武田信玄のあらすじ第39話「京の夢」。世界最大の葡萄の産地フランス。ここで生産されるワインは世界中の美食家達の喉を潤してきた。甲府盆地。ここは日本一のワインの産地である。原料は殆どがこの地方特有の甲州葡萄。起源は古く今からおよそ1300年前仏教と共に中国からもたらされたという。武田信玄は農業が国造りの基本と考えて甲府盆地の葡萄栽培を奨励した。
それ以降、甲州葡萄の質は上がり現代では日本のワインの9割近くを生産している。甲州ワイン。その中にも武田信玄が生きているのである。
※注:1988年当時
武田信玄第39話上巻~三増峠の戦い~
我が子晴信が小田原城を前に4日で兵を退いたのは最初から小田原城を落すつもりなどなかったからにございます。晴信としては京の都を目指す前に武田の軍勢の力量を氏康殿に見せたかったのでございます。
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諏訪神社上社大祝
永禄12年(1569年)10月。氏康殿は武田勢に対して追撃を開始致しました。
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「北条氏政に追いつかれてはならぬ!」
「氏政来る前に三増峠を攻め取るのじゃ!」
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三増峠の戦いは追う方と追われる方の戦いでございます。
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「申し上げます!武田勢素早く三方より三増峠を攻めております!」
「三増峠の守りはどうじゃ?」
「三増峠守り堅牢にて、未だ落ちておりませぬ!ただ・・・」
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晴信は北条殿に与している下総、武蔵の衆に「北条は敵、武田は味方」と大声で呼びかけておりました。
氏政殿は、
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「武田勢の策略に惑わされるなと伝えよ!」
「また、叫んでいる連中を鉄砲隊で撃ち落とせ!」
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晴信の策略と力強い用兵が功を奏し、三増峠を北条殿より奪い甲斐への道を確保したのでございます。
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されど、その夜は殊の外冷えて雪になりましてございます。そして兵達は疲れ凍えたのでございます。
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「三増峠は疲れる戦にございました」
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真田殿の言葉に頷く一同。
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「今宵はいやに冷えまする・・・この雪は積もりますな」
「雪が積もればここから甲府までの道のりがまだ難儀じゃ」
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本陣の晴信と信廉の元へ馬場殿、真田殿が北条勢の追撃がない旨を報告にきておりましたが、底冷えする陣中に馬場殿は晴信の体調を気遣います。
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「横になる訳にも行くまい」
「この寒さ、我が兵達は外で耐えておるのじゃ」
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この辺りに「諏訪村」という村があり、古びた諏訪神社の御社がございました。外にいる兵達はあまりの寒さと暖を取るものもなく、御社の床板などを剥がすと燃やして暖を取り始めます。
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そこへ、晴信に命じられた勝頼と阿部勝宝がやって来ます。晴信は勝頼に応変の処置を命じておりました。阿部勝宝が勝頼である事を告げると一人の足軽大将と思しき人間が前出てきます。
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「某、高間雄斎と申します」
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高間殿は社を壊し暖を取ったのは自分の命であり兵達に罪はないと言います。
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「儂は諏訪大明神大祝、諏訪頼重の孫じゃ」
「神代の時代から代々諏訪大明神にお仕えしておる」
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勝頼は武田の武将ではなく、諏訪の大祝として古くなった社を取壊し、新しい社を立てるため遷宮の義を行うため此処に来たと言います。そして、高間には儀式を手伝うように命じます。
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「まず、そこにある榊の木をこちらへ」
「は・・・?(戸惑い)」
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榊の木は「神儀」に使うものですが、そこには笹の葉しかありません。
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「心の眼で榊の木を見よ」
「はは!」
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勝頼は遷宮の儀を執り行うと、御社の御神体を移します。古き社は新しい物に建て替えるので存分に燃やし暖を取るように命じます。
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この噂は数日のうちに武田の軍勢隅々までに広がり、勝頼は武田家家督を継ぐ者として受け入れられたのでございます。
武田信玄第39話中巻~三条殿の想い~

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晴信は2ヶ月に及ぶ北条殿との戦いを終え甲府へ戻ります。勝ち戦にも関わずその表情には疲れが見えております。ただ、晴信が北条殿と戦っている間、御宿殿の懸命な治療にも関わず三条殿の容体は一層悪くなる一方だったのでございます。
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先陣
「八重殿、お目通りを願っております」
「通せ・・・」
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晴信は着替える間もなく戦装束のまま八重と対面します。八重は三条殿の御容態について伝えます。晴信が出陣して2ヶ月。寒さも日々堪えるようになり食も細り気掛かりだと言います。
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「お願いにございます!」
「お館様のお姿を姫様にお見せ下され!」
「お館様の耀けるお姿こそ、最良の良薬にございます」
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その夜、晴信は三条殿の元へと渡ります。
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「お帰りさないませ!此度は勝ち戦おめでとうございます」
「おお、具合も良さそうじゃの・・・」
「はい!八重?何をそのように暗い表情をしているのじゃ?」
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三条殿は痩せられたようではありましたが、その表情は晴れやかでございました。そして、八重に勝ち戦を祝い、舞を舞えと言います。
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「八重の醜き舞等、お館様はご所望ではありませぬ・・・」
「ならば唄うのじゃ。私が舞いましょう・・・!」
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八重は不安を感じますが、いつになく晴れやかな表情の三条殿のため唄います。
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わが背子(せこ)は♪[br num=”2″]
物(もの)な思ひそ事(こと)しあらば♪[br num=”2″]
火にも水にも♪[br num=”2″]
われ無(な)けなくに♪[br num=”2″]
※万葉集より
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最初は美しく、しかし、儚く舞っておりましたが。
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最後まで舞う事が出来ず扇を落としてしまいます。
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「姫様・・・」
「八重!浅黄も若狭も下がるのじゃ」
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何かを決意しているような三条殿の表情に三人は従います。二人だけになると三条殿は晴信に願います。
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「今生の別れを‥三条の命もはや尽きます」
「どうしたのじゃ・・・?」
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「今宵はご帰還第一夜」
「この年で、病の身でありながら、この三条恥を忍んで申し上げます」
「ご先陣を賜りとうございます」
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三条殿は涙を浮かべ続けます。
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「この甲斐に来て三十有余年」
「お前様との間に言葉に尽くせぬ事多々ございました」
「されど、その事は恨んではおりませぬ」
「今、この三条にとって思い残す事はただ一つ」
「お前様がおここなる女子見初めし時よりただの一度も」
「ご先陣賜らなかった事にございます」
「お前様の正室でありながら、第一夜のご先陣を待ちわびて叶えられず」
「悲しき日々にございました」
「今生のお別れにどうか!」
「狂おしき一夜を・・・!叶えて下さりませ(懇願)」
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晴信は立ち上がると、涙を流す三条殿を抱きしめます。
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「許せ‥・儂の不徳の致す処じゃ」
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白いものが目立つ御髪を優しくなでる晴信。
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「なんたる三十年・・・今この年になりて初めてその心情を知る事になろうとは」
「このまま‥・こと切れても・・・」
武田信玄第39話下巻~不安~

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北信濃、海津城城代の高坂弾正殿の元へ晴信からの使者が来ておりました。晴信は再び駿河へと侵攻をするため越後への備えを万全にという内容でございましたが、珍しいお方が新たに海津城に仕えるために来ておりました。
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源助
「お主がこの海津城に仕えたいと志願したとあるが?」
「はい!ここは我が父にとって忘れられない地でございます!」
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勘一殿は、平三と平五を伴い、この海津城に入る事になります。元々は同じ村で兄弟のように育った平三と平五それに源助でございますが、既に「殿」となっている高坂殿に平身低頭の平三平五でございます。
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その夜は旧知の平三と平五、源助で宴となります。
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「永禄4年の戦は生涯忘れる事出来ぬ」
「八幡原は一面死体の山じゃった」
「山本勘助殿、典厩信繁様、飯富殿、美濃殿、義信様もこの世におらぬ」
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座には源助の家臣が1人、そして新たに侍女となったしのもおります。しのはが源助に酌をします。三人は昔話に花を咲かせますが、酒が入れば、平三と平五、特に平三の酒癖は悪くなる。
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「山本様は大したお方じゃった!」
「神様はようみてる!良い奴から先に極楽へ送り楽さしてくれるが」
「腹黒ければ死ぬことも出来ねー!なー源助!」
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同席していた海津城の武将が無礼を咎めますが、高坂殿は二人は兄弟みたいなもので気にしていないと笑います。
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「暫く見ぬまに酒癖悪くなったようじゃな?」
「あったりめーだ!この10年村がどうなったか知ってるだか!?」
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平三は村には食べる物も少なく、また度重なる戦で男手は帰ってこないと文句を言います。平五は絡み酒の平三を止めようとしますが高坂殿は気にするなと言います。
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「平三の申すことよく分かっておる」
「分かるわけねーだ!!」
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高坂殿もあまりの言い分に怒り始めます。
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「村はおらんとこの村だけじゃねー」
「この川中島にもいくらも村はあるだ!」
「皆、食べる物も少なく塩もねー!!」
「でも、この乱世だ!仕方ねぇだ!」
「白髪頭で泣き声いうた罰当たるぞ!」
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平三と平五が相手ですと、訛りまる出しの昔の源助に戻るようです。
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「おらの頭のどこに白髪あるだ?!」
「後ろは真っ白だ!なあ平五!」
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平五は頷きます。平三は飲まなきゃやってられると痛飲するのでございます。
信長の野望
「儂は義昭公を将軍に据えた!」
「じゃがなんじゃ?これは!」
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信長殿は将軍に据えた足利義昭公が信長に「管領職」や「副将軍」等を打診し、家臣扱いをされる事に我慢ならないようでございます。既に将軍家などはお飾りと断じ、天下布武の邪魔になれば将軍は勿論神仏でも容赦しないと家臣に宣言します。
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そのような情勢の中、晴信の元には足利義昭公から書状が参ります。内容は一刻も早い上洛を請うものでございます。書状を信廉へと渡します。
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「信長の目的は天下じゃ」
「あの男の事じゃ、邪魔となれば、微笑を浮かべながら将軍家の首刎ねるであろう」
「急がねば・・・ゴホ、ゴホ・・・」
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我が子晴信は最早残されている時が少ない事を重々承知していたのでございます。
そして、ふと、己の力を疑ったのでございます。
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では、今宵は此処までに致しとうございます。
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