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翔ぶが如くのあらすじと感想第12話「吉之助入水」です。井伊大老の捕縛網は京の公家衆にまで及びます。月照の保護に方々手を尽くす吉之助。しかし、斉彬を失った薩摩藩には幕府に改革を迫る気迫も、そしてかつて世話になった月照を守る気概も失っていた。翔ぶが如くのあらすじと感想第12話!
翔ぶが如くのあらすじ第12話「吉之助入水」
月照は福岡藩士平野国臣と共に、幕府の隠密でさえ不可能と言われる薩摩国境を越えようとしていた。一方、精忠組の志士達はもし月照が薩摩藩へと入国が叶ったならば必ず庇護が出来るように奔走し続けていた。しかし、色よい返答は得られていなかった。
翔ぶが如くのあらすじ第12話上巻「日向送り」
「これを・・・」
「こいは大名物とお聞きしておりもんす!」
正助は精忠組の仲間で元商人の森山新蔵から茶器を渡されていた。森山の好意は嬉しいがあまりに高価なものであり一瞬、二の足を踏む。
「おいも精忠組でごわす」
森山は今でこそ武士ではあるが元は商人であり、金で「士分」を買ったと陰口を叩かれて来た。だからこそ、誰よりも武士らしくありたいと。
「恨み心で言っているのではなか」
「こげな物で月照様の御命救えるのであれば安いものでございもす」
正助は森山から茶器を受け取る。
「森山どんはれっきとした精忠組でございもす!」
正助の言葉に森山は頭を下げる。正助はまた月照の保護のためまた藩内を奔走する。
吉之助は薩摩時代の上司で信頼も置ける左右田宗之進を尋ねる。左右田宗之進は吉之助が訪ねてくる前から藩の重臣にも働きかけていた。
「それでもお取次ぎはないと・・・!」
さらに悪い話をする。斉彬が心血を注いできた洋式調練を受けて薩摩兵も従来の旧式に戻すと言う。
「亡き殿が金を使い過ぎたと注進する者がおる」
薩摩藩へと帰国したご隠居斉興(斉彬・三郎久光の父)の意向だという。
吉之助は最後の頼みと考え斉彬の側室である喜久を尋ねる。喜久は斉彬の死後何もかもが変わってしまったと嘆く。
「三郎殿が亡き殿を兄としてお慕いしていたのは間違いないが・・・」
喜久は三郎(久光)は元々は長幼の序を重んじ、新しい事よりも古いもの、伝統を重んじる性格であると喝破します。そして、藩主の後見人を任されたとは言え、ご隠居の斉興が戻ってくれば、その意に必ず従ってしまうだろうと。
「もし、月照様が無事ならば・・・」
「此処で私が匿います」
「それが亡き殿へのせめてもの恩返しです」
吉之助はただただ頭を下げる。
「吉之助さぁ!!!月照様が・・・!」
家に戻ると平野国臣と共に薩摩入国を目指していた月照がいた。
「月照様・・・!」
吉之助は再会を喜ぶ。
「月照様にもしもの時はおいも生きてはいない覚悟でございました」
「あんさんに早まられてはならんと精一杯旅を続けてきましたんや」
月照が薩摩へと入った知らせはすぐに藩の重臣にも知れる事になる。重臣達は月照の処遇について紛糾する。
吉之助に近い左右田宗之進は必死に月照保護、せめてその処遇についてはご隠居斉興の判断を仰ぐべきと意見するが、月照の処分は重臣達の間で決める事になる。
左右田宗之進から呼ばれた吉之助は月照の処分を言い渡される。月照を追って幕吏が薩摩国境にやって来ていることも影響している。
「成就院月照を日向送りとし、その警護をその方に任せる」
「ただし、本日中に薩摩を立ち退かせる事」
左右田宗之進の言葉に吉之助はただ頷く。
翔ぶが如くのあらすじ第12話中巻「冬の錦江湾」
「日向送り!?」
正助は驚く。
「流石に斬れとは言わんかった!」
しかし、事実上「日向送り」とは命を奪う事を指している。吉之助は斉彬を失ってからの薩摩のあまりの不甲斐なさに絶望的な心境である。幕吏に薩摩藩内に月照が逃げ込んでいる事が露見するのを恐れているのだ。
「こいが鎌倉以来武勇と信義を誇った薩摩の重役が下す命か!」
「悔しか!!」
「こげな想いをする位なら殿を追って死ぬべきだった!」
正助は日向送りとは言え山中でも生き残れるように精忠組で知恵を出そうと言うが、吉之助は無駄だと取り合わない。
「吉之助さあ!正助、あえて意見しもす!」
「吉之助さぁには潔いでごわんどが事を割り切り過ぎではござもはんか?!」
「既に日向送りの船が月照様を待っている」
「こげな手回しだけは見事じゃな!」
「幕府を恐れこげん腰抜になった薩摩に月照様をお連れしたおいの罪じゃ!」
吉之助は月照のまつ屋敷へ行くとこれから日向へと舟で向かう旨を告げる。既に、幕吏が国内に入っており、その追補を避けるためでもあると説明する。月照を薩摩まで連れて来た平野国臣は慌ただしいのうと言うと連れの忠助をおこしにいく。
しかし、月照は吉之助の様子から何かあったのではと察するような表情を見せる。
「月照様・・・この西郷が何処までもお友します」
月照と吉之助は錦江湾へと舟で漕ぎ出す。
12月である。
吉之助は刀に手をかける。
月照が振り返る。
月照は全てを悟っていたかのように微笑む。
吉之助は頷くと月照と手に手を取り・・・。
「どばーん!」
「お!!!落ちたぞ!!」
「ふ、舟を止めろ!!」
翔ぶが如くのあらすじ第12話下巻「奄美へ」
「吉之助さぁを出せ!中に入れろ!!」
「藩命じゃ!入れる事は出来ぬ!」
「我らは薩摩武士!吉之助さあに何かあれば斬り込む・・・!」
「待たんか!おれも薩摩武士じゃ・・・!」
吉之助が運び込まれた屋敷に詰めかけた精忠組は門番の執成しで2人中で見た事を口外しない約束で対面を許される。
吉之助と月照は直ぐに海中から引き上げられた。しかし、旅の疲れも癒えぬままの月照の身体に南国とは言え冬の錦江湾の水は冷たい。月照はそのまま帰らぬ人になってしまった。吉之助もまた意識を取り戻すのに数日を要した。
一方、藩の重臣達も吉之助の処遇に頭を悩ませる。ついに、ご隠居である斉興に判断が一任される。
「死んだことにして奄美にでも送ればよい」
斉興は城下士、そして自分を追った斉彬の家臣とは言え前藩主が目をかけた吉之助を助ける事を決断。幕府の追求をかわすため、「菊池源吾」と名を変えさらに、吉之助の墓も準備させる。
「井伊大老の事だ、墓を暴くかもしれん」
「罪人か行き倒れの遺骸も準備せよ」
吉之助はなんとか自力で歩けるようになると奄美送りの命が下される。正助は吉之助の回復のため朝鮮人参を手土産に尋ねる。
「そげな高価なもんおいにはもったいなか」
「吉之助さぁ!そげん事は言わぬ約束じゃっと?」
「すまん・・・」
「吉之助さぁは京のその後の様子ば知りたかなかとですか?」
「!?」
正助は大獄の嵐のその後を伝える。吉之助と共に調停工作に奔走した橋本左内も捕縛されていた。
天を仰ぐ吉之助。
「まず、身体を戻す事にございもす!」
「吉之助さぁはおい達精忠組の頭じゃっとん」
「・・・吉之助さぁ!命あってこそでございもす」
程なく吉之助の奄美送りの日がやって来る。一方、精忠組は今後の活動方針について紛糾していた。
幕府の強引なやりかたに精忠組は脱藩し諸国の浪士と協調して討幕を目指すという、
過激な意見に集約されつつあった。
年が明けた安政6年正月。
正助は奄美へと向かう吉之助に会いに行く。当初、吉之助の奄美行きに強硬に反対をしていた。もし、島へと流され刺客がいればもうどうにもならない。
「天がおいを生かしていると思う」
吉之助は錦江湾からただ一人生還した事を「天命」と考えていた。もし、奄美で斬られるのであればそれもまた天命。
正助は島へ向かう吉之助に精忠組の様子を伝える。
そして、吉之助の考えを精忠組に伝えておきたいとやって来たのだ。
「機が熟するのを待て」
吉之助は以前正助にそう語っていた。
その「気が熟する」を見極める方法の教えを請いたいと。
「上方の様子は刻々と変わるじゃろ」
「そん時は、1つの意見として考えてくれ」
「その一、突出は必ず越前藩に問合せること」
越前が立てば、筑前・因州・長州も立つ。その時は遅れず突出すべき。
しかし、それを待たずに突出するは死に急ぐだけで真に日本国のためにはならない。
「吉之助さぁ!これはおい達の指示書になる」
「書き物にしたためてくれもはんか」
これこそが、後に維新の代参謀となる西郷隆盛最初の指令書である。こうして吉之助は奄美大島へと送られた。
残された正助は一つの覚悟を決める。
熱意だけでは物事は動かせない。
「権力」
何かを成すにはまず権力が必要である。
正助は吉之助にとっての斉彬のような役割を藩主後見人久光に求める事にする。
「久光様は憎き御由羅の子でございもす」
「じゃが、それは大事の前の小事ではなかとでござもはんか?」
正助は島に送られた吉之助と対話をしているような錯覚に陥っていた。
翔ぶが如くの感想12話「吉之助入水」
翔ぶが如くの感想第12話です。
京で調停工作を一手に引き受けて、吉之助の動きを助けてくれていた成就院月照様がついに亡くなります。そして、吉之助は島へ・・・。
翔ぶが如くの感想12話「月照様」
月照様を演じているのは野村萬さん(翔ぶが如く放送時は野村万之丞)。当時で61歳でしたが、野村萬さんはこの記事を書いている2018年2月27日現在、まだお元気です。
※月照様は御元気!→和泉流野村万蔵家公式へ
齢80歳を越えているようには見えません・・・!まだまだご活躍を頂きたいですね。
能狂言の方というのもあるのでしょうか?翔ぶが如くでの月照様の存在感は圧巻だったと思います。この12話でも吉之助が「日向送り」を告げる場面や、舟から飛び降りる直前の場面。あの優し気な笑顔に癒されます。
あと、余談ですが野村萬斎さんは甥に当たります。前述の通り月照様を演じた当時野村萬さんは61歳と既に大ベテランの域に達していたと思います。一方で甥の野村萬斎さんは「花の乱(1994年)」で細川勝元を当時28歳で演じています。
花の乱は日野富子を主人公に応仁の乱を描いた貴重な大河ドラマなのですが、この時の細川勝元の存在感は圧巻でした。
西軍の山名宗全を萬屋錦之介さんが演じているのですが、その迫力は山名宗全に一歩も引かない。
評判はイマイチ(当時視聴率が振るわなかった)なのですが、昨今の「応仁の乱ブーム」でまた放送しないかな・・・。
翔ぶが如くの感想12話「斉興・斉彬・久光」
吉之助は月照の保護を求めて亡き斉彬の側室喜久の元を訪ねています。
その時、
「三郎様(久光)が斉彬を慕っていたのは間違いないが・・・」
「斉彬とは違い新しいモノは本来好きではない」
と、喝破しています。まあ、その通りなんではないかなと思います。因みに、斉彬と慶喜は近いような気がします。
そして、西郷もまたどちらかと言えば「保守的」な傾向が強いと思います。
(西郷は写真を嫌い生前一枚も写真を撮っていない)
面白いのが、西郷と久光は共に「保守的」であるという内面的な性質にも関わらず斉彬を慕っているんですよね。久光と西郷はどことなく通じるもの(特に維新後)があるように思います。
翔ぶが如くの感想12話「精忠組」
精忠組の仲間達にも色々と諸事情があります。今回フューチャーされていたのが森山新蔵ですね。
森山は元々商人の出で、士分を「買った」武士です。かつては正助に金を貸したり、また江戸行きに金が必要な吉之助に、都合つけますと提案している場面もありました。
これは、ただ偏に「武士として認められたい」という願いなんですよね。今回も「名物」と言われる茶器を月照保護のための工作活動に使って欲しいと正助に渡しています。
「森山さぁは間違いなく精忠組でございもす!」
その言葉を受けて頭を下げる森山新蔵を見ているとなんだか切ない気持ちにもなりました。勿論、その後の運命を知っている事も影響していると思いますが・・・。
さて、次回からはいよいよ「島編」ですね。そして薩摩では大久保が「目覚め」ます。
以上、翔ぶが如くのあらすじと感想第12話「吉之助入水」でございます。
今宵は此処までに致します。