武田信玄(大河ドラマ)のあらすじ第2話「決意の時」。時は天文10年(1541年)。この年は晴信にとっても、また我が甲斐にとっても、大きな転換点となる年にございます。時に晴信21歳にございます。武田信玄のあらすじ第2話!

武田信玄第2話上巻~兆し~

突如、農民兵とも夜盗とも分からぬ方々に包囲された晴信と共回りの家臣。農民兵達は突然、斬りかかって参ります。無論、我が子晴信も武芸の鍛錬を怠っていた訳ではありません。動じずに応戦しますが、多勢に無勢。共回り3人と後ろを取られぬように動きます。

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倉科党

「はっはっはっ!」



当然、森に笑い声が響き渡ります。1人の山賊風の男と、野性的な美しい娘が晴信たちを見ておりました。



「武田晴信殿、胆力に不足なし!」



突然現れた、山賊の棟梁と思われる人物は、晴信と自らの手の者との戦いを見て、その胆力、そして圧倒的に不利な状況下にも関わらず、決して諦めずに活路を開こうとする姿勢に、感じ入ったご様子でございました。



「倉科三郎左衛門、我が屋敷へご案内を致します」



このお方は倉科党という一党の土豪の棟梁にございます。晴信達はその屋敷へ案内をされるとそこで思いがけない人物と再会します。



「若殿!お久しぶりにございます!」



「今井兵部!鎌田十郎左衛門!」



そう。信虎の度重なる無理な戦に耐え兼ねて出奔した奉行衆の二人でした。半数近い奉行衆(国衆)に出奔されていた武田家にとっては、二人がまだ、甲斐にいてくれたことは僥倖にございます。



「他の奉行衆もおるのか?」



「いえ、我らだけにございます」



やはり、多くの奉行衆は甲斐を棄ててしまっているようにございます。広間に通された晴信は倉科三郎左衛門から現在の甲斐の苦境に関して訴えられます。



「凶作に水害、この倉科においても、民は野草を喰らう毎日」



「度重なる戦にて、働き手を奪われ、田畑も荒れる」



晴信には頭の痛いお話しにございましょう。倉科三郎左衛門殿が申すには既に、甲斐の民は信虎殿の治世に不満反発、いや、すでにそれを通り越して、祖国を棄てる土豪(国衆・国人)も多いと言います。さらに。



「守護職の第一義は、国内の平穏無事と存ずるが如何に?」



倉科三郎左衛門殿はこの甲斐の苦境は全て、甲斐守護職、我が夫、信虎殿に非があると申しまする。晴信は答えます。



「甲斐の平穏は戦によって得たもの。戦わずして国滅びよと申すか?」



倉科三郎左衛門殿は続けます。



「滅びるのは国ではござらん!滅ぶのは武田信虎殿!!」



「聞き捨てならん!!!」



晴信は刀を抜きかけますが、倉科三郎左衛門、いや、出奔した奉行も、信虎殿から民心は離反しており、晴信が今こそ立つべきと願います。そう、つまりは信虎殿への謀反。しかし、晴信は突如笑い出すと槍を取り言います。



「このような槍4、50もって謀反とは、天に向かって唾するようなものじゃ」



その様子をじっと見つめているお方がおりました。



「あそこに誰かおる!」



晴信は掴んでいた槍を投げます!槍は男の袖を木に縫い止めますが、男は袖を破り逃げます。



「謀叛は密なるを要する。間者の見ている前で謀反の相談とは笑止!」



晴信たちは倉科一党の屋敷を後にします。倉科殿の娘は「謀叛は密なる」と指摘された事で祖父をからかっておいでにございます。一方で、「晴信の元に上がりたい(側室になりたい)」という孫娘の言葉には「晴信殿の警護でもするのか?」笑って言い返しています。この2人、よき家族にございます。また、晴信たちは帰路の途上、先ほど逃げたと思われる間者を発見します。



「あの男は先ほどの?



「放っておけ。帰って、甲斐に謀反など起らぬこと報告するじゃろう」



父と子

この頃、我が夫、信虎殿は度重なる戦と、血を流し過ぎたことに耐えかねて、酒に溺れる日々を過ごしておりました。当時、「らん」という側室がおったのですが・・・。



「らん!貴様待たぬか!!」



「お、お、お助け下さい!」



心ある家臣は女子とお酒、そして戦に溺れる信虎殿に段々何も言えないようになっておりました。そんなある日。お館様である信虎殿の前で3人の息子、晴信、信繁、そして信廉の3人が弓の稽古を披露しておりました。



「信繁よいぞ!」



「信廉、気にするな!的が小さいのじゃ!」



信繁、信廉も一角の若武者になっておりました。的を見事に射抜いた信繁を褒め、やや外した信廉に発破をかけております。そして、晴信。晴信は見事に的にカスリもしませんでした。



「手元が狂っておりました」



信虎殿はあきれ果てて申します。そのような事で武田家の家督が継げると思うかと。さらに。嫡男の座を弟達に譲るかとも。



「そのようなお言葉この場では相応しくありません」



傅役でもあり筆頭家老の板垣殿が諫言致します。



「そちは晴信の傅役。育て方を間違えたようじゃの(呆れ顔)」



弟、信繁がたまらず、



「畏れながら!兄者はそのような方ではございませぬ!」



信虎殿は信繁の「謙譲」の美徳を褒め称えると、晴信にどうするのか再び問います。



「廃嫡が望みか?」



「此処に至れば申すまでも無き事」



その名は八重

晴信が廃嫡を望んだという噂は瞬く間に屋敷に広がりました。ただ、屋敷うちで信虎殿と晴信の不穏な関係、そして、最近の信虎殿は酒と、戦で益々突拍な言動が増えてきている事もまた知られています。誰もまだ半信半疑でしょうが、廃嫡等絶対に許さないお方が二人おります。



「お館様にお詫び申し上げて下さい!太郎(息子、後の義信)の事を考えて下さい!」



晴信はもう決めた事と取り合いません。そこへ八重殿がやってきます。八重殿は三条殿の女御にして親代わりでもあります。



「武田家嫡男でなければ、こんな山里に姫様は下向致しませぬ」



八重は晴信の説得をしますが、一向に耳を貸しません。泣き崩れる三条の方。しまいに八重殿は信虎殿に謝罪して、廃嫡の件を取り消してもらえるように、自らの死をもってお伝えすると言います。



「何故止めぬ!」



短刀を出し死のうとする八重殿を止めない三条殿へ文句を言いながら、八重殿の短刀をと取り上げようとします。



「お主、自ら死ぬような目をしておらぬ。いや、人を殺める目をしている」



八重殿の瞳を間近で見て「何か」に気が付いたのでしょう。



「お主、おここという女子を手にかけなかったか?」



知らぬと答える八重殿から、短刀を取り上げると、廃嫡の件は自らが望んだ事であり、取り消すことはあり得ぬと言い放ち、奥を後にします。

武田信玄第2話中巻~父を乗り越える~

信虎殿の行動は日に日に常軌を逸していきました。ある夜。女子のすすり泣く声が屋敷に響きます。童達は幽霊か怨霊と騒ぎ脅えております。

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正念場

晴信は声がする方へ向かっていきます。そこにはおぞましいものが。らん殿が信虎殿に庭の桜の木に戒められていたのです。酒を飲み、縛られてすすり泣くらん殿を見てにやける信虎殿の目は既に虚ろにございます。



「どうか、らん殿を許してやってください」



この頃の信虎殿は、酒が入ると何をしでかすか・・・。らん殿をお斬りになりかねないご様子にございました。私は必死にお許しを請うておりますと晴信がやって参ります。



「童が脅えております。らんを放してやってください」



晴信も信虎殿に頼んでくれました。私、ハラハラしておりましたが、信虎殿は上機嫌でございました。



「晴信!たまには酒でも一緒に呑もう。晴信にも酒じゃ!」



「では、らんを放してやってから・・・」



「それはならぬ。この女はわしの白髪を馬鹿にした!!!!」



「この白髪一本一本が儂が殺めた人の数・・・数え切れん!!」



晴信は信虎殿の説得を諦めると、地に伏して信虎殿に頭を下げる私を立たせます。



「母上がそのような事をする必要はない!立たれれよ!」



驚き、私は立ち上がりました。信虎殿は立ち去ろうとする晴信と私を侮辱します。我が父(大井の実家)が甲斐の国衆でありながら今川と手を組んで信虎殿を攻めた卑怯者と。だが、信虎殿はそれに勝利して私を「人質」として妻に迎えて晴信が産まれたと。晴信には卑怯者の大井の血が流れていると。



「子の空威張り!親の空なみだか!立ち去れ!」



酔っているとは言え、なんとも情けなきお言葉。そして、立ち去る晴信に向かい信虎殿はまたを挑発致します。



「逃げる時は素直じゃの。最初の勢いはどこへやら!母に手を曳かれる幼子のようじゃ!ハハハ!」



「らんの縄目を解きに参ったのではなかったのか?」



晴信は立ち止まり振り返ると。



「らん殿の縄目、解いてご覧に入れまする」



晴信はそういうと桜の木に戒められたらん殿の元へ歩き出します。信虎殿の尋常ならざる雰囲気に様子を見ていた板垣殿と甘利殿も固唾を呑みますが、



「ここが若殿の正念場」



止めようとする甘利殿を板垣殿が制止ます。そして。



「晴信!!」



私が叫んだ時は既に遅く、信虎殿は刀を振り下ろしていました。



「父上、手元が狂われましたぞ」



そして、晴信は再び歩き出すと、桜木に戒められたらん殿を解き放ちます。




翌日。
晴信は板垣殿を呼び出し会っておりました。



「何かお話しが?」



「父を追放する。信のおける者を集めよ」

追放先

「信虎殿におかれては(晴信に)困っておられよう!分かり申したが、今は戦の最中。詳細はまた」



この後、晴信は信虎殿の追放を決意していますが、実は信虎殿もまた晴信の追放を決断。そして、その追放先に選択したのは共に縁戚となっておりました今川家。今川義元殿は晴信、そして信虎から同じ内容の手紙を受けとっておりました。



「さて、どうしたものかの・・・?」



今川義元殿、その後生母寿桂尼殿、そして僧籍にありながら、今川家の軍師でもある太原崇孚殿。3人はどちらがより駿河にとって役に立つかを検討されております。信虎は無類の戦好きで、敵対関係にある北条への備えとしては万全だが、古狸。




では、若輩者の晴信の方が御しやすいか?ただ、御しやすいという事は「頼りない」という事でもある。



「どちらにも引き受けたと言えばよい」



寿桂尼殿はどちらが先に勝ち名乗りを上げるか。
その力量こそが駿河にとって必要な力であると。



「勘助はどう見た?」



勘助と言われた男は先般、晴信と倉科党のやり取りを見ていた間者であります。勘助殿は、晴信を「怜悧なお方」と評し、また、大器であり、義元殿にとっても力強い味方になるかもしれないと述べられました。



「味方等という者は、常に敵の仮の姿と思わねばならぬ」



義元殿は自らに言い聞かせるように語るのでございました。

武田信玄第2話下巻~決断~

甲斐では晴信の決意を聞いた板垣殿が「信」のおける方々を集めておりました。場所は甲斐の峰々が良く見える野原にございます。

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家臣たちの決意

「儂は、晴信様謀叛とあらば、従おうと思う」



板垣殿は自らの決意を、飯富殿、原殿、馬場殿、甘利殿、共に信虎殿の元、甲斐統一のため戦った歴戦の将に告げます。



「儂がここにいるのは、板垣殿と共に行くと決めたから」



飯富殿はじめ皆さま晴信に同心する覚悟を決めておいででございました。



「美濃殿にはご迷惑でなかったか?」



信虎殿の信頼も厚い原美濃守殿を気遣う板垣殿ですが原殿もまた覚悟を決めておられました。信虎殿への謀反は生涯忘れる事はないが、新しい甲斐のため、新しい国主を迎える覚悟だと。




ここに、甲斐統一を共に戦った重臣達の意見はまとまり申しました。

信虎殿の真実

「小県郡(ちいさがた)海野を攻める!」



信虎殿は新たな戦を開始しました。陣ぶれが次々と決まる中、晴信には兵が与えられず、信虎殿の近くを警護するように命じられます。出陣の前に私へ挨拶に参りました。



「戻ったら親孝行を致しまする」



部屋を出ようとする晴信を呼び止めて、やはり真実を伝える事に致しました。



「先般のお館様のお話し。あれは全部嘘じゃ」



真実は、信虎殿は我が父を怖れ、我が父に従わされた。その見返りとして私が信虎殿の元へ嫁いだのです。



「お館様は心の病じゃ。よしなに・・・」



今宵は此処迄に致しとうございますが、
我が夫信虎殿と我が子晴信の諍いはここに最後の時を迎えたのでございます。

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