武田信玄のあらすじ第38話「駿河攻め」。歴史は時として彗星のように表舞台に登場しその使命を終えるや風の如く消えていくヒーロー達も多い。彼等は新しい時代への扉を開き、そして時代の圧力によりその短い生涯を終える。織田信長も天下統一目前にして本能寺の変に斃れる悲劇のヒーローである。織田信長ほどその性格について語られる人物は例を見ない。曰く「直感的・合理的・無神論者・冷酷無比」
いずれにせよ、彼の従来の枠に捉われない挑戦的な生き方に共感を覚え、400年たった今でも魅せられるのである。信玄から見れば信長は新人類として映ったに違いない。それ故に信玄は信長を警戒し、信長もまた信玄の底力を恐れたのである。
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武田信玄第38話上巻~駿河滞在~
永禄12年(1569年)1月。
我が子晴信は駿河を手に入れ、南の海と安倍金山を手に入れたのでございます。されど、この時北条勢により帰り道の薩埵峠を封鎖されていたのでございます。
複雑怪奇ナリ
「遠江に侵入した秋山伯耆守は約束違反につき早急に兵を退かれよとの事でございます」
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晴信の命により遠江へ侵入した秋山伯耆守は天竜川を下り海近くまで攻め込んでおりました。晴信は、徳川殿に今川勢を追い過ぎてしまったのかもしれないと伝えるように原昌胤に命じます。
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現状、薩埵峠を北条殿に抑えられ、さらに各地で荷駄隊が襲われておりこのままでは武田勢は駿河に孤立する不安があります。
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「荷駄隊は甲斐へ戻し、駿河で兵糧を借りればよい」
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真田幸隆殿の発案で、駿河で兵糧を調達する事にします。
ただし、
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「兵糧を貸した者は税を免除すると伝えよ」
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さすれば、駿河での武田の評判も良くなる。しかし、まだ問題はございます。北条殿は海賊衆を使い海から今川氏真殿が落ち延びた掛川城へ兵を送っております。晴信はこちらも今川の旧臣達に命じて海賊衆を編成するように命じます。
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そこへ、山県政景が主殿へやって来ます。
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「嫌な話を耳にしました」
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掛川城へと向かう北条の舟が座礁し、生き残った者を取り調べてところ既に徳川と北条には盟約が結ばれたという噂があると言います。
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「信長に使者を送るのじゃ」
「もし、徳川と北条が手を結べば徳川の力大きくなる」
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晴信は徳川殿の影響力が大きくなれば、信長殿も都ばかり見てはいられなくなると考えたのでございます。
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「これからは敵味方区別がつかぬ」
「頼むは己の力のみぞ!」
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晴信はその後も徳川・北条の出方を見るべく駿府に滞陣します。
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しかし、程なくして。
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「徳川勢掛川城の包囲を解き、こちらへ向かっております!」
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掛川城を包囲していた徳川殿はその包囲を解き東へと向かいます。もはや、北条殿と徳川殿の盟約は間違いない所となります。
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「北条と徳川が手を結んだか」
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晴信は東西から挟撃される事態となっては軍勢を甲斐へ戻すしかないと言います。
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「しかし!兄上!それでは駿河が北条のものに!」
「大丈夫じゃ。駿河の豪族には手を回しておる」
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信廉は不安を口にしますが、晴信は落ち着いています。
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「信廉、儂を信じるのじゃ」
「信じております」
「信じておらぬな(笑)」
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晴信は信長度に使者を送り、徳川と北条の盟約は裏切りであると伝えること、さらに将軍足利義昭殿に使者を送り、越後の上杉輝虎殿との和睦斡旋を求める事とします。
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そして。
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「儂は天下を獲る」
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かつて、岐秀和尚が言っていた事。
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「人は己の欲と生きるしかない」
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晴信は人々を惑わす天下とは何か見極めるつもりでおります。
越後

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越前一向宗門徒の動きと本庄繁長の謀反で信濃へ軍勢を動かせない上杉輝虎殿は毘沙門堂に籠り、毘沙門天と対話をしております。重臣の直江兼続殿としては悩み深い処ですが、ある決意をされます。
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「菊丸、相談がある」
「はい!なんでしょうか」
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直江殿はかつて山本勘助殿が築城し、現在北信濃に睨みを利かせる海津城に調略をかける事に協力するように命じます。
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「高坂弾正を信濃守護を餌にこちらへ引き入れる」
「もし、引き入れられなければ命を奪う」
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その調略に「女」を使うと言います。高坂弾正殿は美男で知られております。美男であれば、女子も嫌いではないはず。
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菊丸殿は輝虎殿がそのような「卑怯」な策は許可しないと言いますが・・・
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「お館様の代わりに我らが手を汚さずして誰がお館様を盛り立てる?」
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輝虎殿は毘沙門天の生れ変りにて、戦場では負ける事はありません。しかし、このまま手をこまねていれば永遠にこの東国から出る事は出来ないと言います。
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暫く後。
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海津城には女中として一人の美しい女子が働き始めた由にござます。
武田信玄第38話中巻~小田原攻め~

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小田原城にも晴信が甲斐へと戻った知らせが届いております。北条氏政殿は武田信玄と言えども、徳川・織田の大軍を相手には出来ないと高笑いでございます。この頃、氏康殿は隠居して、嫡男氏政殿が北条家当主となっております。
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越相同盟
「越後と和睦をなさるおつもりなのですか?!」
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氏政殿は父氏康殿が20年来の敵である越後上杉輝虎殿との同盟を本気で考えている事に驚きます。越後との盟約などは出来るはずがない。
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「そうでもないぞ?」
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氏康殿は上杉からの書状を氏政殿に見せますが、氏政殿はその内容に激怒します。
そこには、
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- 相模より人質を送る事
- 奪いし城を返す事
- 戦の際は氏康・氏政揃って出陣をする事
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など、とうてい氏政殿はとしては受け入れられない内容でございます。
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「私の越後との和睦の条件はただ一つ!上杉の姫を我妻とすること!」
「輝虎に娘はおらぬ・・・」
「ならば!上杉ゆかりの姫で!」
「もう少し冷静になれ、お前の声は頭に響く(疲れ)」
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氏康殿は国と国との交渉はこうして始まるのだと説明します。最初は言いたいことだけを言って、受け入れ可能な妥協点を探る。
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しかし。
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「そのような盟約は信じられませぬ!」
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そう言うと主殿を出ていきます。氏政殿としては三国同盟時に嫁いできた梅の事が念頭にあります。梅は盟約が破れると同時に甲斐へと戻り、そこで没しっている事が思い出されたのでしょう。
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「・・・梅を忘れられぬか・・・憐れな奴め(ため息)」
「松田、氏政の気持ちはそれとして越後との盟約は進めよ」
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しかし、ほどなくして北条氏康殿は七男、後の上杉景虎殿を人質として越後へと送り盟約を結んだのでございます。
小田原攻め
甲斐へと戻った晴信は小田原攻めの軍議を開きます。
しかし。
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「あくまで、狙いは織田信長じゃ」
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晴信は東国での草はこれで、一段落としこれ以上は戦わないと言います。
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「我が軍勢を見せるだけで良い」
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永禄12年8月。晴信は二万の軍勢を率いて碓氷峠を超えて関東へと侵入し、同年10月には小田原城下へと迫ります。
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晴信は堅城として知られる小田原城を力攻めはせず、城下に火を放つなどして遠巻きに包囲をして様子を見ておりました。そして、包囲を開始して4日目の朝。
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「相模の海から見える朝日を見るのは初めてじゃ」
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晴信は朝日を拝みます。
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「信廉、これで何日包囲しておる?」
「4日にございます」
「もう十分じゃな。存分に我が軍勢を見せた。甲斐へ戻るぞ!」
「はは!」
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その動きは小田原城内の北条殿にも伝わります。氏政殿は喜びます。
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「アッハッハッハ!武田信玄!この城を見てなにも出来ず引き返すか!」
「なぜ武田信玄は何もせず帰る??」
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喜ぶ氏政殿を尻目に、珍しく氏康殿が晴信の行動を訝ります。北条殿の重臣達は戦に勝ったかのような様子です。
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「この城の壮大さに恐れをなしたのでしょう!」
「いつも父上が言う通り去る者は追わずでございます!」
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しかし。
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「儂は大事な何かを見失っているのかもしれぬ」
「城囲まれ、城下に火を放たれ、何もせず勝ち戦とは少々邪気が過ぎる」
「我が軍勢の怒り示せ!武田勢に追い打ちかけよ!」
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氏康殿は追撃を命じるのでございます。
武田信玄第38話下巻~三条殿倒れる~
少々時を戻します。小田原出陣前、駿河から戻った晴信は三条殿の体調が優れぬことを知り裏方へとやって来ます。
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京へ連れて行く
「少々、風邪のようじゃな」
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晴信は三条殿を休ませようとしますが、三条殿は人払いをすると晴信に言います。
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「私は労咳にございます」
「御宿が申したのか?」
「御宿は風邪であると、ただ風邪では此処まで長くおぬる続きませぬ」
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晴信は半月程の熱では労咳ではないと言います。
そして、三条殿を寝かせます。
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「其の方には苦労をかけたな・・・」
「いや、苦労などと軽々には申せぬな・・・」
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そして。
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「西に向かう決心したぞ」
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晴信は三条殿に伝えます。
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「死ぬ前に京の都が如何なる処か確かめるつもりじゃ」
「この乱世、全ては京の都に発しておる」
「天下がこの世を惑わせておるのじゃ」
「その源に立ち、四方を見渡す。天下を獲って見せる」
「元気を出すのじゃ、そちも連れて参る」
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三条殿は涙を流し微笑みます。部屋を後にした晴信は八重に尋ねます。
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「労咳であろう?」
「・・・はい」
「御宿はなんと申しておる」
「よう養生すれば、回復すると申しております」
「何故、湯村へ行かぬ?労咳には湯治が一番な事存じておろう?」
「姫様は労咳とは知りませぬ・・・」
「三条は知っている。湯村へ行け、必ず治すのじゃ。よいな?」
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そして。
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晴信が小田原城の包囲を解いた頃。
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「姫様!!!姫様!!!!」
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三条殿はついに喀血し倒れます。
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今宵は此処までに致します。
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