武田信玄(大河ドラマ)のあらすじ第6話。1969年7月アポロ11号は人類で初めて月へと着陸した。その時宇宙飛行士達が残したのは、自らの足跡と一本の星条旗だった。人は旗にそれぞれの想いを託す。人の想いが其々違うように、旗もまたそれぞれの意味を持つ。「正義の鼓舞」「情報の伝達」「団結」「主張」。人は1本の旗の元に集まり戦い、時として涙する。そして今甲斐という関東の小国に、おそらく世界で最も明確なメッセージを持って1本の旗が産まれようとしている。

武田信玄第7話上巻~旗印~

我が子晴信が私を尋ねてきたのは、天文11年(1542年)の秋の気配が近づいて来た頃にございます。禰々は信虎殿の側女の娘で我が子ではございませんが、禰々の不幸が身に染みるのでございます。

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駿河のご隠居様

「晴信め。諏訪を攻め取った」



駿河に追放された信虎殿は横になりながら、らん殿にマッサージをしてもらっています。



「晴信様は大したお館様にございます」



「何処が大したお館様じゃ!あの親不孝者めが!」



信虎殿はむくれながら反論を致します。信虎殿の心中を知ってか知らずが、らん殿は続けます。



「お館様(信虎)が手に出来なった諏訪を、晴信様は1年程で滅ぼされてしまいました。大したお館様にございます」



「何をいうか!儂が攻めなかったはの実の娘の嫁ぎ先だからじゃ」



信虎殿は不機嫌ですが、らん殿が来られてからの方がお元気そうです。



「もっと気持ちを込めて揉むのじゃ・・・そこではない首のほう」



「首根っこでございますが??」



「たわけ!そなたは儂の首根っこでも捕まえたいのか!?」



「お館様は「首根っこ」と申されました!」



「首の方じゃ、首根っこではない・・・」



やはり、らん殿が御見えになってから、信虎殿はお元気になられております。
場所は変わりてこちらは甲斐でございます。信虎殿がらん殿と戯れているころ、駿河の軍師太原崇孚殿が晴信の元を尋ねております。



「信虎様が駿河へお越しなってから1年ですが、信虎様すこぶるご壮健にございます」



「父は何分派手好みのため、今川殿にはご迷惑をおかけする」



太原崇孚殿は信虎殿の賄い量(つまり、生活費など)の増額交渉に来ておりました。晴信は快く応じることにします。



「ところでその後北条殿とは如何じゃ?」



太原崇孚殿の表情が曇ります。



「相変わらず富士南麓で小競り合いを続けております」



「この辺りで和睦をされたら如何か?北条殿とは縁続きでござろう?」



「そこが、縁続きの難しい処にございます」



※今川家略系図。北条早雲(伊勢新九朗長氏)の姉が今川氏親の母に当たる。





晴信は武田家も今川家とは縁続き。
難しい事のないように末永くいきたいものと太原崇孚殿に申しますのでした。

寅王擁立

「何事じゃ?」



板垣殿が火急の要件と、伝令兵を伴い晴信の元へやってきます。



「高遠勢が杖突峠を超えて諏訪へ侵入した由にございます。お館様に申し上げよ!」



伝令兵によれば高遠勢、昨日杖突峠を越えて上原城を奪取。さらに下諏訪に火を掛けているという。




高遠頼継殿とは同盟して諏訪頼重殿を滅ぼしたものの、高遠殿は諏訪を手に入れるまでは諦めないと思われます。晴信は板垣殿に諏訪へ軍勢を率いて進軍するように命じると、自分も後からすぐに行くといいます。



「頼継が欲しいのは諏訪じゃ。諏訪からは動かん」



「お館様、今回の高遠勢の諏訪攻撃、これは分家が本家を襲う身内の戦いと言えます」



板垣殿は今回の諏訪の身内戦いに際して、武田が「寅王」を全面に出して、それを補佐するという形を取ったらどうかと提案します。そうすれば、いずれ寅王の元に諏訪の再興が考えられ諏訪衆は喜んで戦うと。



「寅王の顔を見れば、諏訪衆も力出るという事じゃな」



「左様にございまする」



この案には甘利殿も大いに賛成します。



「お館様!寅王様を是非旗印になさいませ!」

旗で埋める

裏方ではかつて信虎殿が三条殿に贈った日本地図を見て、太郎が武田の領土に旗印を立てています。



「若様にはおたあさんと同じ尊い血が流れております」



八重殿は太郎はいずれ日本中を武田の旗で埋め尽くし、天下人となり、母君三条殿を都へお連れするのだと申します。



「八重も都が恋しくなりました」



三条殿の近臣は皆都のお方。八重殿のお言葉に皆々様しんみりとなさいます。



「あ!海ノ口城は先のお館様の時に武田領にございました!!」



八重殿は突然元気になると、旗を取り太郎に渡します。切り替え早さに皆が面喰っておりましたが、とても楽しげにございました。

禰々の覚悟

「なりませぬ。そなた、禰々が病に落ちないように預けたいと言ってきたばかりではないか」



晴信は私の元を再び訪れると、先日預け禰々と寅王を諏訪へ戻したいと申します。それは出来ぬと申し渡しますが晴信は、諏訪は武田にとっても不可欠な土地だと言います。寅王を擁立する事が諏訪を奮い立たせる事になると。



「もし諏訪が不可欠の地と申すなら、幼子の力など借りず、自分の力で高遠勢を追い払いなさい」



晴信の申出はあまりに禰々と寅王が憐れ。寅王の父を奪い、禰々の夫を奪ったのは他ならぬ晴信なのですから。そこへ、禰々がやって参ります。



「お願いにございます!禰々と寅王を諏訪へお戻し下さい!」



晴信も私の話を聞いて、禰々にはしばらく私の元に留まるように言います。しかし。



「寅王は諏訪の水でないと育ちませぬ!どうか諏訪へお戻し下さい!」



禰々は諏訪へ戻る事、そして寅王の身の安全を保証して欲しいと言います。



「成人してもお館様には背くような事起こしません。必要であれば私の命を差し出します」



禰々の思いつめた表情に驚く私と晴信でございます。晴信は禰々の兄。命を取るなどそのような事があろうはずがないと禰々に話します。晴信も思うところがあったようでございます。



「禰々。そなたは諏訪へ嫁ぐ時行きとうないと泣いていた」



「来る日も来る日も泣いていたではないか。儂の前でも泣いていたではないか」



「諏訪を攻めたのは其方を救い出す事もあったのじゃ。其方の命を奪おうなどと誰が思うものか!」



結局。
禰々と寅王は武田の後ろ盾の元諏訪へと戻る事にあいなりました。

武田信玄第7話中巻~風林火山~

晴信は1人、妙信寺の岐秀和尚とお会いしておりました。岐秀和尚は晴信の学問の師でもございます。

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変化

「久しぶりじゃの!」



「1年余になりますかな」



「儂は変わったか?」



「それは晴信様が一番よく分かっていらっしゃるはず」



岐秀和尚は「晴信」が変った事は晴信自身がよく分かっているからこそここに来て、岐秀和尚から「心地良い言葉」を引き出そうとしていると言います。それは「物ぐさ」であると。晴信は妹禰々の事を話します。



「禰々は命を差し出すと申したのじゃ!」



晴信は自身がこの1年で禰々からそのようにみられる恐ろしいモノに変わったか教えて欲しいと言います。



「仏の道は己を何者かと問う処から始まります」

「晴信殿も自らが何者であるか問われるとよろしい」



晴信は反論します。



「仏の道を問うているのではない!」



岐秀和尚はさらに続けます。



「己が見えなければ人が見えない!」



「人、見えなければ、世の中が見えませぬ」



岐秀和尚は晴信が国主となって1年、何を考え何をしてきたのかを考えろと言います。そうすれば自ずから「己が何者か」答が見えると。

旗印

「儂は甲斐のために生き、甲斐のため死ぬであろう。それ以外の儂はおらん。戦うぞ」



居並ぶ重臣達を前に晴信は申します。まず、寅王を擁立し旗印として禰々と共に諏訪へ向かうと言います。寅王の乗る輿は諏訪の跡取りが乗るに相応しい装いにするよう命じます。



「今や甲斐は一つ。何かその元に集まれるよき旗印はないか?」



甘利殿は既に武田菱がという旗印があると言いますが、晴信はそれは「武田家」の旗印であると言います。欲しいのは「我が軍勢の旗印」であると。



「我が軍勢は武田家のためだけに戦うに非ず。我が甲斐のために戦うのじゃ。孫子はどうじゃ?」



晴信はまず居並ぶ重臣の中で飯富殿に問います。飯富殿は孫氏は有名な兵法書であり旗印に相応しいがどのような文字を選ぶかが肝心と言います。



「文字ではない。言葉じゃ。軍争(孫子第7編)にこうある」

  • 疾(はや)きこと風の如く
  • 徐(しず)かなること林の如く
  • 侵掠(しんりゃく)すること火の如く
  • 動かざること山の如し

「その言葉全てを旗に書かれるのでございますか?」



晴信の提案に甘利殿は異を唱えます。



「それほど多くの言葉を書くというのは聞いた事がございませぬ」



甘利殿は旗印に言葉を書くというのは邪道と言います。しかと読まねば意味が分からないようでは旗印にならない、また、多くの兵はそもそも文字が読めない。



「字が読めないのであれば教えれば良いではないか!」



そう申したのは原虎胤殿でございます。先日の諏訪攻めから帰還した時に甘利殿と「礼儀」について言い争いをしていたのが、まだ尾を引いているようでございます。甘利殿も反論します。



「旗印とは仰ぎ見る物ではないですか?」



「仰ぎ見るだけなら布切れでも良いではないか!」



売り言葉に買い言葉にございます。飯富殿はその中から「火」の一字を旗印にする事を提案し、馬場信春殿は「火だけでは凡庸」、折角なので新しい試みとして、言葉を書いてもよいのではと申します。



「風の如く、林の如く、火の如く、山の如く」



原晶俊殿はこれらの言葉は森羅万象を現す言葉でもあり、武田の軍勢に相応しく雄大なものと思います。



信繁が続きます。



「もし我が軍勢の旗印を孫子とするならなば、我らが守り神諏訪大明神の旗も必要にございます」



「守り神は諏訪大明神、守り神は孫子!」



そして。
ここに、過去例のない大きな旗、「風林火山の旗印」が産まれたのでございます。





甘利殿と原美濃守殿も顔を見合わせその勇壮さに頷くのでございました。

再び諏訪へ

「晴信め!なんじゃあの旗印は!旗印のなんらるかをしらん!いずれ諏訪は儂の物じゃ!引き上げる!」



晴信の率いる武田の軍勢は新しい旗印の元、諏訪へ攻め込み、高遠頼継殿を追い払ったのでございます。そして、晴信は諏訪勢が籠城していた桑原城へと寅王、そして禰々を伴い入城したのでございます。広間には諏訪の国衆達が集まっております。



晴信は寅王と禰々の姿を見て驚く諏訪衆に語りかけます。



「そち達の願い叶える。頼重殿亡き後、諏訪はこの寅王が継ぐ」



「今この時より、諏訪の領主はこの寅王じゃ」



晴信はこの寅王を通して武田家と諏訪家は結ばれおり、両家は助け合いこの戦国の世を生き抜くと宣言します。そして寅王が成人するまでの間は晴信が後見となり、また、諏訪には郡代として板垣殿殿を置くと言います。




続いて禰々が申します。



「我が故郷は甲斐に非ず。この諏訪じゃ。亡きお館様のためにも末永く・・・」



「諏訪に栄あれ!」



晴信は今日この日こそ諏訪と武田にとって新しい門出と言うと、板垣殿はじめ家臣たちが驚く事を言います。



「湖衣姫を我が側室に迎える!」

武田信玄第7話下巻~湖衣姫~

晴信は亡き頼重殿の娘、湖衣姫殿を側室に迎えると言いました。湖衣姫殿は晴信によって滅ぼされた頼重殿の娘、さらにその行方はようとして知れませぬ。夜、武田本陣では晴信の言葉に板垣殿が異を唱えております。

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重臣達の不安

「お館様、その儀だけはお諦め下さい」



板垣殿はじめ重臣の皆々様はこのお話しには反対でございます。湖衣姫殿は頼重殿の娘で恨み大きく、姿を隠したのもそのためであると。晴信は重臣達の言葉を聞き流すと難しい顔をして陣を後にします。



「頼重殿を討った折に湖衣姫の事は諦めたと思っていたが」



甘利殿は晴信がまだ、諦めていない事にやれやれという表情にございます。



「若さがあきらめさせんのでございますな・・・」



と、飯富殿。
そして甘利殿は若きお館様である晴信にただ従うのではなく、ならぬものはならぬと申し上げて、立派なお館様にお育てしなければならないと言います。



「亡き頼重の霊が湖衣姫に乗り移り、お館様を惑わせているようじゃ」



板垣殿が不安を口にすると、甚三郎がついに意を決して発言します。



「畏れながら申し上げます!湖衣姫様は6年前に亡くなられたおここ様と瓜二つ!」



甚三郎は湖衣姫殿はおここの生まれ変わり。恨みを晴らしにやってきた妖怪に違いないと言います。馬場信春殿は「妖怪などとは!」と一笑に付しますが、甚三郎殿は真剣そのもの。



「お願いにございます!湖衣姫様、お館様に近づけないように!伏してお願いします!」



家臣たちは顔を見合わせます。
そこに山本勘助殿が戻ってきたと伝令がやって来ます。



「山本が?」

山本対板垣

「山本勘助。そういえば最近見ていなかったが」



板垣殿は山本殿が最近何をしていたのか皆に問いますが、誰も答えることはできませんでした。


「山本はお館様の命を受けて動いていますので」



「よもや今川の間者ではあるまいな?」



考えていても答えは出ません。板垣殿が通すように命じると陣所へ山本殿がやってきます。



「今迄何処にいた?」



「お館様の命により、湖衣姫様の行方探し諏訪中を歩いておりました」



「で、見つかったか?」



「確かめましてございます」



板垣殿が問い質すと、勘助殿は湖衣姫様の居場所を確かめた事を報告します。晴信に知らせたいと言う勘助殿に、陣を出たすぐの裏の林近くにいる事を告げると1人、晴信の元へ向かいます。



「山本勘助戻りましてございます」



「おお!で、どうじゃ?」



「確かめましてございます。これより大門峠に至る道を入り、さらにその奥でございます」



勘助殿の報告によれば湖衣姫殿は侍女数人と小さな庵を結び静かに暮しているという。ただ、頼重殿の旧臣が10名ばかり死を覚悟して護衛をしていると言います。



「儂が行く。案内いたせ!」



勘助殿と晴信が歩き出すと、そこには板垣殿を筆頭に重臣の皆様が立ちふさがっております。板垣殿はおもむろに尋ねます。



「どちらへ?」



「湖衣姫迎えに行く!」



「なりませぬ!」



「儂を止める事は出来ぬ」



「お止め申し上げます!」



板垣殿はお館様である晴信が女子に惑わされてしまえば、御諫めすると言います。また、湖衣姫は甲斐に恨み多く、必ず晴信に害をもたらすと言います。



「湖衣姫は我が物と致す。どけ。どかねば斬る」



「我が身、お斬り下され。本望にございます」



板垣殿は死を覚悟しております。そして、家臣たちは板垣殿と意見を同じくして晴信と対峙しています。勘助殿は晴信と板垣殿との間に入ると叫びます。



「お待ち下さいませ!この勘助、湖衣姫をお迎えする事、誠に目出度いと存じます!」



「貴様!今川の回し者か!」



この言葉に激昂した馬場信春殿は太刀を抜くと、山本殿に斬りかかりますが、あっさりと太刀を奪われ転がされます。いきり立つ他の家臣達を前に再度叫びます。



「お聞きください!この勘助の言葉に不正義あればこの場で腹を切ります!」



勘助殿は諏訪は甲斐にとって重要であり、その結び付きが寅王だけでは弱いと言います。もし、湖衣姫と晴信が結び、嫡男が誕生すれば、その結び付きは強固で二度と攻め合う事はないと言います。また、湖衣姫が晴信を恨み害をなすかもしれないという言葉には、



「国主たるもの、常に死と向かい合わねばなりませぬ!女子1人に脅えて国主が務まりましょうや!?」



と、反論を致します。さらに、もし湖衣姫が他国に取られれば、諏訪は二度と手に入らず、甲斐は北への出口を失うと言います。



「良いな?板垣」



板垣殿もついに受け入れます。



「では兵をお連れ下さいませ」



「良いのじゃ。勘助を案内に立てて、密かに行く」



再会

勘助と平三と兵五、源助を伴い湖衣姫殿の庵へと向かう晴信。



「これも戦にございます。手加減は無用にございます」



勘助殿の言葉に頷く晴信。途中、平五を見張りに残すと4人は湖衣姫の庵を守る兵を遠隔から排除します。平三が二人を投石で排除、源助が弓で1名を射殺し突入します!



「姫様お逃げ下さい!!!」



「湖衣姫!!!!」



晴信は湖衣姫を探し暗い林の中を探しますが、今まさに自刃しようとしている湖衣姫を見つけるのでございます!

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