、江藤にはその意識はないのですよね。



「負けたんだから死ぬのは無駄」



佐賀城を退去するにあたって同志の佐賀藩士に言い残した言葉。自分も死ぬ気はないし、お前達も生き残れ。




西郷は「我が身可愛さ」という部分も多少なりともあって江藤は逃げて来たと感じていたと思います。ただ、一方で江藤の能力は「新政府に役に立つ」事は分かっている。
その結果が、



「久光の袖に逃げ込め」



という回答、まさに山県有朋と同じ扱いですね。




この時、江藤はある意味では「西郷の価値観」を理解した気がします。



「ああ、そういう事なのか・・・」



だから、諦めた。
そして、



「自分の戦い方」



をすると決意する。




一方で西郷もこの時、



「ああ、そういう事なのか・・・」



と、江藤新平という漢を理解したんじゃないかと。




江藤新平は、方向性は異なれど、ただ真っ直ぐに「あるべき国造り」をしたいと考えていた。




その志は決して「私欲」に塗れたものではない「純粋なモノ」だったと。




別れ際、西郷が江藤の肩を愛おしそうに、それでいて力強くさする様子を見た時に二人の想いは通じていたように感じました。




・・・惜しい。




二人はもっと話し合うべきだったんだ。

翔ぶが如くの感想42話「大久保変身」

江藤は東京での裁判を望みますが、結局佐賀で「梟首」となります。




従道が言っていた通り、



「正式の裁判にかけるべき」



と、いうのが大久保以外の政府首脳の考えだったと思います。




しかし、三権を掌握した大久保ば江藤に弁護の機会を与えずその場で処断。




大久保にはそういう処がある。




覚悟を決めると独りで重い決断が出来る。
そして、孤独にも強い。




それは、幕末期においても、



「裏切り者」
(久光に尻尾振りやがって!)



と、言われ続けてきた大久保の強さの一つだと思います。




でも。




従道がいる。




せめてもの救いは西郷隆盛は政府にはいなくても、
その弟、大久保にとっても弟だと思う、従道という「理解者」がいる事かな。




以上、翔ぶが如くのあらすじと感想第42話「佐賀の乱」でございます。

大河姫

今宵は此処までに致します。

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