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太平記(大河ドラマ)のあらすじと感想第12話「笠置落城」。ついに楠木正成立ったのに・・・!陶山何某のご活躍で笠置があっさりと落城。あんまり描かれておりませんが、笠置落城後の帝のお労しさときたら(涙)。大塔宮はいつの間にやら正成と帯同。此処で二人は信頼関係を築くことになるのかな?太平記のあらすじと感想第12話!
太平記(大河ドラマ)あらすじ第12話「笠置落城」
足利軍は元弘元年9月半ば、遠江国の橋本宿(現在の浜松周辺)に到着していた。此処は、遊女宿も多い歓楽街という事もあり、夜は高氏も参加して宴を催していた。
太平記あらすじ第12話上巻「兄弟」
この日は満月であった。
高氏は一座の中心で酒を飲みながら、配下の武将たちが遊女と踊り狂うのを楽し気に眺めていた。執事の師直は鼓を叩いているが、それが中々堂に入っている。
師直はいつも「能面」のように無表情だが、この日はその能面も心なしか機嫌良さげに見える。
しかし、一人「宴」を楽しめずに悶々としている男もいる。
高氏の実弟直義である。
ただでさえ、帝に弓引くこの戦は気が進まないのだ。苛立って寝付けない夜に本陣からのどんちゃん騒ぎについに起き出し座に怒鳴り込んでくる。
「今、何時と心得る!!!」
遊女は勿論、座の諸将も白けたように沈黙する。
「大佛殿の軍勢に2日の遅れを取っている!」
「明朝は早い出発と申したのは師直!そちであろが!」
師直は直義を一瞥するが無表情でなんの返答もしない。少なくとも、悪びれている様子は微塵も感じられなかった。
「兵部大夫(直義)殿がそう申しておる」
「皆、あと1曲で終わりにせよ!(笑)」
高氏は努めて明るく命じるが、皆、一様に顔を見合わせている。
「どうした?それそれ!あと一つじゃ!」
高氏のダメ押しが効いたのか、諸将も遊女も囃子に合わせて踊り始める。直義は憮然とした表情でただ一人その様子を眺めていた。
座がはけると、足利兄弟は本陣の幕の外で二人になる。
「兄上!ここ橋本宿は確かに遊女で名高い宿・・・!!」
「連日の行軍で皆疲れております!ここらで一休みというのは分かります!」
「さりながら、父上が亡くなって半月!」
「我らが向かうは帝!」
「よう、唄など唄えますな!!!!!!」
高氏は直義に向き直る。
「父上が亡くなり半月、向かう相手は帝」
「皆、唄でも唄わねばやり切れまい?」
「やり切れぬ気持ちは其方だけではない・・・」
「それが分からぬか!」
直義は驚いた表情を見せる。兄の本心を初めて垣間見た気がしたのだ。

やり切れないのは其方だけではない。高氏と直義、良い兄弟だな。
高氏は丁度良い機会と考えたようだ。以前、登子に語っていた「真意」を伝える。
「其方には初めて申すが・・・」
「この戦で儂は太刀を抜かぬ」
「それ故笠置へはゆっくりと参る」
「そ、それでは兄上は・・・!!」
そこまで考えていたのか。高氏はもし、宮方と戦いになれば逃げて、逃げて、逃げるのだと話す。直義は自身が兄高氏に抱いていた不信を恥じた。
しかし、高氏は誇る様子も気負う様子もなく、寧ろ自嘲気味に続ける。
「日野俊基殿を見捨てたように、帝の兵を救う事は出来ぬ」
「所詮、見殺しじゃ・・・見殺しじゃ」
直義は兄の表情を見続けることが出来なかった。そこに、一色右馬介が戻って来たという知らせが入る。右馬介は貞氏の命で伊賀へと入り込んで、高氏と藤夜叉との間の子「不知哉丸」を見守りつつ畿内の情勢を探っていた。

右馬介久しぶりだな。
「右馬介!よう戻った!」
「若殿・・・!右馬介只今戻りました!」

もはや「若殿」ではなくなった。
右馬介はまず貞氏が亡くなった事に哀悼の意を表する。かつて、塩屋一党が足利の里へ逃げ込んだ時に、貞氏の決断でただ一人幼い右馬介は助かったのだ。自分にとっても「父親同然」と涙する。

そうそう、小鳥を抱えた子供だった。
右馬介は涙を拭くと、改めて畿内情勢を報告する。
「殿、この戦長引くやもしれませぬ」
「河内水分の楠木殿が立ちました」

おお?「殿」になった。
高氏もかつて日野俊基からその名前は聞いたことがある。
楠木正成が立った事で、伊賀の服部氏、伊勢の関氏、播磨や備後の反北条も立つ可能性がある。そうなれば、戦も長引く。
「宮方相手に矢を放たないというワケにはいかないやもしれませぬ」
「その際はどうなさいますか?」
「・・・かと言って、これらが束になっても北条殿の屋台骨は揺らがぬ」

そうなんだよ。まだ北条の屋台骨は固い。楠木正成が戦を長引かせる。
高氏は苦悩の表情を見せる。
太平記あらすじ第12話中巻「楠木正成の策」
楠木正成が笠置山へ入った。
弟の正季も一緒である。
「おー!お前はましらの石か!」
「殿(正季)!お久しぶりです!」
石は伊賀の服部氏の傘下に加わっていた。正季は伊賀服部の軍なら自分たち楠木党と一緒に戦うことになるだろうと伝える。石は正季と戦えることが嬉しそうである。
正成の元には新たに立ち上がった諸将が集まってくる。
「楠木殿!それがしは備後の桜山慈俊」
「儂は播磨小寺頼季!これは一族の赤松則祐!」
皆、楠木正成の登場に意気が上がっているが、正成は静かに尋ねる。

備後の桜山、播磨小寺、赤松・・・。戦国期はちょっと残念なやられ役だね。小寺と言えば、、、200年後は御着の殿ですな。
「皆みな様の事は存じておりますが、いったい何しに笠置へ?」
「なんと・・・帝の御ためにである!楠木殿もそうではないのか?」
何もわかっていない。正成は何事か語ろうとしたが、すぐに仮の玉座で帝がお待ちであると召し出された。

錦旗だ。
後醍醐天皇はじめ、それに従う公卿公家たちが「楠木正成」を待っていた。しかし、現れたのは田舎侍としか言いようのない一人の武士である。とても「頼りになる」ような雰囲気は見えない。
しかし、帝は楠木を愛おしいそうに見つめると一言。
「兵衛!気強く思うぞ」
「はは」
正成はひれ伏していた。
笠置山には大塔宮護良親王も加わっていた。宮は早速、正成に今後の策を尋ねた。
「早速であるが関東を破る手立ていかに!?」
「関東を破る手立てはござりませぬ」
鎌倉方には近江佐々木、下野足利をはじめ、小山、宇都宮など兵法に優れた武者も数多い。その兵力は軽く万を超えている。
「さりながら、柿の美も熟れれば自然に地に落ちます」
北条憎しの機運は日の本全土に確かに満ちている。かつて、日野俊基が全国に巻いた種が花を咲かせる日が来ると。
宮は「その日」はいつか尋ねる。
「明日かもしれず、明年かもしれず、2年後かもしれませぬ」
「いずれにしても、我らは関東に火が上がるのを待つしかござりませぬ」
「それまで、負けぬように戦うのみでございます」
「負けぬように・・・?」
「勝たぬまでも、負けぬ戦はございます」
「どうすれば負けぬのか?」
「この山に敵を集中させぬよう、かく乱することでございます」
「桜山殿は備後にて、赤松殿は播磨で、この兵衛は河内で兵を上げる」
「この山を守るは、この山を離れることにございます!」
笠置山へ動座以来、後醍醐天皇ははじめて「理に適った希望」をみたように感じ満足気に頷いた。

後醍醐天皇の周辺には「プロ」がいないんだよね。威勢の良い意見も、弱気な意見も、その時の現象に一喜一憂しているだけ。勿論、後醍醐天皇ほどの人物がそのことに気付かないワケがない。
4日後、河内で挙兵。
水分の楠木館には足の速さを見込まれて、ましらの石が今後の策を預かり届けてきた。
長老の恩地左近は大塔宮も正成と下向すると聞いて感慨深げである。
「宮様が殿と一緒にのう・・・」
「左近、かねてからの手筈通りでよいのじゃな?」
その日のうちに、水分の楠木館の女子供は金剛山ふもとの千早と疎開。無人の館は正成の妻久子の手で炎に包まれた。

柿の木を見つめる久子の様子が切ない。因みに、楠木正成と双璧を成す名和長年は挙兵(後醍醐帝脱出後に)したとき、妻子諸共焼き払ったとか払ってないとか?
大塔宮を河内に迎え赤坂城で挙兵した楠木正成は巧みなゲリラ戦術で幕府方を翻弄する。

おお!菊水の旗印!テンアゲ。
正成の献策に従い、備後では桜山慈俊が挙兵、伊勢の関一族なども次々と反乱を起こした。笠置山は寡兵ではあったが士気高く、鎌倉方の焦りが募っていた。

笠置山は鉄壁の布陣でね。攻め方も元々の六波羅軍と関東からの新顔でいがみ合うという体たらく。アノ事件がなければここで勝っていたかも?
太平記あらすじ第12話下巻「先帝捕縛」
赤坂城には楠木正成、そして大塔宮護良親王も加わって戦っている。その赤坂城に京周辺の状況を知らせる文が届く。
「大佛(おさらぎ)貞直率いる二万の北条軍が京都到着のよしでございます」
「・・・二万・・・」
大塔宮はその数に絶句する。分ってはいたことではあるが、やはり関東とは兵数が違い過ぎる。
さらに、その書状は京で持明院統の天皇が新たに践祚されたことも伝えてきた。これには大塔宮が激昂する。
「鎌倉方は、笠置の帝を先帝として、新たな朝廷をたてるつもりでしょう」
これで、去就を迷っている者たちから「大義名分」を奪うことになる。宮方は一気に苦しくなる。
「京の新帝など認めぬ!」
大塔宮はこちらから攻めると息巻いて表へ出ていく。
「・・・やはり、苦戦じゃの」
残された正成は独り言のであった。
持明院統の新帝光厳天皇践祚。鎌倉方はその儀式を終えた後に悠々と笠置山へと向かった。そこには高氏の軍もあった。
新帝即位の後も笠置山の士気は衰えることなく、また鎌倉方の拙い攻めもあり今だ笠置山は健在であった。
「楠木は中々手強いという噂・・・」
「噂ではない!侮れば糧道を絶たれ飢え死にぞ」
「ふん、糧道も何もたかが数千の山一つ幾日囲んでおる」
「何を!?」
上洛した関東の諸将とこれまで笠置山で戦って来た六波羅軍を中心とした在京の諸将の反目もあり軍の統制が取れない。高氏は軍議には参加してはいたが、その様子をただじっと眺めていた。
「この戦、長引くやもしれませぬ」
右馬介の言葉を思い出していたのだが・・・。
ここに陶山藤三義高など数十名が恩賞目当てに笠置山の断崖を登り奇襲をかけたのだ。

あああ。!陶山出た!笠置落ちるわ。
笠置山は天然の要害であり、特に南の崖はとても人が登れるような場所ではなく兵はおかれていなかった。
もっとも、奇襲をかけたのは数十名であり、寡兵と言っても千を超える宮方と戦えばひとたまりもなかったはず。しかし、運の悪いことにこの日は風が強かった。
陶山達は社に火をかけたのだが、それが一気に燃え広がり、動揺した宮方は敵の大軍が現れたと誤解して同士討ちを始めてしまう。
気付いた時には・・・。
笠置山の異変に鎌倉方も一気に攻めかけ、後醍醐天皇は着の身着のまま笠置山を落ちていった。
翌朝。
その知らせは高氏の元にも届く。
「兄上・・・帝が捕らえられましたぞ!」
笠置山の落城、そして笠置を落ちた後醍醐天皇はあまりにも薄汚れていたため「本当に帝か」確かめるのに手間取ったという。高氏は朝餉(あさげ)の手を止め黙って聞いている。
「直義、7年前に帝を拝したことがある」
「なんと」

もうあれから7年か。
7年前に右馬介と共に初めてやっきた都。醍醐寺に行幸していた後醍醐天皇に会った想い出を話す。
あの美しい帝が・・・。
高氏は京へ戻った。
それを貴人風の少年がじっと眺めていた。

おお!北畠顕家!可愛い・・・。当たり前か。
以上、太平記(大河ドラマ)のあらすじ第12話「笠置落城」でございます。
太平記(大河ドラマ)感想第12話「笠置落城」
太平記(大河ドラマ)感想第12話「笠置落城」。楠木正成が全国デビュー。笠置山での謁見での後醍醐天皇の表情からは「やっとよるべき大樹」を手に入れた安心感を感じた。
太平記感想第12話「専門家の出番」
この時は「危機の時代」「非常の時」だと思うのですよね。専門家が必要とされ活躍する時代。「軍事」でありその「専門家」である楠木の意見をよく聞く。
危機の時代が去って「安定の時代」になると専門家は排除される。専門家は沈黙を余儀なくされるわけです。
まあ、それはしょうがない。
安定の時代は「組織が仕事をする」から・・・。専門家がいなくてもなんとかなる。
で、一番恐ろしいのは「危機の時代」「非常の時」であるにも関わらず、今は「平時」と勘違いして義理人情と想いと政治優先で専門家を排除しまくること。
怖いですねぇ。
さて、令和一桁はまだ「平時」でいいのかな・・・?
太平記(大河ドラマ)のあらすじと感想第12話「笠置落城」でございます。
今宵は此処までに致します。