武田信玄（大河ドラマ）のあらすじ第26話「氏康と景虎」

公開日 : 2017年9月19日 / 更新日 : 2021年3月13日

武田信玄あらすじ

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武田信玄第26話上巻～父子再会～

この年、永禄三年（1560年）は翌年にあの川中島の決戦を控えた年でございます。晴信は国主になって二十年、釜無川の工事を完成し、国内の経済秩序等もその形をほぼ整えましてございます。

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信繁駿河へ

「心より御悼の意を申し上げます」

「武田殿の心からご弔問、今川氏真有難くお受け申す」

我が子信繁は晴信の名代として駿河へ弔問に来ておりました。

「ところで信繁殿。武田殿は御父上の事について何か仰せではないか？」

寿桂尼様は我が夫信虎殿の件に関して尋ねます。晴信の元には信虎殿の乱行について苦情が来ておりました。信繁は晴信から今川殿の御意向に沿うようにと指示を受けておりました。

「武田殿からの要望はないのか？」

寿桂尼様は拍子抜けしたような雰囲気にございます。
そしていよいよ。天文10年韮崎にて別れて以来、二十年振りの親子対面となります。

晴信の本性

「お懐かしゅうございます！！」

「長き歳月に渡る親不孝、どうぞお許し下さいませ（涙）」

信繁は涙を流し信虎殿に面会をしております。庭を見て立っている信虎殿の眼からも熱いものが込み上げておりました。

「信繁！大の男が何をめそめそしておる！」

「そちにわが想いなど分かりはせぬ！」

「･･･いや、分かる必要もない」

信虎殿は続けます。

「されど儂は晴信めをゆると許すと書いたぞ」

「なのにあのたわけは、未だに儂を迎えに参らんではないか！」

信繁も信虎殿のから晴信へあてた手紙については存じております。だからこそ、兄と父の間で苦しい表情を見せます。

「まあ、それは良しとしよう」

「子の親不孝は親の不徳の致すところじゃ」

信繁の心中を察したのでしょうか。信虎殿はそう申しますと信繁に尋ねます。

「晴信は未だ儂を憎んでおるのか？」

「いえ！兄上は最初から御父上をお恨み申し上げておりませぬ」

「国の為に追いだした等と綺麗事を申しておるのであろう！」

信繁は信虎殿を見上げながらまた苦しい表情を見せます。信繁は信虎殿の気持ちが痛い程よくわかるのでございます。

「恨みなくば！なぜ二十年も親を他国へ置いておくのじゃ！」

「儂とてもあの者を許してはおらぬわ！！」

信虎殿は一度天を仰ぐと再び言い直します。

「いや、、儂は許した」

「許さねば甲斐が滅びる」

甲斐が滅びるという言葉の意味を測りかねて信繁は信虎殿を見つめます。信虎は信繁の側に座ると噛んで含むように伝えます。

「信繁。このままでは甲斐は滅びるぞ」

「近々誰かが京へ攻め上り将軍家を倒して天下を獲る」

「その暁に何が起こると思う？」

「日本全土の平定じゃ」

信繁は信虎殿が言わんとしている事を理解した様子です。

「我が武田が天下を獲らねば、その天下人相手に戦う事に成る！」

「晴信めは新しい天下人に腰を低くして甘い汁など吸う事は出来ぬ！」

「この父親を追い出してまで国主を望む男じゃ！二番目を嫌う男じゃ！」

「さすれば我が甲斐は全国を敵として戦い、朝敵として滅びる」

信虎殿の熱さの所為でしょうか。信繁の額からは汗が噴き出ております。次に信虎殿が何を言うのかを畏れているようでもあります。

「攻めよ！この駿河を攻めよ！！」

「父上！」

「今すぐ戻って晴信に申し伝えよ！！」

「父上！！！」

信虎殿は信繁の襟をつかみつめ寄り、動揺する信繁に構わず続けます。

「怯える事はない！この国に力などありはしない！」

「今攻めればその日のうちに平らげる事が出来るのじゃ！」

「心配はいらぬ！わしがこちらから準備をしておく！」

信繁は信虎殿を手を解くと断固たる口調で父、信虎殿を諭します。

「もうお辞め下さいませ、父上の仰る事分かりかねます（汗）」

「我が甲斐と駿河は固い絆で結ばれております！」

「兄上はその事常々申しております」

信虎殿は怒りのあまり信繁の顔を殴りつけようとします。

「はぁ（脱力）」

信繁の額に軽く拳を突けると今迄の緊張感が嘘のような呆けた表情となります。

「そちも腰が抜けたか･･･」

信繁は信虎殿に戦の事は忘れて欲しいと言いますが、信虎殿は二十年経っても信濃一国平定できておらぬと言います。晴信は既に信濃守護職であると言います。

「信濃等はどうでも良いのじゃ！目指すは西であろう！？」

「晴信めに儂を甲斐へ戻せと申せ！！」

信虎殿は信繁の両肩を掴み泣くのでございました。信繁は先程の雰囲気が嘘のように力なく泣く父信虎殿をただ黙ってみつめ涙する事しか出来なかったのでございます。

次郎戻る

躑躅ヶ崎でももう一つ親子の再会が行われようとしておりました。主殿には晴信と三条殿、そして信廉が控えております。晴信としては珍しく落ち着かない様子でございます。

「遅いの」

三条殿が待ちくたびれております。

「もう少々待ちくだされ」

はやる三条殿に信廉が優しく問いかけます。三条殿としては八年振りに比叡山から帰ってくる次郎にへの想いがこみ上げております。

「竜宝と言う名も中々よき名じゃ」

三条殿は目が不自由な次郎には手を差し伸べて援けてやらねばと言いますが。

「ただいまおつきになりました！」

次郎は8年振りに比叡山から戻って参りました。

「父上。母上。只今戻りました」

「よう戻った！さ、中へ入れ！」

次郎はこの八年で立派なお坊様に成長しておりました。三条殿は涙を堪える事が出来ません。三条殿は目が不自由な次郎に手をかすように言いますが、次郎はそれを固辞すると主殿の中へ入って来ます。

「母上！ここ躑躅ヶ崎の事は隅から隅まで存じております！」

次郎は我が家の匂いを懐かしんでおります。次郎、いや竜宝はまだ修業中ではあるものの、比叡山での修業に区切りがついて、当面は岐秀和尚のいる長禅寺に入ります。これからは度々会える事になる事になり三条殿は喜びます。

「次郎！！」

「兄上！？」

そこへ義信もやって来ます。

「なんじゃ？ぼろい僧衣じゃの！もっと立派な坊主になったかと思った！」

義信は戸惑う次郎を立たせると自分の館へと誘います。

「父上、母上ではまた後ほど」

「しばらく見ない内にでっかくなったな！」

「それは兄上もですぞ！」

あっけにとられる晴信と三条殿。

「義信はなんと身勝手な･･･」

「儂と同席したくないのであろう」

「何やら、お前様と父上（信虎）様の事を思い出します」

「儂は父と違い理不尽ではない」

「義信は理不尽と思っているやもしれませぬ」

「今に分かる」

武田信玄第26話中巻～氏康と景虎～

この年の夏の終わり、長尾景虎殿はついに関東へと兵を進めたのでございます。まずは厩橋城へ入ると北条氏康殿に圧迫されてきた関東の諸将が集結したのでございます。

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工事

「松田康郷！武田殿返事如何であった？」

小田原城では迫りくる上杉勢への備えを整えると同時に晴信に景虎殿の背後を突くように使者を立てております。晴信は援軍の件は承知したとの事でございます。

しかし、武田の援軍が信濃から背後を脅かすとしても、その前に景虎殿の軍が関東に迫れば少々危険と松田康郷は申します。氏康殿はあくまで「援軍」は援軍。最後に頼みとなるのはこの小田原城であると言います。

「松田憲秀、空堀水堀の工事はどうなておる？」

あと一月はかかりそうだという松田憲秀殿に工事を急がせるように命じます。

「氏政、城の蓄えはどうなっておる？」

北条氏康殿嫡男氏政殿は指示通りに三か月分の備蓄がある旨報告します。ただ、氏政殿は三ヶ月では足りぬのではと意見具申をします。

「三ヶ月で良い。増やせばキリがない六ヶ月、一年と欲しくなるものじゃ」

氏康殿は今回の戦の胆は小田原城の工事の完成であると言います。

進撃の景虎

「武田勢は真っ直ぐ碓氷峠へ向かっておるのか？」

晴信は兵二千で甲府を出発。しかし、碓氷峠から上野へ入るのではなく、途中で寺々で願文を掛けていると言います。

「金倉城を落すと」

上野国へ入った景虎の軍勢は途中、関東の諸将を加えて数万の大軍に膨れ上がっておりますが、この諸将は皆、晴信と氏康殿には幾度も破れております。

「武田晴信は動かない」

景虎殿はすぐに小田原城へ向けて進撃を命じます。

「お、お待ち下さい！！」

関東の諸将はもし、晴信が碓氷峠を越えて大軍で南下してきた場合は北条勢と挟み撃ちになる事を懸念します。景虎殿は晴信は碓氷峠を越えてはこないこと、それは願文が「長尾景虎討伐」ではない事からも明白と言いますが･･･。

「お願いにございます！武田勢の動き見るに今しばらく御猶予を！」

「この長尾景虎をお信じ下され。戦には勢いがございます」

しかし、関東の諸将は頑として折れず、結局、小田原への進撃は遅れる事になります。

小田原城の戦い

「父上！呑気に将棋などしている場合ですか！御指図を！」

長尾景虎殿の軍勢は越後を出た時は八千程でありましたが、途中関東の諸将が次々と馳せ参じ、十万を超える軍勢と相成りました。小田原城は景虎殿に完全に包囲されております。

「放っておけ」

「松田！その方が（将棋の）相手をするからじゃ！」

「氏政、そのような大きな声をだすな（疲れ）」

氏康殿は鎧も召さずに将棋に興じておりますが、若き氏政殿には不謹慎と映ったよしにございます。

「この小田原城は工事終わり万全じゃ。あの空堀水堀は超えられぬ」

「されど！」

「良いか、中に入れぬ敵と戦うは愚かじゃ」

氏政殿はさらに食い下がります。

「それでは北条の面目が立ませぬ！」

「良いか氏政。景虎殿は七千の兵を引き連れて越後出た。それも去年の秋じゃ」

氏康殿は如何に越後勢は粘り強いといえども奪うものも無ければ、この地に留まれるのは精々一月。そして、その焦りいきり立つ越後勢に仕掛けるのは火に油であると諭します。

「知らぬ顔こそ一番の戦いじゃ。決して城を出てはならぬ。よいな？」

「はい」

氏政殿は兵を見回りに出ていきます。

「儂が死んだら･･･思いやられる」

その頃城外では長尾景虎殿が小田原城近くで相模湾の潮風を楽しんでいました。しかし、そこは鉄砲の射程圏内でございます。

「菊丸！相模の海は暖かいの」

「はい」

そこへ血相を変えて直江兼続殿が。

「ここは危険にございます！」

「儂に玉は当たらぬ。儂に当たれば毘沙門天はおらぬ事になる」

毘沙門天の生れ変りである自分に玉が当たらないと確信をしておるようです。そして、城から鉄砲を散発的に撃ちかける北条勢に対して美しき流れを想えと叫ぶのでした。

景虎殿は氏康殿の予想通りに一月ほどで包囲を解くと鶴岡八幡宮にて正式に関東管領に就任。また、上杉憲政殿養子となり、名を上杉政虎と改めたのでございます。

武田信玄第26話下巻～偽りの館～

景虎殿が関東に攻め入る少し前、晴信はある相談を三条殿にしておりました。三条殿の妹は畿内一円に大きな影響力をもつ一向宗、石山本願寺の門主本願寺顕如殿にございます。

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偽りの館

「今日は戦の話をしに参った」

「お前様は都へ上るのですか？！」

三条殿は晴信がいよいよ、都に上るのではと期待に胸を膨らませておりました。勿論、今すぐという訳でなくても良かったのです。三条殿としては小さい希望が欲しかった。しかし、晴信はそのつもりはないと言います。

そして、現状の甲斐、越後、相模、駿河等の状況を説明します。

景虎の勢い凄まじく、このまま関東に攻め入れば北条を滅ぼす可能性がある。北条が滅べば、当主を失い弱体化が著しい駿河も滅ぼされる。そうなると、いよいよ景虎は上洛し天下を獲るであろうと。

景虎は越中で一向一揆と対立しており、越後国内では一向宗は禁止されている。もし、景虎が上洛すれば一向宗は当然禁止される。そうはさせないために、越中一向衆を動かし越後に揺さぶりをかけるように頼んで欲しいという。

「景虎に天下を獲らせてはならぬ」

「天下に興味のないお前様になんの関係があるのですか？」

「悪しき者に天下を獲らせぬのは守護の務め」

「偽りを申すな！この三条偽りの言葉聞くために二十有余年ここにいるのではない！」

三条殿は泣きながら叫びます。

騒ぎを聞いて八重がやって来ます。

「姫様！？姫様！！！」

八重は三条殿を落ち着かせると腕に抱きながら告げます。

「姫様には身も心も捧げた八重がついております」

三条殿は八重の腕の中、虚ろな表情で虚空を見つめておりました。

川中島へ

「申しあげます！信濃より狼煙あり！越後勢春日山城を出ました！」

「景虎、小田原より戻りて直ぐに出てきましたな」

「景虎に焦りありじゃ」

晴信は信繁に景虎の心中を推し量って見せます。先般の小田原遠征では新たな領土を得る事もなく、しかも、自分だけが関東管領となっており、ここのあたりではっきりとした勝ち戦をしなければ家臣に乱れが生じる。

「決戦になりますな」

「此度の戦は死ぬか生きるかじゃ」

いよいよ川中島の決戦にて我が子晴信にとっても生涯忘れる事が出来ない戦となりましてございます。では、今宵は此処までに致しとうございます。

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