武田信玄(大河ドラマ)最終回のあらすじ「神々の黄昏」。我が子晴信の五十有余年の旅もいよいよ今宵で最期となります。長篠城を出発し甲斐へと帰路についた晴信ではございましたが、病はもはや輿に揺られる事さえ許さなかったのでございます。武田信玄最終回!
武田信玄最終回上巻~信玄の最期~

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武田勢は伊奈で動きを止めます。我が子晴信は齢53歳にして、その最期の時を迎えようとしていたのでございます。
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甲斐に光を
晴信が目を覚ますと、枕元に里美殿がおります。晴信もまたもはや自分の命が尽きかけている事を認識しておりました。
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「・・・里美・・・」
「はい・・・」
「礼を申す・・・其方は常に儂の・・・青空じゃった・・・」
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里美殿は晴信前では笑顔を見せ一人外に出ると泣きじゃくるのでございます。
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その晩。
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晴信は勝頼、信廉をはじめ西上作戦を共にした重臣達を枕元へ呼びます。
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「勝頼」
「信廉」
「馬場」
「山県」
「高坂」
「原」
「阿部」
「・・・後を頼むぞ・・・」
「我が死を三年の間秘めよ」
「我が死を知れば信長をはじめ多くの敵攻めて参る」
「三年の間に新たなる甲斐を創り守りを固めるのじゃ・・・良いな・・・」
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「はは!」
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晴信はそれだけ伝えると満足そうな表情を浮かべます。
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「・・・一人にしてくれ・・・」
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重臣達は皆、晴信の寝所を後にしますが誰一人として眠るものはおりませんでした。晴信の最期を見送ろうとしているかのようでございます。
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そして。
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夜が明けます。
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朝日が晴信の顔を照らします。
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「甲斐に光を・・・」
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この日、晴信は静かに息を引き取ります。甲斐の国では竜宝と恵理殿が晴信の最期を感じたような気がしていたのでございます。
帰国
「荼毘にふさねばならぬ・・・御連れするには甲斐は遠すぎる」
「・・・今少し早く甲斐に戻る決心をすれば良かった・・・」
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信廉の言葉に勝頼・重臣達は沈黙します。
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「・・・涙に暮れている時ではないな・・・今こそ我ら気持ちを引き締めねば」
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信廉は晴信の遺言、
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「我が死を三年の間秘めよ」
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に従い、目立たぬように晴信を荼毘にふすと言うと馬場殿に視線を移します。
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「余りに慌ただしくお館様を荼毘にふす事耐え難き事ではありますが・・・」
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馬場殿は晴信の死を秘匿するため信廉には軍勢の先頭に立ち晴信の影武者を務めてもらい、自分達で目立たぬように執り行い後から追いつく旨を提案します。
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勝頼と信廉を除く五人は兵卒の出で立ちとなると、晴信の亡骸を板に乗せ目立たぬように本陣の置かれた屋敷を出発。
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晴信は五人に見守られ静かに荼毘にふされたのでございます。
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暫く後に武田勢は躑躅ヶ崎へと戻ります。
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屋敷の中に輿が運び込まれます。
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「・・・お館様のご帰還にございます」
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輿の中からは晴信の骨壺を抱えた里美殿が姿を現します。晴信はようやく躑躅ヶ崎へと戻って来たのでございます。
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「・・・お帰りなさいませ・・・お待ち申し上げておりました」
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恵理殿、真田殿、竜宝は涙を堪え無言の帰国となった晴信を迎えたのでございます。
武田信玄最終回中巻~不協和音~
既に覚悟していた事とは言え恵理殿や留守を任されたいた真田殿の想いは如何ばかりでございましたでしょうか。
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悲嘆
恵理殿は無言の帰国となった晴信を気丈に出迎えましたが、やはり哀しみを堪える事は出来なかったようでございます。
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晴信の骨壺を安置し涙を堪え自室へと戻ると、
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「こんなもの・・・!!」
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かつて、信虎殿が三条殿に贈って以来、武田の御旗を立て続けて来た日ノ本の絵図が描かれた金屏風を短刀で突き刺します。
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「・・・嗚呼!!!」
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最後、晴信の心を捕らえて離さなかかった京の都の辺りに、恨みを晴らすかのように刃を突き立てるのでした。
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無言の帰国をしたのは晴信だけではございません。
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この三十有余年の間我が甲斐のために戦っていた平三殿と平五殿。
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此度は平三殿のみの帰国でございます。
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遺骨が帰れただけでも晴信は幸せなのでしょう。平五殿は亡骸も甲斐へ戻る事は叶いませんでした。
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「帰ったど・・・!」
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二人の母とら殿は居間で起きると怪訝そうな表情を向けます。
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「あーあ。やってらんねぇなぁ」
「京に上ると言うからさぞかし良い事があると思ったけど‥‥」
「何のことはねぇ!お館様が病だってんで尾張の手前から引き返して来た」
「まったく!くたびれもうけも良い所だ!」
「甲州金は一粒もねぇからな」
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平三殿は居間に腰掛けとら殿を背に外を見ながら一気にまくしたてます。
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「なんでも良いからその汚い身体を洗って来い!」
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平三殿は立ち上がります。
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「そいで、平五のすぼけはどした?」
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「・・・平五はおっ死んだよ!平五のすぼけは二俣城でおっ死んだ!」
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とら殿は平三の言葉に目を丸くしています。
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「・・・おらが殺した訳じゃねぇ!」
「うすボケがボンクラしているから鉄砲玉が当たったんだ!」
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その時。
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「お、おっ母・・・これはどういう・・・!」
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とら殿は立ち上がりました。脚を悪くしていたはずのどらは杖に頼らず仁王立で平三殿を睨みつけます。
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「アイヤー!!」
「な?!おっ母!!やめ・・・!」
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とら殿は平三殿を叩き出してしまいます。
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「おっ母!!脚はどうしただ?平五が立たせてくれたんか‥?」
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「お前が一緒にいてどうして平五殺しただ!!」
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「お、おらは止めただ・・・」
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「止めたらなんで死んだ!?このすぼけがー!!」
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「おっ母・・・あけてくんりょ・・・」
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「平五を連れ戻して来い!!」
「連れ戻してこなければ二度とこの家には入れんぞ!!」
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「平五はおっ死んだだ!あの世へ行っちまっただ!」
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とら殿は亡き平五殿を想い悲嘆に暮れるのでした。
真田の怒り

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躑躅ヶ崎では不穏な空気となっております。
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「なぜ!このような事になる前に引上げる決心をしなかったのか!」
「お館様のご意向如何なるものであろうと・・・」
「変わり果てたお姿でお戻りになる事誰が喜びてお迎えになりましょうや!?」
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真田殿の言葉は西上作戦に同行した重臣達の心に突き刺さります。
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「真田!声が高いぞ・・・!」
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信廉が真田殿に声を落とすようにと言いますが・・・。
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「信廉様!勝頼様!この真田幸隆諫言申し上げます」
「例えお館様の御言葉があったからとは申せ・・・!」
「お館様を残して上洛を考えるは不遜にござる!」
「我が軍勢の先頭にお館様のお姿なくば上洛しても何一つ動かぬ事!」
「それを重々ご承知のはずでござる!」
「にも関わらず一月余りも長篠城に留まり上洛の機を伺うなど言語道断!」
「その1日1日がお館様のお命を刻んだのでございます」
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重臣達にも思うところはございます。阿部殿は真田殿に反論します。
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「その場にいない其方に何がわかる!」
「今この場においては何事も言うは易しじゃ!」
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「それは言い訳というものじゃ!」
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勝頼も黙ってはおられませぬ。
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「黙れ真田!!!」
「我ら長篠城に留まりしは父上が命を繋ぐため!」
「父上の悲願を想い、病気遣い、長篠城を動けぬ悔しさ!」
「お前などに分かるはずがない!」
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「御言葉ではございますがお館様に仕えし歳月勝頼様より長ごうございます」
「よってお館様が御心中よくよく存じ上げているつもりでございます!」
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「されば!父上が心中申してみよ!!」
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「されば申し上げます!」
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堪り兼ねた馬場殿が真田殿を制します。
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「真田!控えよ!!!」
「今は亡きお館様の御心中を勝手に語るなど許されぬ!」
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「構わぬ!申してみよ!」
「儂は聞きたいのじゃ!真田は父上が心内よくよく存じていると申した」
「父上が考え、家臣の者がどのように存じているか聞きたいのじゃ!申せ」
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「では・・・申し上げます!」
「御出陣前お館様は私に後を頼むと仰せでござました」
「お館様は既に病重くご出陣をされれば生きては戻れぬ事ご承知でございました」
「そのお館様が何故ご出陣をなされたかと申せば」
「武田の軍勢の威容を示し勝頼様に総大将の有様をお伝えしたかったからではございませんか?」
「されば!三方ヶ原の勝利を持って無理にでも引き返すのが!」
「病重い御父上に対する思いやりというものではございませんか!?」
「それこそが人の上に立つご器量と・・・(涙)」
「ただ前に進むだけなら・・・」
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「真田控えよ!!」
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「ただ前に進むだけなら何じゃ!?申してみよ!」
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重臣達が堪り兼ねて間に入ります。
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「勝頼様!真田殿の事は我らにお任せ下さい!」
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山県殿。
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「某からもお願い申し上げます!」
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高坂殿。
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「どうか真田殿忠義を御信じ下さいませ!」
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原殿。
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馬場殿は立ち上がり真田殿に近づきます。
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「真田・・・これ以上何も申すな・・・」
「お館様が悲しまれるばかりじゃ・・・」
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それ以上、真田殿は何も申しませんでした。
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皆が落ち着いたの見計らい勝頼は立ち上がります。そして、晴信の遺言に従い三年の間は晴信の死を秘匿し新しい甲斐を創ると宣言。
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「秩序を乱す者はこれを排す!」
「そして、武田の御旗を必ずや都に立てる!」
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「はは!」
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重臣達は皆平伏すのでございました。晴信は「隠居」という事となり、勝頼が家督を相続する事になります。
武田信玄最終回下巻~神々の黄昏~

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「何・・・?信玄がいない?」
「はい・・・!」
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信長殿は梁田政綱殿からの報告に笑みが隠せません。躑躅ヶ崎、川浦、湯村など湯治場も探ったものの姿がないと。それもそのはず。既に我が子晴信はこの世にはおらぬのですから。
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信長の野望
「武田信玄死んだか・・・!」
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信長殿は三河国境の兵を全て退かせ、西へと向けるように命じます。今度こそ浅井朝倉将軍家の息の根を止めるおつもりのようです。
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そして。
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「市川!越後上杉謙信に武田信玄死んだと申せ」
「・・・甲斐信濃を攻める好機と教えてやるのじゃ!」
「神憑り上杉謙信・・・武田信玄と一緒に消えてもらいたいものじゃ」
「・・・あの二人は山の神に似ている」
「山鳴りする度に背筋に冷たいモノ奔る・・・!」
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信長殿の使者がやって来るまでもなく、上杉殿もまた晴信病の噂が耳に届いておりました。
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「お館様!武田信玄重い病で上洛を途中で諦め甲府に戻ったと」
「直江・・・三方ヶ原で負けたという話もあるな」
「某には三方ヶ原で武田勢大勝という話を聞いております」
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直江殿は晴信の病重いのであれば一気に甲斐信濃を攻める事を進言しますが・・・。
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「病人相手の戦は気が進まなぬ・・・」
「・・・左様でございますか」
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直江殿としては謙信殿とは長い付き合いであれば、その答えは予見しておりましたがなんともやるせない表情でございます。
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「・・・心の内で笑っておるな?」
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「そのような事は断じて!」
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「相変わらず正義など唱え勝てる戦に一歩踏み出す事も出来ぬ・・・」
「女子の如き謙信と思っておろう?」
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直江殿はやれやれという表情でございます。
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「・・・お館様は御気分が冴えぬようでございますな」
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「気分が冴える事などあろうか・・・」
「何時になってもこの世は変わらぬ」
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謙信殿は織田殿・徳川殿と盟約を結んではおりますが、その振舞いを許している訳ではありません。
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「特に織田信長」
「あの者の将軍家に対する振舞いは目に余るものがある」
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暫く後に謙信殿も晴信の死を知る事になります。
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「信玄死んだか・・・」
「はい・・・皆密かに経を唱えその死を悼んでいるようです」
「信玄・・・この世を去ったか・・・」
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この年。
将軍足利義昭様は再び兵を挙げはしましたがそれは形ばかりのものにて、ここに足利尊氏公以来二百三十余年続いた室町幕府は滅んだのでございます。
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また、三河徳川家康殿も晴信の死を確かなもと信じ、長篠城に対して攻勢をかけたのでございます。
想い出

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武田家の家督は勝頼が相続致します。この日はそのお披露目の日でございました。
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「この度、先のお館様ご隠居となり武田四郎勝頼様が新しきお館様となる!」
「ご披露申し上げる!」
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勝頼は亡き晴信の意思を継ぎ、二年の内に新しい甲斐を創り、父の果たせなかった願いを成就すると宣言します。
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そこに早馬が。
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「申し上げます!三河長篠城落ちましてございます!」
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「・・・信長の如きは怖れるに足らず!我が武田の軍勢一端動けば必ず神々がお味方する!」
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勝頼お披露目の後は阿部殿を除く重臣達が集まり囲炉裏を囲んでおります。
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「武田家も変わるの・・・」
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真田殿がポツリと呟きます。
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「長い年月嘘のようじゃ・・・」
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最古参の馬場殿。
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「儂は百姓の家に産まれた・・・遠い昔の事じゃ」
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高坂殿。
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「苦き思い出もある・・・」
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山県殿は亡き兄飯富虎昌殿と八重殿、そして義信の事を思い出しているようでございます。
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「よう戦った・・・」
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これは原殿。
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「何を申すか!そちのような若輩に何が分かる!」
「儂は四十年じゃ・・・この四十年お館様と共に戦ってきたのじゃ!」
「全ては・・・消えた・・・!」
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これより二年の後に此処にいる重臣達の多くが長篠で織田徳川勢と戦い命を落としたのでございます。
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そして、我が武田家は滅亡に向かって動きたしたのでございます。
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最後の神

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この頃は信長殿の勢い凄まじく、北の越後にも兵を進めたのでございます。
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そして、上杉謙信殿は毘沙門堂に籠る事増え益々信心を深めておりました。
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「北方の守り神毘沙門天・・・我が問いにお応え下され・・・」
「この世は益々乱れ正義失われ地に落ちましてございます」
「この謙信微力ながらこの世に美しい秩序取り戻すべく精進してきましたが・・・」
「何一つ変わらず光明見えませぬ」
「お教えください・・・この謙信に新たなる力をお与え下さい」
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「己を疑わず己を信じよ」
「そちは我が使いにて正義示さねばならぬ」
「そちにわが剣与える」
「我が姿を与える」
「これより行って正義のなんたるか示せ」
「神の最後姿見せよ!」
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「はい・・・!」
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毘沙門堂から出て来た謙信殿に直江殿が織田勢の攻勢を伝えます。
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「お館様・・・織田の軍勢七尾城に迫り救援を求めております」
「すぐ戦の支度をせよ!信長に正義のなんたるかを示す!!」
「はは!」
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この時直江殿は勝利を確信しました。謙信殿に「毘沙門天」が乗り移っているように見えたのでございます。
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謙信殿は約二万の軍勢で出陣。信長殿の軍勢はその倍はあろうかという兵力でございましたが・・・。
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神様など信じない信長殿ではございますが、この時ばかりは背後に神様の気配を感じたようでございます。
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この後。
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世は移り人は変わりは致しましたが・・・。
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もはや山の神の如きお方は現れなかったとの事にございます。
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皆々私利私欲のみ貪るばかりだったと聞き及んでおります。
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皆様の時代は如何にござりましょうや。
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そろそろこの物語も終わりますれば、我が子晴信への身贔屓、愚かなる母の親心と思ってお許しくださいませ。
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さて、改めて我が子晴信が出会いし方々、此処にご紹介を申し上げ囁かなるお礼と致したく存じます。
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この晴信の物語は此処までに致します。
