太平記(大河ドラマ)のあらすじと感想第9話「宿命の子」。宿命の子直冬の誕生。そしてもう一人の「宿命の子」とも言える大塔宮こと護良親王もご登場。太平記のあらすじと感想第9話

太平記(大河ドラマ)あらすじ第9話「宿命の子」

貞氏は夢を見ていた。幼いころ、父家時が霜月騒動に連座し、家名を守るために自刃するのを見ていたのだ。眼を覚ますと枕元には妻の清子がいる。



「夢を見ていた・・・父上(家時)の夢を・・・」



そこに、柳営の様子がおかしいと直義が飛び込んできた。



「父上!柳営内にただならぬ気配ありとの事です!」

「高氏は戻ったのか?」

「いえ、まだ、兵を引き連れ兄上をお迎えに行きます!」

「待て直義・・・(ドタ)」



「ち、父上!!!」



貞氏は倒れた。

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太平記あらすじ第9話上巻「月」

幕府柳営華雲殿は混乱の極致にあった。高氏は混乱の最中、月明かりを頼りに登子と共に華雲殿からの脱出を試みるが、どうやら天狗の中には長崎円喜ではなく高氏を狙う者もいるようだ。




高氏は登子と月明かりを頼りに出口へと急いでいたが、突如足を止める。登子を庇いつつ、闇に向かって問いかける。



「何者だ・・・?何故儂を狙う?」



高氏の誰何に先程の「天狗」の一匹が物陰から姿を現す。天狗は抜刀し、高氏に斬りかかってくる。高氏もそれに応戦する。




撃ち合う事、一合!二合!!三号!!!




数度斬り結ぶが、高氏はついに天狗の太刀を掬いあげて飛ばし、天狗の仮面も叩き落とす。



「お前は・・・!」



高氏は男の顔に見覚えがあった。ましらの石である。




石は徒手空拳となっても戦意は衰えず、拳を握り低く構える。



「何故、儂を狙う?」

「お前は儂の両親の仇だ!」



かつて、足利党の者に田畑を荒らされ上の火をかけられた恨みを語る。誰がやったのかは今や分からないので、足利党の棟梁である高氏を狙うのだと。石は隙を見て落とした太刀を拾い上げ再び斬りかかってくる。



「おまけに・・・お前は藤夜叉に手を付けた!!」

「藤夜叉は儂の妹だ!」



高氏に明らかに動揺が見られる。すぐ後ろには登子が事の成り行きを心配そうに見つめているのだ。




石は登子に向かい、



「お前の婿殿は儂の妹を慰み者にしたのだ!!」



大河姫

石、それはちょっと言掛りが過ぎるかも・・・。気持ちは分かるけど。

登子は驚き、石と高氏の表情見比べる。高氏は登子の戸惑いながらも問いかけるような視線に耐えられず眼を逸らす。




石は再び斬り込むが、ようやく府内の兵が騒ぎを聞いて駆け付けてくる。



「曲者があそこにいるぞ!追いかけろ!」



石は舌打ちすると、ここが潮時かと闇に消えて行った。




先程の喧騒が嘘のようだ。




辺りには誰もいなくなり、高氏と登子の二人になる。高氏は何も言わずに歩きだす。そして、登子も何も問わずについてくる。




月の美しい晩である。



「登子、先程の者が申していた事は真実じゃ・・・」

「儂は・・・その藤夜叉という白拍子と・・・」

「一時の遊びではのうて・・・」



こと、此処に至りては何も言わないワケにはいかない。しかし、何を言えば「正解」か分からない高氏は思わず正直な気持ちを話しかけて、止まる。なんという事を新妻に言っているのだ・・・。




月の美しい晩である。




登子は水溜まりに月が映っている事に気付く。



「大きな月だこと・・・ほら!そこの水の面に・・・」



高氏からは見えていないようだ。



「そこからは見えませぬか?美しゅうございますのに」

「登子は昨日の月が欠けていたのか満ちていたのか存じませぬ」

「また、知りたいとも思いませぬ」

「今日の月、明日見る月がこのように美しければそれで良いのです」

「・・・綺麗な月だこと」



高氏は登子に心から感謝した。



大河姫

月は綺麗。登子はもっと綺麗。やっぱり私はガチの登子派です!

そこに、直義が家人を引き連れて迎えにやってきた。



「兄上!!!」

「おお!直義か!」

「兄上、父上が・・・」

太平記あらすじ第9話中巻「置文」

高氏が足利屋敷に戻ると貞氏は再び眠りについていた。

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枕元には母清子、そして高師重(足利家執事、貞氏側近)など側近と医師がいた。息子の心配そうな様子に母清子は安心させるように語り掛ける。



「ここ(胸)が苦しいとな・・・」

「一門との方との連日の宴で疲れが溜まっていたのでしょう」



貞氏は穏やかな様子で眠りについている。高氏は母の言葉に安心する。



「若殿、ちょっとこ此方に・・・」



高師重に呼ばれて人気のない場所へ案内されると、貞氏の「本当の病状」に関して知らされる。



「息の道にただならぬ病ありとの事です」



この話は清子にも直義にも伝えられていないという。高氏は嫌な汗が流れてくるのを感じる。



「急じゃの・・・見立て違いではないのか?」



師重は首を振り、覚悟を促す。



「若殿!」



高氏は自身の背負っているものの重さ、父が背負って来たものの重さを思わずにはいられなかった。




高氏は貞氏の部屋に戻る。貞氏は目を覚ます。



「高氏?いつ帰った??」

「父上・・・先程!」

「火の音がするな・・・火が見たい」



表ではかがり火が炊かれている。




貞氏は起き上がり、かがり火を見ながら最近よく見る父(高氏の祖父)家時の夢の話をする。家時は霜月騒動に連座し、自刃している。




高氏は貞氏の体調を心配し、あまり喋らない方がと話すが、貞氏は「いずれ伝えなければならないこと」と応える。



「足利家は源氏の嫡流」

「北条に悪政あれば之を討ち天下を獲り民の苦しみを和らげるのが務め」

「故に武家の棟梁と申す」

「しかるに、この家時・・・」

「徳無く、才乏しく、北条の責めを受け、僅かに家名を守るため死にゆくのみ」

「この無念が分かるか?無念が分かるなら天下を取れ」

「その方(貞氏)に出来ぬなら、その子に獲らせよ」

「その遺言を血でお書きになり、置文として託された」

「そして、儂(貞氏)の眼の前で腹を切り裂かれた」



「祖父家時様御自害の件は聞き及んでおりましたが」

「遺言の儀は(存じ上げませんでした)」



「この四十年それとの戦いであった」

「何度も思った」

「何故、源氏の棟梁として生まれたのか?」

「じゃが、そこから引き下がる事は出来ぬ!儂も其方も!」



貞氏はそこまで一気に語ると一呼吸置く。
そして。



「しかるに、この貞氏、徳無く、才乏しく僅かに家名を守ってこの病だ」



「父上・・・!」



「高氏!あとを頼む。父のように迷うな!」

「神仏の許しあらば天下を取れ!」

「そして、それが道と思ったら弓を取れ!」



そして、今日高氏が「足利の主」となった事を一門に知らせるよう師重に命じ、家時の「置文」を高氏に見せるように伝える。




高氏の前には師重、そしてその息子の師直が控えている。置文は先代執事、師氏(師直祖父)に託され、貞氏が跡を継いだ後は師重に託されていた。



「執事も嫡子師直に引き継がせて頂きとうございます」

「置文も師直よりお渡しさせて頂きます」



師直は高氏の前に「置文」の入った箱を差し出す。



「ご先代の置文にございます」



「今は読まずにおこう」

「いずれ、読まねばならぬ時まで預けおく」



「承知仕りましてございます」



この夜は慌ただしい。




北条高時による円喜暗殺の失敗、貞氏の病と足利家の代替わり。一番気を揉んでいるのは直義だが、直義は完全に蚊帳の外である。



「兄上!兄上は師重たちと何を!父上のご容態は!?」

「誰も儂には何も教えてくれぬ・・・」

「いざとなったら「次男」はツマランものじゃ」



「許せ、明日まで師重に口止めされておる・・・」

「それ程お悪いのか?」

「今日明日というワケではないが」



足利兄弟はふと、屋敷の灯りのある部屋に目を移す。そこには母清子と登子の姿があった。



登子は義理の父である貞氏を心配しているが、清子は安心させるように大事ないと諭していた。



「直義・・・北条は先が見えたぞ」



慎重派の高氏の言葉に目を見張る直義。




高氏はもはや赤橋守時一人の力ではどうにもならず、そして、もし自分たちが北条に弓引く時の登子の立場が憐れであると言う。



「お前が北条を嫌う気持ちは分かる」

「が、登子を姉と思ってやってくれぬか?」



大河姫

「我らが立つ時登子が憐れ」分かってくれ、直義よ。

直義は清子と仲睦まじい様子で語りある「北条の嫁」を複雑な気持ちで眺めていた。




数日後。




高氏は足利家の家督を継承した。




これにより高氏は上総と三河の守護となり、17カ国、34の領地の主となった。鎌倉御家人最大級の大名である。




一方、幕府は「あの夜」以来混乱を極めていた。高時は実母覚海尼のいる東慶寺に籠り、ひたすら長崎円喜の怒りが解けるのを待っているという。金沢貞顕は東慶寺の様子を報告する。




幕府内では次期執権についての議論もあるが・・・。長崎円喜は大いに不満である。



「金沢殿!そのようなこと聞くために東慶寺へ行かれたのか?」

「儂は次期執権は金沢殿こそと思っておのですぞ?」



「はあ・・・」



金沢貞顕は気のない返事である。東慶寺で高時の実母覚海尼にやり込められたのが堪えていた。



大河姫

貞顕、良い人なんだろうね。都合の。

その東慶寺では高時の母覚海尼が凄まじい剣幕で怒っていた。



「城介(安達時顕)殿!高時殿は名執権貞時の子で得宗ぞ!」

「長崎如きに弱みを握られるような事をした!?」

「闇討ち等下!討ち漏らすなど下の下じゃ!!!」



大河姫

「闇討ちは下、討ち漏らすのは下の下」名言頂きました。

高時は縁側でお菓子を食べながら母の怒りを眺めている。



「母上・・・城介をあまり責めたもうな・・・」

「儂が父とは違い情けないから城介も気を遣ったのじゃ」



「何をいうのです?高時は立派な執権ぞ」



先程、城介を責めた様子とはうって変わって優し気である。




結局、長崎円喜の強い後押しで金沢貞顕が執権となるが、覚海尼の怒りに恐れをなした貞顕はひと月で辞任。後任の執権には赤橋守時が就任する。




この間も、奥州の乱は終わることはなかった。また、全国各地で「悪党」と言われる集団が一攫千金を夢見て狼藉を働くようになっていた。




世は混沌としていた。

太平記あらすじ第9話下巻「宿命の子」

伊賀の国でもまた「悪党」が盛んである。




ましらの石は伊賀へと戻ると服部小六という「悪党」の配下となり、北条の領地を荒らしていた。



大河姫

悪党は現代的な意味での「悪党」とは異なる。土豪や一揆勢力といった雰囲気かな。

石は藤夜叉の家にやってくると「戦利品」を誇らしげに広げる。藤夜叉は呆れた顔である。



「石はましらの芸を見せている方がずっと良い!」



そこに、具足師の「柳斎(右馬介)」が現れる。



「どうも・・・包丁を研いでおきましたんで・・・」

「柳斎さん!ありがとうございます」



藤夜叉とは既に顔見知りのようだ。石は胡散臭げに柳斎を見る。



「具足師が包丁研ぐのか?」

「へえ、そういった事もしないと仕事がもらえませんので」

「そんなものかね?」

「あ、お子がお目覚めでは?」



藤夜叉が柳斎の言葉で奥に行くと子が泣いていた。



「柳斎さん!よく分かりましたね!」



柳斎も我が子をみるかのようにその「宿命の子」後の足利直冬を藤夜叉とあやしていた。



大河姫

藤夜叉、流石。雰囲気がググッと大人になった。

具足師柳斎こと右馬介は伊賀へ単身入ると「具足師柳斎」として活動し、畿内の様子を高氏へと送っていた。勿論、藤夜叉の様子と不知哉丸(後の直冬)の事も。




畿内周辺では再び日野俊基が動いていた。




日野俊基は帝が再び立った時に最も頼りになるのは楠木正成と考え、共に立つことを打診してはいたが、正成自身には「立つ気」はないようである。もはや、面会することも避けられていた。




日野俊基の話を聞いた服部小六は残念そうである。



「ご舎弟正季殿には会えたが、兄は立たないだろうと」



ただ、悪い話ばかりではない。




後醍醐天皇は既に覚悟を決め、護良親王を叡山へと送り込んでいた。護良親王、後の大塔宮は武に優れ、荒くれ揃いの叡山の若い僧も心服させているという。



大河姫

帝の子供たちが叡山に入り、後に座主になるのは定番ルート。山岡荘八の「新太平記」は大塔宮が主役級の扱い。

また、宮派の僧である文観は既に鎌倉調伏の祈祷を行い「その日」の備えていた。




しかし、これらの動きは既に帝の側近である吉田定房から鎌倉へと知らされていた。



大河姫

吉田定房は裏切ったのか?それとも?

幕府では執権北条守時の元「対策」が協議される。




長崎円喜・高資父子は直ちに兵を送り込むことを主張するが、守時はそれに待ったをかけていた。しかし、幕府柳営内で守時の味方をするのは二階堂道蘊くらいのものである。



大河姫

大覚寺統(後醍醐天皇所属)と持明院統で皇統を鼎立するという約束を違えたのは、確かに後醍醐天皇ではある。

長崎円喜は既に幕府の事実上の最高権力者である。



「ならば、執権殿(守時)が決めればよかろう?」

「此処で決める前に長崎殿の屋敷で密談し決めてしまっているではないか?」

「ははは・・・ならば!執権殿も我が屋敷まで来ればよかろうて?」



結局、奉行二名に軍勢を付けて上洛させる事が決定する。その知らせは足利屋敷にも届く。



「何!?出陣?」

「はい、守時様は反対しましたが、長崎派に押し切られたようです」



こうして、都へと送られた兵は恐るべき異変の第一歩となる。

太平記(大河ドラマ)感想第9話「宿命の子」

太平記(大河ドラマ)感想第9話「宿命の子」。登子の美しさと賢さが相変わらず際立つ。

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太平記感想第9話「今日の月」

「今日の月、明日見る月がこのように美しければそれで良いのです」



登子は良いことを言いますね。というか、もはや賢者の感があります。




過去よりも未来の話をしよう。過去にとらわれ自分の人生を生きれないのは不幸である。




ああ、よく分かる。
ホントよく分かる。




しかし。




悲しいかな人は往々にして「過去」に拘る。




拘り過ぎて「今の幸せ」の機会を喪失したり壊したりしてしまう事も多々あるのですよね。




残念ながら過去は変えられない。




過去の意味付け」は変える事が出来ますが、出来のは本人だけです。多くの人に気付いて欲しい。というか、登子を見習って欲しい。




でも、無理なんでしょうね。




人間は過去の拘り、過去にとらわれ、過去に復讐されて苦しむようにインプットされている悲劇、いや喜劇的存在。




石・・・。




お前は過去に拘り過ぎだと思うのだよ。




そして、君は僕だ

太平記感想第9話「機会を得る」

「しかるに、この貞氏、徳無く、才乏しく僅かに家名を守ってこの病だ」



これはタイミングの問題でもあると思うのですよね。




戦いは「相手」があることです。




第1話の時期に「立って」いたら足利一門は潰されていた。




ヤケを起こさず、丁寧に丁寧に「相手が崩れる」のを待つ。自分の代の間に崩れなかったらその先の代までも待つ。長尺で相手が崩れるのを待つ。




戦いの基本は相手を倒す事ではなく、相手が崩れるのを待つこと。




これ、まさに麻雀と同じ。




ただ、貞氏はその機会、つまり北条の自壊が「近い」ことを感じていたのだと思います。




ならば、高氏の背中を押してやらねばならない。



「儂のように迷うな」



というのは、これから先の時代は「迷いが許されない」ことを喝破しての言葉だったように思います。




以上、太平記(大河ドラマ)のあらすじと感想第9話「宿命の子」でございます。

大河姫

今宵は此処までに致します。

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