武田信玄のあらすじ第15話。「もしもしお電話代りました!」「上杉勢一万二千!川中島へ向かっております!」と、電話で連絡する訳にはいかない戦国時代、情報はどのように伝達されたのであろうか?川中島から甲府までは160キロ。馬を乗り継いでも約6時間かかる。
戦国時代、最も早い情報伝達手段として、狼煙が使われていたが、信玄ほど大規模・緻密に狼煙を活用した戦国大名はいなかった。12年間で5回の戦いが行われた川中島。川中島から甲府まで約1時間半で狼煙通信は伝わったという。「疾如風」。川中島へ繋がる街道と狼煙通信。信玄は謙信より川中島へ遠いという不利を見事にカバーしていた。
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武田信玄第15話上巻~歯車~
2年前 (天文19年1550年)、今川殿へ嫁がせた我が娘於豊(おとよ)を亡くしてしまいましたが、ついに我がことを申さねばならぬ時がやって参りました。
狼煙と棒道
「申し上げます。北の方様お倒れになられました」
「私がお見舞いに参ります」
「姫様、私が」
「八重。お前が行っても北の方様はお会いになるまい」
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三条殿はそう言うと、今は北信濃の最後の豪族、村上義清殿討伐のため、諏訪にいる晴信へ使いを出します。晴信は諏訪上原にて村上殿と対峙するにあたり、新たなる策を命じております。
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「村上は北信濃。諏訪からでもあまりに遠い。そこでじゃ」
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晴信は村上義清殿討伐のため新たなる道を整備することを命じます。その道は「棒道」と名付けられます。
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「棒のように真っ直ぐな広い道。棒道じゃ!」
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これを諏訪衆の諏訪満隆殿に命じます。
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「道だけは不十分にございます」
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それを受けて真田幸隆殿が発言します。幸隆殿は「狼煙」を活用して敵の情勢を素早く伝える事が出来ないかと言います。
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「狼煙を使うのであれば色を決めれば色々な事伝えられます!」
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最近は評定の末席に加わった源助は、燃やす枯葉や葉っぱの種類で色を決めれば様々な事が伝えられると言います。
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「面白い!白は敵に動きあり、茶なら攻められている、黒なら助けを求める」
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晴信はその狼煙台の整備を幸隆殿に命じます。
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「そ、それがしでございますか!?」
「無論じゃ!狼煙を考えた其方にしか出来ぬな」
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幸隆殿は面倒な事を請け負ってしまったという表情です。評定が終わると丁度我が子信廉が晴信の元へ来ております。
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「信廉、どうした?」
「母上が」
「そうか。それで重いのか?」
「立木が申すには・・・」
「言うな!母上の命尽きるのを数えたくはない。出来るだけ早く戻る」
八重の布石
甲府では三条殿、そして太郎、そして信繁と信廉が見舞いに来てくれていましたが私は眠っておりました。
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「太郎は兎角母上には可愛がってもらっていたからな」
「はい!出来れば私が嫁を迎えるまで元気でいて欲しゅうございました」
「太郎。大丈夫だ。母上は元気になる」
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別室では傅役の飯富虎昌殿と八重殿が控えております。
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「飯富殿のようなご立派な方が傅役で若殿様は幸せじゃ」
「いえ。私等には過ぎたる御役目にございます」
「所で、諏訪の湖衣姫には用心なさいませ」
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八重殿は湖衣姫が四朗に家督を相続させようと画策していると告げます。自分は飯富殿の味方であると。
武田信玄第15話中巻~兄弟~
私はただただ眠っておりました。そして妙な夢を見たのでございます。信虎殿が私の枕元で泣いており、そして何故か私の息子なのでございます。何を問うてもとにかく泣き続けるばかり。
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信虎殿
「兄上。今母上が何か申されたのでは?」
「確かに父上の名を・・・?」
「眠っておられる。うわ言かもしれぬ」
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信繁と信廉は私の側についていてくれました。ただ、私はただただ眠り続けていたのでございます。
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「兄上!」
「母上のご様子はどうじゃ?」
「眠り続けております」
「そうか」
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晴信が上原城より戻りましてございます。私がうわ言で申し上げました一言が兄弟に一寸したさざ波を起こします。
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「駿府より父上を呼び最後一目会わせてあげるのが親孝行なのでは」
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信繁は信虎殿を甲斐へ呼び戻す事を晴信に願い出ます。ただ、晴信はそれを許しません。
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「お前は本当の父上の姿を知らぬ」
「兄上が本当の父上の姿を知っているとは思えませぬ」
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信繁は晴信が憎しみに駆られて本当の父上の姿を見ていないと言います。また、信廉は憎んでいてもそれを受けいれて呼び戻せば良いと言います。信繁と信廉、二人はあのお方と確執はありませんでした。
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「信廉、其方は画の事しかわからぬ。儂が父上を追放したのは憎しみゆえではない」
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晴信は国を想ったからこそ信虎殿を追放したのだと言います。そして、仁愛なければ、憎しみの心では国を治める事は出来ないと言います。
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「父上にはもはや力はありませぬ」
「父上が戻って来れば必ず力を蓄え国は割れる」
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晴信はもし信虎殿が戻ってくれば、自分が父信虎殿を意識しないでいる事は出来ないだろうと言うのでした。
太郎
「武田殿におかれましては御機嫌麗しく」
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晴信は今川殿の使者岡部美濃守殿の訪問を受けていました。岡部殿は先年から相談をしていた「あの件」をそろそろと申し出ます。
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「あの件とは?」
「ははは!ご嫡男太郎様と今川家息女於津禰様(おつね)との縁組みにございます」
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晴信は昨年今川家から相談をされながらもその時は太郎が元服前という事もあり、しばし、時間が欲しいと言っていた事を思い出します。
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「そうであった。ただその儀はまず太郎の意思も確認せねばな」
「それならば大丈夫にございます!」
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岡部美濃守殿は信虎様から三条殿に書状を送られ、その意向を確かめたところ、喜んで受けたと言っていたと言います。
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「ああ。そうであったな」
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岡部美濃守殿が屋敷を後にするとすぐさま晴信は三条殿の元へ。
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「なぜ黙ったいだのじゃ!」
「何を?」
「太郎の縁組の事じゃ!」
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三条殿も負けていません。
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「この三条、後ろめたきことなど何もありませぬ!」
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三条殿が言うには寿桂尼様を介して手紙があり、そこには義元の妻で晴信姉於豊(おとよ)が亡くなった事の嘆きと、新しい縁が結べればという内容で異を唱えるような内容ではなかったと言います。
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「兎に角!国と国の縁組は女子が軽々に口を挟むものではない!」
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晴信は続いて太郎と傅役の飯富殿を呼びます。
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「何故黙っていた?何故儂に相談しなかった!飯富!お前は傅役として何を教えているのじゃ!」
「申し訳ございませぬ。いずれお館様よりお話あると思っておりました」
「太郎。其方は嫡男であったが国主ではない。国を動かせると思ったのか!?」
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晴信は縁組は国と国との駆引きであり、縁組の成否で国が滅びる事もあると叱責します。飯富殿は自分の至らなさを詫びます。
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「ならば!縁組お断り致します!」
「なんじゃと?」
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義信は縁組もまずは「仁義」あってこそなるべきであり、駆引き等という下心のある縁組などは断ると言います。
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「ならば、家督は四朗に継がせるがよいか?」
「!?」
「若殿!お詫び申し上げるのです!」
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同席をしていた信繁はその様子にかつての信虎殿と晴信を思い出さずにはおられませんでした。
武田信玄第15話下巻~大井夫人~
私は眠り続けておりましたが、晴信、そして信繁と信廉はずっと枕元に控えてくれておりました。私は幸せ者にござます。
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西へ行ってはならぬ
「母上?」
「・・・?」
「おお、お目覚めになられた!」
「母上信廉にございます!」
「三人ともよう揃った、昔のままじゃ」
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私は長い夢を見ておりました。信廉が嬉しそうに語って来ます。
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「良かった!自慢ではありませんが私昨夜は一睡もしておりませぬ!なので眠くて眠くて!」
「母上心配なさいますな!信廉は昨晩一晩中居眠りしておりました」
「居眠りしていたのは兄上(信繁)にございます!」
「なんじゃと?最近は嘘まで覚えたか?(笑)」
「二人とも静まれ・・・」
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晴信がはしゃぐ二人を嗜めます。
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「お前達を残して旅立てませぬ」
「何を申されますか。夏には床から離れられましょう」
「晴信。弟たちの事頼みまする」
「信繁、信廉、三人仲良く晴信を助けるのじゃ。良いな」
「はい」
「そうじゃ、晴信。一つだけ申しておかねばならぬ」
「例え如何なる事あろうとも、西へ行ってなりませぬ」
「其方が治めねばらなぬのは我が甲斐と信濃の二国じゃ。この二つを命かけて守りなさい」
「甲斐の軍勢と信濃の豊な大地があれば、両国の家臣領民末永く幸せに暮せます」
「都には魑魅魍魎、妖怪の類しかおりませぬ」
「天下とは悪しき夢じゃ」
「都に上るは死ぬる事じゃ。この事決して忘れてはなりませぬ。よいな」
「はい」
「これでよい。私は幸せ者じゃ。皆良い子じゃ。あの方を良しなに・・・」
「母上?呼び戻せ!力の限り呼び戻せ!!死神と取り合いじゃ!母上!!」
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我が子らを残し、この世を立ち去る事など出来ますでしょうか。
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例え身体は死するとも、我が子らの行末見守らねばなりませぬ。
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この母の気持ち、どうかお察し下さいませ。
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この年の暮れ、嫡男太郎と今川殿の息女於津禰様との婚礼が執り行われたのでございます。
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今宵は此処までに致しとうございます。
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次回はいよいよ、村上殿攻め落としについて物語とうございます。
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