おんな城主直虎の感想第5話「亀之丞帰る」。今宵より大人編と相成りまして候。世にいう「善徳寺の会盟」が成立し今川殿に勢いは益々盛んにございまするが・・・。

今川殿は益々栄え、井伊殿は進歩なく

10年とは長い年月にございまする。天文23年(1554年)かつての敵国であった北条殿と今川殿は武田家を加えて三国同盟を結びました。この同盟はいずれ悲劇を招きまするが・・・・。それはまた別の機会に。

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井伊家中は変化なく

10年とは子どもが大人になるには十分な時間にございまする。しかし、世代交代をするにはやや短い時間とも言えるのでしょうか。井伊家のお歴々は全く変わる事がなく相変わらずなご様子。




ただ、1人。直盛殿はついにご決断をされておりました。政直殿と一族衆である奥山朝利殿(でんでん)殿を娶わせる決断。提案の主は政直殿ではありますが、それが井伊家にとって一番良い形。




勿論直盛殿も井伊家の当主であれば、井伊家に脈々と流れる「今川憎し!」の情は多少はあると思いまする。叔父直満殿や叔母佐名殿の件もありますが、この物語では登場しない直盛殿の父直宗殿は今川の戦に従い命を落としています。



しかし。



10年にございます。



10年という歳月、今川の勢いは衰えることがない以上はこの今川とその信頼の厚い政直殿を、井伊家に取り込もうというのは「理」にかなっておりまする。




ただ、弱小国が生き残るには強国の庇護下に入るより致し方ございませぬ。私から見れば井伊家がなんとか10年、家中の意思統一もままならないままでも大きな混乱もなく生き長らえたのは、今川殿の勢いが強く、曲がりになりにもその「支配下」にあったればこそ。




まだまだ勢力の弱い井伊家のような国衆が家中もばらばらでは生き馬の目を抜く戦国乱世本来は生き残れませぬ。今川殿の御評判は井伊御家中では芳しくないはございませぬが、近隣諸国では北条殿と双璧で素晴らしい領国経営をされていると存じます。




にも関わらず、井伊御家中が今川殿にお心を全く寄せていない、むしろ隙あらば離反したいと考えているというのは人の心とは常に難しいものと感じまして候。

今川家中も変化なく

変化がないのは今川御家中も同様のご様子。やはり、子どもが大人となりまするが、世代交代に10年は短い。義元様、寿桂尼殿、太原雪斎殿の鉄のトライアングルが益々もって盤石。



ただ・・・



10年は世代交代にはやや短いものの、「世代交代」の準備は必要。子供は大人になりますが・・・大人でも上の方の「大人」は御老人となります。そのご準備を進める時期に差し掛かっているように感じました。




個人的には・・・竹千代殿がもし、今川家の御忠臣となられていたらと思うのでございます。

小野和泉守政直(吹越満)という男

今宵、ついに小野和泉守政直殿が亡くなりまする。こんなに早く亡くなるとは・・・。

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「滅私奉公」と「減私奉公」

ついに今宵小野和泉守政直殿が病没します。病に倒れた時の直平ジジ様の嬉しそうな顔が印象的でした。死を前にして、政直殿と井伊家、特に直平殿との関係が語れます。本編では、



「井伊家のためを思って」



と、政直殿が次郎殿に語ったお話しは真実が否か明確な答えは語られていません。ただ、南渓殿が語っていたことを斟酌するれば、次郎殿は政直殿の言葉を「本当の政直殿お気持ち」と捉え、一方で、息子、政次殿は「嘘であった」と捉えられたご様子にございました。




私、多少長く生きておりますれば、政直殿のお言葉は「真実寄りの虚実」ではないかと思いまする。井伊家が今川殿から謀叛の嫌疑・・・いや、謀叛の証拠を握られたのを許してもらうために、最も効率的で効果的(井伊家にとって利がある)なのは女好きの義元様に佐名殿を人質に出す事。一方で、この件を持って井伊家のみならず、今川家においても自身の立場を強めたいと考えたのもまた真実。



「滅私奉公」



ではなく、



「減私奉公」



とでも申しましょうか。私は、小野和泉守政直というお方が私利私欲のためだけに、あのような行動を取ったとは思えません。ただ、この事は井伊家中、そして井伊家の惣領であった直平殿にまさかあそこまで恨まれるとは・・・。そこは誤算ではなかったのではないでしょうか。



それが、あの屈折した不器用な性格に拍車をかけたのではないかと思います。

親子、今生では分かりあう事なく

結局、政直殿の嫡男でもある政次殿は政直殿の事を「軽蔑したまま」最期の別れをする事に。政直殿は露悪的な感じでしか政次殿と接してはおりませんでしたが、私は不器用ながらも「政次のため」に動いていたのではと存じ上げまする。



「お前はいずれわしと同じになる」



これが最期の言葉となってしまいましたが、死後、悲しい形で親子が分かり合うというのはまた、なんともいえぬ気持ちになりまする。いや、もしかすると政直殿ご自身もそうであったように避けられない「運命」と達観をしてしまっていたのでしょうか。きっとこの先あると思われる、



「父はこれほど強く、また孤独であったか」


と、どのように知るのかが気になりまする。

吹越満

小野和泉守政直を演じているのは吹越満殿。最近では「軍師官兵衛」にて足利義昭を演じておりました。足利義昭では結構知恵は回るのだけどやや頼りなくセコイ感じがとても良かったと思います。「捜査一課9係」の青柳刑事役も個人的には好きなのですが、基本的にはやや「アクの強い感じ」の役が似合うと思います。




ただ、今回の政直役に関しては、孤独と哀愁、そして不器用さが混じった複雑な役を見事に演じきっていたと思います。わずが、5週でお別れとなってしまうのはとても寂しいと感じまして候。私生活では色々とあるようでございますが・・・。益々のご活躍を期待申し上げておりまする。




今宵は此処まで致しとうございまする。

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→大河ドラマおんな城主直虎の感想第6話「初恋の分かれ道」