武田信玄のあらすじ第22話「奸風発迷」。晴信が信濃平定を果たした頃、尾張の国でも信長が統一を目指し苦しい戦いを送っていた。織田家は代々下克上の家系である。父の死によって信長が家督を継承するや否や一族や重臣達の謀反が起り再び国内は乱れて行った。これに対して信長は武力を持って平定していったが、ここに来て最大の危機に直面する事になる。
実の弟信行と有力家臣柴田勝家が信長に対して反旗を翻したのである。信長は数々の困難を乗り越え九年の歳月をかけて尾張を統一した。尾張統一。その時信長は戦国大名として晴信と肩を並べる程に力を付けていた。織田信長。やがて晴信の前に立ちはだかり、武田家を滅亡へと追い込む宿命を持った男なのである。
武田信玄第22話上巻~思惑~
我が子は晴信はいよいよ、奥信濃へ兵を進め、葛山城を落し、善光寺様の御本尊を兵火からお守り致すため、お移し致したのでございます。晴信は一日も早く信濃の戦いを終わらせたいと思ったのでございます。されど、景虎殿にとっては晴信の所業許すべからざる事によって、弘治3年(1557年)三度川中島で矢合をしたのでございます。
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信濃守護職拝命

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「以上、将軍足利義輝様の御意向をお伝え申した」
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この日、足利将軍家より使者の下向がございました。将軍家からの使者は晴信にこれ以上の奥信濃への侵入を控えるようにと、申し渡したのでございます。
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「長尾景虎殿から何かありましたかな?」
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晴信は使者の今野殿ににこやかに応じます。そして、晴信自らも常日頃から将軍家の御意向には従うべく考えている者であると応えます。
ただ、
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「この武田晴信の信濃での力をお認め下さらば奥信濃へ兵を進める事はありません」
「そ!それは信濃守護を得なければ将軍家の意向には添えぬと?」
「如何にも」
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晴信は将軍家に対して行方不明となってしまっている信濃守護小笠原長時殿に代わって。甲斐守護職の上にさらに信濃守護職を求めたのでございます。使者の今野殿は渋い表情です。
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「入れ!」
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家臣が広間へやって来ると今野殿の前に進み袋を置きます。
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「甲州金でござる、将軍家への献上とは別にこれは其方に」
「武田殿の信濃守護職就任、必ずやなんとかしてみせましょう!」
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弘治3年に晴信は甲斐守護職に加えて信濃守護職にも任じられたのでございます。また、この年油川源左衛門信守殿の娘、恵理を新たに側室として迎えましてございます。
今川と織田

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「上総介、治部大輔、三河守を経て征夷大将軍になられた」
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駿府城では今川義元殿が室町幕府初代将軍足利尊氏公の官位を自らになぞらえておりました。
家臣の岡部殿が、
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「いよいよ天下が見えて参りました!」
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と言うと、寿桂尼様が窘めます。
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「岡部!軽々に天下等と申す出ない!!」
「母上、ご心配めさるな。この義元天下等狙っておりませぬ。ただ」
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現在、足利将軍家の権威は地に落ち、三好殿などによって動かされている始末。もし、将軍家に何かがあり、何処の馬の骨とも分からぬ者が天下を狙えば自分が立つしかないと言います。
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「その前に、尾張の織田は片づけなければなりませぬぞ」
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寿桂尼様は尾張の織田に一抹の不安を抱いているようでございます。
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その頃、その織田殿は斉藤道三殿の娘で奥方濃姫殿と二人、山駆けをして過ごされておりました。
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「安心致せ。お前の父を亡き者にした者の首は儂が刎ねてやる」
「必ず父上の敵を取って下さいませ」
「儂を信じるのじゃ」
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尾張守護代織田信長殿は係累との戦に勝利を重ねているものの、未だに尾張一国を統一できずにおりました。
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また、妻濃姫殿の実家である美濃斉藤家では、信長殿の後ろ盾でもございました「美濃の蝮」こと斉藤道三殿が実の子である斉藤義龍殿に討たれていたのです。
武田信玄第22話中巻~尾張統一~

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「弟君異織田信行様、この清州城を攻めるつもりにございます!」
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清州城には後に重臣として織田家筆頭家老を務める柴田勝家殿が信長殿の弟、信行殿の謀叛を伝えに来ておりました。信行殿の謀反は二回目にございます。
謀反
「信行の奴め!一年前に謀反を起こし許したばかりではないか!」
「は!私も止めたのでございますが」
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この柴田勝家殿は一年前の謀反は信行殿に連座をしておりましたが信行殿と共に許されておりました。
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「よう知らせてくれた。礼を申す」
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信長殿は柴田勝家殿に信行殿を裏切った等とは思ってはならないと言います。裏切りの矢は自分に跳ね返ってくる。事の発端は信行にあったのであると。
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「儂は、これから死の床に臥す」
「それは?!」
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信長殿は自分が不治の病で余命幾ばくも無いと母上に伝えると言います。そうすれば、母上は必ず信行殿にその病状を伝えると。
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「そうすれば弟はどうする?」
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今川の大軍がいつやって来てもおかしくはない今、何事も急がねばならないと言います。
兄弟
「申し上げます。只今弟君信行様参られました」
「うむ」
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信長殿を弟信行殿が訪ねてきます。
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「兄者の容態はそんなに悪いのか?」
「は、薬師が申すには余命幾ばくも無いとの事にございます」
「なんという事じゃ!なんという事じゃ!!」
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信行殿は広間に通されるとそこに兄信長が。
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「兄者!」
「信行!実の弟でありながら二度までも我が命狙うとは」
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信長殿は母上の頼みで一度目は許したが、もはや母上の頼みとあっても二度目は許さないと告げます。
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「謀ったな!兄者!覚悟!!!」
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信行殿は信長殿に斬りかかりますが、信長殿の近習に斬られ、さらに信長殿に射られます。それでも、信長殿の前までなんとか辿り着きますが最早虫の息にございました。
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「申したはずだぞ!二度目は許さぬと申したはずだぞ!!」
「・・・」
「儂に勝てると思っていたのか!儂に勝てる者はおらぬ!!」
「兄者・・・」
「この虚け者が!!虚けが!何故年老いた母上を悲しませるのじゃ!」
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信行殿は信長殿に抱きしめられながら息を引き取りました。信長殿は後に信行殿と共に謀反を起こせし岩倉城主織田信安殿の息子信賢を滅ぼし尾張統一を完成しますが、事実上この瞬間に尾張統一は成ったのでございます。
武田信玄第22話下巻~接触~
晴信の元に重臣達三人が顔を揃えておりましたが、何やら険悪な雰囲気にございます。
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山には草木が絶えぬ
「縦(の陣)の繋がりが大事なのです!!」
「原殿、某の話急を要する!釜無川の件」
「この海津館は川中島でござる!いつなん時越後勢が来るか!」
「急を要するのは釜無川も同じ!この雨を見られよ!」
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三人は言い争います。
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何時もは静かな陣馬奉行の原晶俊殿が怒鳴ります。これに海津館の普請に相談をしに来た勘助殿、そして釜無川の工事を担当する飯富虎昌殿は静まり返ります。原殿もまた自らの声の大きさに驚かれたように繰り返します。
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「軍勢あっての甲斐にございます」
「ん!お館様?」
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そこに晴信の姿はありませんでした。
暫くすると倉科三郎座衛門殿がやって来ます。
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「お館様は最近オカシイのではないか?」
「お館様は怒っておられたか?」
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倉科殿は廊下で晴信と会い、城下の堀の事で相談をしようとしたが、今は急いでいると言われたと言います。
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「これから山へ参るのじゃ」
「山?この雨の中?」
「山には草木が絶えぬのでな」
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山には草木が絶えぬのは当たり前で倉科殿は狐に摘ままれたような顔をしております。
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「ははは!」
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飯富殿、原殿、そして勘助殿は顔を見合わせて笑います。
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「山には草木が絶えぬでござるか。それは雪隠にござる」
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勘助殿は鼻を摘まみ
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「草木(臭き)が絶えぬ」
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と、言うと倉科殿も成程と膝を打つのでございました。
信長の使者
「お館様。尾張守護代織田信長殿の使者が参っております」
「織田・・・?通せ!」
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晴信は尾張守護代織田信長の使者を名乗る梁田政綱殿と対面します。
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「此度はお館様にお目通りを頂き誠にありがとうございます」
「して、織田信長殿の話とは?」
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梁田政綱殿は織田信長殿が晴信の武勇知性いつも眼を開かれる事が多く、高説を拝聴したいと美辞麗句を申します。
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「儂にそのような言葉は無駄じゃ。用向きだけ申せ」
「は。では用向きだけズバリと申します」
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梁田政綱殿は主君織田信長殿が晴信と款を通じたい願っていると言います。しかもその相手は「今川殿」であると。
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「織田殿は甲斐・駿河・相模が盟約によって結ばれている事ご存知ない?」
「いえ、存じております。ので、密かに款を通じ今川殿を滅ぼしたいと存じます」
「はは、ハハハハハ!!!!」
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晴信は大笑いします。
そして。
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「織田信長殿とは中々面白きお方のようじゃな」
「されば、お返事を頂きたく存じ上げます」
「そうじゃな。奸風発迷とでも申しておこうか」
「かんぷうはつめいでございますか?」
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梁田政綱殿は自分は無学故意味が分からない。せめて字を教えて欲しいと願います。晴信は字を教えると、信長殿に伝えれば意味は分かると言います。
坊主二人
「勘助!尾張の織田の様子、探るのじゃ!」
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晴信は信長殿の使者としてやって来た僧風の装束の梁田政綱殿を追跡し、尾張の様子や織田信長殿について調べるように指示ます。
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「安心致せ。海津館はお前の図面に従い普請致す」
「はは!直ぐに発ちまする!」
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勘助殿は僧の出で立ちにて梁田政綱殿を追いかけます。
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「去りがたき景色にございますな」
「ええ」
「御坊、済まぬが水を恵んでくれぬか?」
「この竹筒にある分でよければ」
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勘助殿は昼を摂りながら山からの眺めが一望できる見晴らしのよい場所で休んでいた梁田政綱殿に追いつくと接触をします。
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「御坊は何処の宗派でござるか?」
「何宗に見えまするか?」
「何宗にも見えませぬ」
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勘助殿は梁田政綱殿が僧の戒律「昼は摂らぬ」を破っている事から僧衣を纏うが僧に非ずと言います。
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梁田政綱殿は勘助殿にそちらも戒律を破っておるがと指摘し名前を尋ねます。
勘助殿は、
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「山弥(さんみ)と申します」
「儂は梁禅(りょうぜん)と申す」
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勘助殿と梁田政綱殿は結局そのまま尾張津島まで同行します。
おんな踊り

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「尾張は東国に比べると暖かいと思いませぬか?」
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「梁禅殿」こと梁田政綱殿はとある旅籠に勘助殿、いや山弥殿を招きます。
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「ここ津島は儂の産まれ故郷。今宵はお任せ下され」
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梁禅殿に招かれた部屋では女子たちが妖艶に踊りを披露しておりました。しかし。
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驚く勘助殿。
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女子と思っていた者達はみな男でございました。そして、一人の女装した男が勘助殿の前に立ちます。
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「只今戻りましてございます」
「ご苦労。儂は織田信長じゃ」
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驚く勘助殿。
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「本当の名を申せ。申せば斬らぬ」
「山本勘助と申します」
「そうか。して首尾はどうじゃ?」
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梁田政綱殿は勘助殿の事を気にしますが、信長殿は勘助殿が今川の間者でも武田の間者でも構わぬと言います。結局、晴信との対面を包み隠さず報告します。
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「奸風発迷か」
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梁田政綱殿は「奸な風を発し迷える者」という意味かとも考えたと言いますが、信長殿は首を振ります。
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「いや。そうではない」
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信長殿は晴信は自分の気持ちを奸風発迷という言葉に託していると言います。
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「つまり、今川を裏切る気は重々あるが迷っているという事じゃ」
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だからこそ、尾張の織田信長がどういう男か確かめるため勘助殿をよこしたのだと。
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「まずは尾張のおおうつけ、織田信長の女踊りを見せてつかわそう!」
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そう言うと、信長殿は踊り始めます。
晴信の想い
恵理殿を新たに側室に向かえていた晴信は若い恵理殿を見て申します。。
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「儂のじき四十じゃ。北の田舎の戦で生涯を終わりたくはないな」
「・・・」
「ふふ、若さとは何も増して尊いな」
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我が子晴信の心に芽生えたものは、遠い都に対する田舎人の憧れのようなものなのでしょうか。また、若さを失い始めたものの焦りのようなものなのでしょうか。それとも男の方が持つ、全てを手に入れたいという猛々しい心が我が子晴信を動かしはじめたのでしょうか。
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この方(景虎)も都をお望みにございます。
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この方(義元)も。
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そして、この方(信長)も。
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では、今宵は此処までに致しとうございます。
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