武田信玄(大河ドラマ)のあらすじ第8話。結婚、二人の愛の結びつきこそが祝福されるべき姿である。洋の東西、老若男女を問わず、お互いの愛情を育ませ男女は結婚する。まさに、愛こそ全てである。しかし、ここに哀しい運命を背負った1人の女性がいる。

戦国の世を生きた女「湖衣姫」。彼女について歴史はあまり多くを語ろうとはしない。産まれた年、いくつで亡くなったか、本当の名前すら定かではない。ただ、晴信と湖衣姫がたとえ如何なる形の結びつきであったにせよ、人々は二人の間に燃えるような愛があった事を信じ、語り継いでいる。
武田信玄第8話上巻~湖衣姫奪取~
ついに湖衣姫が隠れ住む庵を発見した晴信。夜の林の中に湖衣姫を発見!しかし、その手には短刀が握られていました。
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脱出
「やめよ・・・」
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晴信は短刀を手に取り自害を試みようとする湖衣姫殿に命じます。今、下手に動けば湖衣姫は御自害されかねません。
その時。
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「御免!」
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「うっ!」
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闇の中から現れたのは勘助殿でございました。勘助殿は湖衣姫から短刀を取り上げ、体術で気絶させたのです。
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「お館様、急ぎましょう!」
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勘助殿の言葉に頷く晴信。
湖衣姫を抱えた晴信と勘助殿、源助、平三は急ぎ撤退を開始します。しかし、体制を整えた護衛の兵士が次々と襲ってきます。
その時。
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「姫様!!」
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叫ぶ女性の声。
人質時代も湖衣姫に仕えていたたき殿です。晴信は源助にたき殿も連れてくるように命じると、勘助殿を筆頭に押し立て血路を切り開いて撤退していきます。
兵五を残していたところまで引き上げた時、
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「ぐわ!」
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兵三が倒れます。
敵護衛の弓箭兵が次々と矢を射かけてきておりました。倒れて動かない平三に兵五が泣きながら「兄やん!」と叫んでいます。
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「甲州金もらえっぞ!!!」
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源助が動かない平三に褒美が貰えると語ると平三は立上ります!さらに、源助は得意の弓で敵の弓箭兵を射殺しますが、敵の放った弓矢も源助の右胸に刺さります。幸い、致命傷ではありません。
その時!
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「お館様!!」
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「板垣!!」
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板垣殿が軍勢を率いてやってきました。ようやく、晴信達は窮地を脱したのでございます。
三条殿
我が子晴信は湖衣姫殿を桑原城へ戻すや否や、諏訪衆を押し立てて、高遠頼継殿の縁戚にあたる、藤沢頼親殿のお城を攻め落としたのでございます。
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「いよいよ伊那に武田の御旗が立ち初めましてございます」
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八重殿が嬉しそうに申します。
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「それにしても、なぜ一気に高遠頼継を滅ぼさないのじゃ?敵は高遠頼継であろう?」
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三条殿の疑問に八重殿はしたり顔で言うのです。
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「姫様!お楽しみは最後にとっておいてこそ戦の醍醐味にございます!」
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皆々様御機嫌そのものでございますが、その時、甘利殿が戻ってきたとの知らせが来ます。
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「ただ今、伊那より戻りましてございます」
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「して、戦の状況は?」
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甘利殿は諏訪での戦果は上々であること、また、藤沢城を落すに当たっては諏訪衆の活躍が顕著であったこと、そして、行方が分からなかった湖衣姫殿を無事保護した事を伝えます。
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「(湖衣姫の)お裁きは?」
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八重殿が問います。
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「重臣達よくよく談合の結果、甲斐と諏訪野結びつきをより強めるため、側室に迎える事にあいなりました」
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「なぜ、死を賜わらないのですか?」
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「死を賜れれば、末永く諏訪衆に恨みを残します」
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「父を奪われし湖衣姫の恨みの方が末永いのでは?」
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「八重。良いではないか。湖衣姫は人質じゃ。諏訪へ置くより、こなたへ迎えた方が安心じゃ」
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三条殿は毅然と言うのでありました。
春秋に義戦無し
捕らえられた湖衣姫殿は諏訪桑原城へと移されました。
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「姫様。さあ。御父上の命奪いし武田の側室等に誰がなるものですか」
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湖衣姫殿の乳母を長く勤めてきた、たき殿は湖衣姫殿に御自害を勧めています。
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「ご安心下さい。たきもすぐ参ります」
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「たき。先にに参る」
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頷く湖衣姫殿。
たき殿は短刀を構え湖衣姫殿の首に狙いを定めます。湖衣姫殿は目を閉じ祈っております。たき殿の手が震えております。
その時。
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「申し上げます、武田家家臣山本勘助にございます」
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「なんじゃ?許しもなく開けるとは無礼であろう?」
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「はは。申し訳ございません」
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勘助殿は「何か」を察していたようではございますが、それには触れずに、自分はお館様である晴信の命令で湖衣姫殿の警護を命じられていること、さらに、湖衣姫殿と晴信の祝言にお祝いの言葉を述べます。
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「湖衣姫様は諏訪と甲斐の橋渡し。まさに諏訪大明神のお導き」
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「また、一刻も早いご嫡男の誕生をお祈り申し上げます」
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たき殿は勘助殿の言葉に「父を奪われた恨みは分かるまい!」と言います。
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「恨みではこの諏訪に何一つ光明をもたらしません」
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勘助殿は孟子の言葉「春秋に義戦無し」を引用して、この乱世に正義のみの戦いなどなく、その事は無き父、諏訪頼重殿が一番よく分かっており、湖衣姫殿の恨み持っての御自害等望んでいないと言うのであります。
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「どうか!どうか!!生きて下さいませ!!」
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湖衣姫殿はただ黙って座っております。
勘助殿はさらに続けます。
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「今宵は姫様を慰めるため、とっておきの物をご準備致しております」
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「ささ。こちらへ。諏訪太鼓にございます」
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御諏訪太鼓に見入る湖衣姫殿。そして、その御諏訪太鼓の音を聞いて晴信もやってきました。晴信と湖衣姫殿は言葉なく、諏訪太鼓を挟みお互い視線を交わすのでした。
武田信玄第8話中巻~生きてこそ~
我が子晴信はあの御諏訪太鼓の日に見た湖衣姫殿はともう3月会っておりません。あれ程までに探し求めた湖衣姫殿ではございますが、会ってみれば何やら後ろめたさも感じられて、時が経つのを待つしか手がないように感じられたのでございます。
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八重という女子(おなご)
三条殿は湖衣姫殿が側室になる事に異議などは唱えませんでしたが、祝言の日が近づくにつれ気鬱になりふさぎ込む日が多くなっておりました。
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「八重!」
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「八重はおらぬか!!!」
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「八重!!!!(怒!)」
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三条殿は居ても立っても居られないご様子で八重殿の元へいきます。廊下で急ぎ足で三条殿の元へ向かっていた八重殿に、
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「これより湯の島へ湯治に参る。冬の間は湯の島で過ごす旨、お館様にお伝えせよ!」
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「冬の間とは?来年まで・・・?」
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「春が来るまでじゃ!早うお伝えして参れ!直ぐに参りたいのじゃ」
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その頃晴信は飯富殿、馬場殿と洪水対策に関しての話しをしておりました。
そこへ。
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「お館様に申し上げます!ただ今八重殿がお目通りをねがっております!」
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「なんじゃ?後に致せと申し伝えよ!」
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水を差された事に若干腹立たし気に申しますと、再び洪水対策について議論をします。新たな川を掘り、流れを変える必要があるようでございます。
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「新たな川を掘る。夢のようじゃ」
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飯富殿と馬場殿が申しますと、晴信は、
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「儂は是が非でも洪水を無くしたい。新たな川を掘るのは夢ではない」
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晴信の覚悟に飯富殿も馬場殿も感じ入るのでございます。
そこへ、八重殿が許しも得ずにやってきます。
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「無礼者!誰が目通りを許した!裏方へ戻れ!」
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晴信は八重殿に命じますが、八重殿は一大事と言って聞きません。晴信はみだりに裏方から出る事は許さんときつく命じます。たまりかねた飯富殿が立ち上がると八重殿に申します。
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「お館様の言葉聞こえなかったか?八重殿。下がられよ」
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「・・・(ツーン)」
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「話は儂が聞く。八重殿、ささ、あちらへ」
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根負けした飯富殿は別室で八重殿と話しをします。
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「姫様は来年の春まで湯の島へ湯治へ行かれ戻りません」
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「三条方様は何処か具合でも悪いのか?」
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「御気疲れのようにございます」
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飯富殿は半月後には湖衣姫殿との祝言があり、さらに、大晦日、正月と神事が続くので正室である三条殿が不在なのは都合が悪いといいます。
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「飯富殿!どうか姫様の心中推し量って下さいませ。お方様とは申せ、姫様は女子にございます」
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八重殿は側室如きのために祝言など許せるものではないということ、例え、「甲斐と諏訪のため」という理由があってもそれは重々承知の上で、祝言を取りやめるように晴信に願って欲しいと申します。渋い顔の飯富殿ではございます。
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「飯富殿は太郎様の傅役におなりになられるとか?」
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八重殿は言葉巧みに「三条殿の覚え目出度ければ」いずれ甲斐を太郎と率いる事になると篭絡に掛かります。
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「どうか。どうか。姫様のお気持ちお館様にお伝えくださいませ」
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飯富殿は「そのような野心などない!」と申しましたが、八重殿の三条殿への想いに何やら背筋が寒くなるのを感じたのでございます。
湯治はダメ
「何を考えているのじゃ!」
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晴信は三条殿の「春まで湯治」の話を許さぬと言います。晦日から正月にかけては家臣領民への振る舞いなど忙しい。この時期に湯治などとはあり得ないと言います。
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「それとも、湖衣姫を迎えるのが気に入らんのか?」
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晴信は湖衣姫を迎えるのは甲斐と諏訪の和睦のため。過去を水に流し、新たなる盟約を結んだ事を近隣諸国に披露し、甲斐と諏訪はいまや一つと知らせしめるためと説明を致します。三条殿は不満ありありで目を逸らしております。
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「聞いておるのか?」
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「聴こえておりまする」
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「では、重ねて申しておく。湯の島へ行ってはならぬ」
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「嫁ぎて六年(むとせ)三条はこのお館内より一歩も外へ出ておりません!」
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「何を申すか。そちは花見の宴も好まず、紅葉狩りにも行きとうないと申すではないか!」
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「花見も紅葉も山奥ではございませんか!三条が蛇獣を好まぬことようご存知のはず!」
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「甲斐は山国じゃ!蛇や獣に脅えて甲斐国主の妻が務まるか!」
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「都へ・・・帰り等ございます!(泣!)」
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「そちは甲斐国主の妻じゃ。そち故郷は都ではない!この甲斐じゃ!」
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「太郎!!太郎!!!!」
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「止めよ!」
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「太郎よう見るのじゃ。父上が母を虐めまする!」
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晴信は苛立ちながら奥を後にします。
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「湖衣姫如きのために祝言など(涙)」
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怒りに震え声で三条殿は言うのでございました。
諏訪湖畔にて
諏訪湖畔では湖衣姫殿と勘助殿が野駆けを楽しんでおります。甲斐、諏訪は山国で馬産地でもあります。女子でも馬を嗜むのは決して珍しい事ではございません。故郷で馬を走らせ、湖衣姫殿の表情にも明るさが見えるようでございます。
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「諏訪湖はまさに、神の宿りし湖でございますな」
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「この湖の中には神様がおります。このような気持ち久しぶりじゃ。礼を申す」
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勘助殿と湖衣姫殿は馬を降り諏訪湖を眺めております。勘助殿は湖衣姫殿に申します。
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「姫様、国同士の争いに負けてはなりませぬ」
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勘助殿は生きるは死に勝る苦難ではあれど、生きてこそ望みもある。湖衣姫殿が精一杯自分のために生きてこそ、また諏訪も生きると伝えるのでございます。
武田信玄第8話下巻~祝言~
天文11年(1542年)がまさに暮れようとしているころ、我が子晴信と湖衣姫の祝言が執り行われたのでございます。湖衣姫殿は山本勘助殿に導かれて廊下を渡り、晴信の元へやって参ります。そして、誓いの盃を交わすのでございます。その様子をあるお二人が宴の外からがご覧になっておりました。八重殿と太郎にございます。
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「御覧に遊ばしましたか?今宵の事決して忘れてはなりません」
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太郎は黙って頷くのでありました。
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また、湖衣姫殿救出に手柄のあった源助、平三、兵五の3人は小者が集まる部屋で、晴信より振る舞われた祝の酒を飲みながら、部屋の他の者たちに手柄の自慢をしております。そして、祝言の間では一通りの儀式が終わり続々と国衆・豪族たちが祝にやって参ります。
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囲碁
祝の言葉を伝えに各地の国衆豪族の中に松尾城城主真田幸隆殿という国衆がございました。
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「松尾城城主、真田幸隆様!」
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真田殿は碁盤を抱えて晴信の元へ現れると、まず、碁盤を晴信の前へ置きます。
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「松尾城城主、真田幸隆にございます!」
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「此度は目出度き御席にお招きいただき光栄にござる」
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「これにござる碁盤は真田家の家宝にて、これを献上つかまつる」
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「武田殿は碁は嗜まれるか?」
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一気にまくしたてる幸隆殿。そのご様子は何処か芝居がかっておりまする。
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「多少は」
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「碁は遊びに非ず。戦と同じと思うが如何に?」
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「いや、分からん(戸惑い)」
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「ははは!大分お強いようじゃな!しからば某と一局如何にござる?」
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茫然とする晴信に幸隆殿はさらに畳み掛けます。
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「この真田幸隆、我が真田庄を掛けまする」
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たまらず、板垣殿が横から言います。
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「真田殿、碁の話はまた日を改めて・・・」
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しかし、一歩も引かない雰囲気の幸隆殿。
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「某(それがし)、口先だけの事を申しているのではない。我が口から出た言葉は全て真実」
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「武田殿どうじゃ?武田殿は何を賭けられてもよい。それとも背を見せられるか?」
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馬場殿、飯富殿の目が鋭く光ります。板垣殿が改めて窘めるように言います。
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「真田殿、ここは目出度き祝言の場。お控え下さい」
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幸隆殿はまったく意に介さず、
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「儂は目出度き碁を申し込んでおるのじゃ」
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皆々様が険悪な雰囲気になりかけた時。
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「お引き受け申す」
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晴信は碁の勝負を引き受けることを宣言し、また、賭けるのは真田庄と同じ広さの領地にすると言います。対局は明日の朝と相成ります。
重臣談合
宴席の最中、先ほどの真田殿の「碁」の勝負の件が重臣達に波紋を広げています。
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「斬ろう。今宵の内に斬って捨てよう」
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馬場殿は申します。
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「真田は村上義清に近い。が、あのような派手派手しい行動に裏があるとは思えないがな」
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原美濃守殿が申します。
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そこへ。
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「席へ戻られよ!板垣殿が戻れと言っている」
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甘利殿が3人に宴席に戻るように指示しますが、馬場殿は「儂独りでも斬る!」と息巻いております。
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その頃、幸隆殿はそのような談合が行われている事を知ってか知らずか、深酒の真っ最中にございました。
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湖衣姫、裏方へ
祝言が無事終了致しました。湖衣姫殿はたき殿と共に晴信が待つ「裏方」へとお運び致します。その様子をじっと見つめているお方が。八重殿にございます。
先ほど太郎と外から見た時は湖衣姫の御顔がよく見えませんでしたが今はっきりとその姿を見て思わず声を上げます。
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「おここ?」
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八重殿は湖衣姫殿のお姿がかのおここと瓜二つな事に衝撃をうけます。すぐさま三条殿の元へ。
※関連記事:おここの死
→武田信玄第1話「父と子」より
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「ひ、ひ、姫様!おここにございます!」
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「何を申しておるのだ?湖衣姫がおここのはずがないではないか?」
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「姫様、湖衣姫は妖怪にございます。おここが怨霊となって現れたのでございます!」
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動揺を隠せない八重殿は短刀を持ち、
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「一刻もはやく、成敗せねばなりません(震声)」
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その頃恋湖衣姫殿は晴信が渡るのをお待ちしておりました。たき殿は布団の下にそっと短刀を隠すのでございます。
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湖衣姫殿の生涯を想えば、わが生涯など平穏そのものだったかもしれません。
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その湖衣姫殿が新たなる苦難を迎える事になったのでございます。
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我が子晴信の若さが生み出した嵐にございます。
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では、今宵は此処までに致しまする。
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