翔ぶが如くのあらすじと感想第36話「破裂弾中の昼寝」。明治5年春、西郷は明治天皇に従い鹿児島へと帰国する。久光は廃藩置県等新政府の政策には批判的であった。西郷は明治天皇の「臣下」として帰国している事もあり久光とは面会をせずに帰京する。一方東京では江藤による「陸軍省公金横領事件」の調査が終りに近づいていた。翔ぶが如くのあらすじと感想第36話

翔ぶが如くのあらすじ第36話「破裂弾中の昼寝」

西郷は明治天皇の西国巡行に従い帰国する事になる。西郷が今もっと顔を会わせたくはない島津久光のいる鹿児島への帰国は気が重い。弟の小兵衛や千絵は西郷が元気がない事を心配する。




西郷は鹿児島行きが気が重いのは勿論だが、それ以上に陸軍内部の不協和音や山城屋事件に巻き込まれそうな山県、さらに長州出身者の醜聞の噂に頭が痛かった。

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翔ぶが如くのあらすじ第36話上巻「帰国」

陸軍省に桐野利秋など薩摩出身幹部が乗り込んで来た。



「近衛陸軍少将桐野利秋通る!!」

「同じく別府晋介!」

「立会人陸軍少佐篠原国幹!」



三人は山県に話しがあると乗り込んで来たのだ。山県の執務室へと入る三人の雰囲気は殺気立っていた。



「山県さぁ!」

「どげんしたとな?」

「!?」



山県の机で書類を見ていてのは山県ではなく従道だった。桐野達は従道ではなく山県に話があり、山県を出せとつめ寄るが従道も一歩も引かない。



「山県陸軍大輔は留守じゃ。話はおいが聞く」



待たせもらうと言う桐野達に今日は戻らないので出直すように促す従道。



「どうせあっちこっちで汚い金の話をしているんじゃろ!」



別府晋介が吐き捨てる。



「別府少佐。ここは陸軍省じゃ、金の話は大蔵省でも行ってくいやえ」



応接用の長机に移動して座りながら暗に出て行くように話す。その言葉に桐野が応じた。



「カネの話ではなか。兵制改革の話じゃ」



桐野達は山県たち陸軍省上層部が進める「国民皆兵」に意見があって来たのだ。桐野達薩摩隼人は戦は士族の行う名誉あるものであり、百姓達と一緒にするような事は絶対に受け入れないと。



「我らは等しく帝の軍隊である。諸外国では何処も国民皆兵じゃ」



従道の言葉に三人は耳を貸さない。



「信吾・・・お前が大西郷の弟ではなかったら張り倒している所だ・・・」



桐野達はもし百姓と同じにするような事をしたら薩摩の近衛兵は国元に帰ると山県へ伝えろと言い捨て、帰って行った。



「・・・危ない所だった・・・!」



桐野達が帰ると奥から山県が出て来た。従道が機転を利かせて山県を奥の部屋と匿ったのだ。従道は山県に兵制改革は廃藩置県に並ぶ位の大仕事であると念を押す。



「ああ、分かっているさ」

「・・・では、お足元は大丈夫でしょうな?」

「・・・山城屋なら呼び戻し色々と整理させている・・・」



兵制改革は山県抜きで行う事は出来ない。しかし、従道は山県の行状、さらには桐野達の暴発の可能性を懸念していた。




従道その日、兄隆盛の元を訪ねる。兄隆盛を崇拝する桐野達を宥めるように頼みに来たのだ。



「そうか・・・桐野達が山県どんの元へ押しかけたか・・・」



従道はなんでもかんでも「山県の味方」をするつもりはないが、現在の陸軍省と兵制改革には山県手腕が必要だと話す。西郷もそれには同意する。




山県の脇の尼さ、そして桐野達の暴発の懸念、西郷は頭が痛い。そして、その忙しい最中、帝と共に鹿児島への帰国に同席しなければならなかった。西郷は初めて「フロックコート」を着用して帰国の途に付く事になる。




薩摩へと帰国した西郷は事実上久光に仕えている大山格之助、そして有村俊斎と面会する。明治天皇は「洋装」での行幸であったが、久光はそれにも非常に不満である。



「吉之助さぁ、まずは久光公に会ってもらいたい」

「・・・それは出来ん」

「!?!?な・・・?」



西郷は一薩摩藩士という身分であればどのような場所にでも出て行くことが出来るが、今は「帝のお供」をしている身分であり、久光と会っても頭を下げる事が出来ないと話す。



「吉之助さぁ・・・久光公に頭を下げてくいやえ」

「久光公も話の分からんお方ではなか・・・!」



大山は西郷を説得するが、結局この帰国で西郷は久光に会う事はなかった。ただ、これには益々久光は怒りを溜め込む事になる。

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翔ぶが如くのあらすじ第36話中巻「山城屋事件始末」

江藤は着々と山城屋、そしてその裏にいる山県を追い詰めていた。



「山城屋は帳簿を改竄するつもりでしょうが、もはや山城屋に現金はありません」

「・・・とうとう山県を追い詰めたぞ・・・!」



山城屋への内偵捜査の報告を受けた江藤は自信ありげに頷くのであった。




一方山城屋を見張っていた矢崎は山城屋の妾「千草」が奏でる琴の音を聞いて、それが千絵が西郷家で奏でていたものと瓜二つである事に気付く。




当人は否定しているがその雰囲気から間違いないと思われた。矢崎は山城屋の捕縛が近づいている事や、もし山城屋がお縄になれば、千草も罪に問われ、姉妹が再開する事が出来ないのではと考え、江戸の裏事情に詳しい梅乃家五郎八に隠れ家を用意させると、山城屋が外出をしたスキに千草と千絵を隠れ家で再会させるのであった。



「姉上様・・・!」

「千絵・・・!」



感動の再会ではあったが、山城屋と縁を切るように迫る千絵に、千草は静かに語る。



「山城屋には感謝しているの・・・」

「姉上様!何故!?」

「夜ごとの客を取らずに済むようになったから・・・」



外で辺りを警戒している梅乃家五郎八は漏れ聞こえる中の話を聞きながら、煙管の煙をゆっくりと吐き出すのであった。




その頃、山城屋にポリス隊の手入れが入ったという知らせを十蔵が持ってくる。ポリス隊は山城屋はおろか一緒に暮らしている女もいないことに見張りの河合を叱る。矢崎は山城屋の様子を伺っていたのをポリス隊に咎められが、間一髪で逃げ切る事が出来た。




結局、行くあてのない千草はこのまま梅乃家五郎八が用意した隠れ家にほとぼりがさめるまで暫くやっかいになることになる。



「この、梅乃家五郎八れっきとしたご直参でやんす!」



千草の落ち延び先が見つかるまでは此処にいれば安心であると請け合うのであった。千草は梅乃家五郎八の好意に感謝をしているが、千絵は元は直参とはいえ梅乃家のあやしい感じがあまり好きではないようだ。




所謂「山城屋事件」は明治政府に衝撃を与える。そして、その事に最も怒りを露わにしたのが桐野達薩摩出身の近衛兵である。




西郷は明治天皇に付き従い西国巡行の際中だが急ぎ東京へと戻る。西郷が帰京すると桐野達は早速西郷邸へ押しかける。



「おいたちは長州の不正をもはや見逃すことはできん!」

「その元凶である山が有朋を叩き斬るつもりでごわす!」



いきり立つ桐野や篠原を西郷が説得する。



「まあまて!」

「いや!あげな汚い奴を陸軍大輔近衛都督として仰ぐ事はできもはん!」

「お前たちの気持ちは良くわかる!じゃが反乱は反乱じゃ!流行ってはならん!」

「反乱ではごわはん!天誅でごわす!」



集まって来た数十名の陸軍近衛隊の面々は桐野達の言う通りと気勢を上げる。西郷は不正は決して許してはならないが、今は山県でなければ出来ない仕事がある以上、むやみに斬ってはならぬと言う。




兵制改革に不満がある桐野達は納得しないが・・・。



「そんかわりおいが陸軍の面倒を見る!近衛都督も兼ねもんそう!」



同席していた従道が驚きの表情を兄隆盛にに向ける。



「そいでも文句があるなら聞こうかい!!」



一同、水を打ったように静まる。



「いや・・・!おいは西郷さぁがそう言ってくれるのを待っておりもした!」



桐野は西郷が自分達の上に立ってくれるなら言う事はないと言う。篠原もまた、西郷が陸軍大輔ならば「百姓町人兵」といった西洋かぶれを抑えてくると心底嬉しそうだ。



「お疲れの処本当にお騒がせしもした!皆!引き上げじゃ!」

「おお!チェストー!!」



桐野達近衛兵が帰ると従道は兄を心配する。勿論、もはや西郷が陸軍大輔になって桐野達を抑える以外に方法がなかったのは従道も分かっていた。



「兄さぁ・・・徴兵制に反対なんは薩摩だけではごわはん・・・」

「桐野達は兄さぁを不平士族の旗頭に担ぐのではと心配でございます」



「それも仕方なか。天命じゃ。一蔵どんや木戸さぁが戻って来るまでは」

「近衛兵という破裂段の中で昼寝をしている他なか・・・」



従道は「一蔵」という言葉を聞いて複雑な表情を浮かべる。本来ならば既に岩倉使節団は帰国している時期だったのだ。ただ、大久保達は西洋の文物の吸収に余念なく、帰国期限を半年以上過ぎても戻る気配がなかった。



「兄さぁ・・・」

「おはん、案外心配性じゃなぁ・・・若かくせに白髪になっぞ・・・」



西郷は従道の心配そうな表情を見て「心配するな」とでも言うように優しい笑顔を向けるのであった。




この時から西郷は筆頭参議に加え、陸軍元帥と近衛都督の就任を引き受けるのであった。

翔ぶが如くのあらすじ第36話下巻「不忠」

兎にも角にも、西郷が陸軍元帥に就任した事で桐野達の暴発はひとまず収まる。幸か不幸か山城屋は暫く後に陸軍省内にて自決。山県への追及はひとまず収まる事になる。



「西郷参議、この度はご心配を・・・陸軍省御用達と言うのは・・・」

「山県さぁ!人の上に立つものは腸の中まで清くなければならんとおいは思いもす」



西郷はこの後に及んで言い訳を述べる山県を制すると、桐野達の暴発は自分が押さえるので、兎に角、兵制改革を進めるようにと命じる。



「腹を切る代わりに気張ってくいやえ」



山県は陸軍中将のまま兵制改革を進めるが、政府のやり方に江藤が反発を強める。兵制改革への予算800万円が大蔵省(井上馨)に認められる一方、司法省の予算は要求の半分も通らなかったのだ。



「これでは長州の私政権である!!!」

「これ以上の言い掛かりはゴメン被る!」



二人の対立を板垣は懸念する。



「西郷参議・・・このままでは江藤は井上もやり玉にあげましょうな・・・」

「既に井上君の良くない噂は届いていると思いますが・・・困ったものです・・・」



西郷の耳にも井上の「良く無い噂」は届いていた。




西郷にはもう一つ頭の痛い問題があった。
久光である。




明治天皇の共として鹿児島への帰国した際に久光への挨拶が無かった事に激怒。有村俊斎が上京し、再度の帰国と久光への謝罪を要請に来ていた。



「久光公は主君に挨拶もなく戻った事に殊の外お怒りじゃ」

「あ、あん時は・・・」

「言い訳はききもはん!おいと一緒に戻ってくいやえ」

「そいは出来ん」

「ならば・・・」



有村俊斎は刀に手をかけるが・・・。



「そいも仕方なか・・・」

「吉之助さぁ!おいはおはんを斬れん!頼む!戻って久光公に詫びてくいやえ!」



大河姫

俊斎は調子だけは良いなぁ・・・コワモテが通用しないと思ったら泣き落としw




有村俊斎の泣き落としに西郷は再び鹿児島へ、今度は久光に会うために戻る。謁見の間では有村俊斎に加えて大山格之助も控えていた。




大山は兎に角謝罪をすること、そして、一方で久光の苦しい立場についても話す。




政府のやり方に不満があるのは薩摩だけではない。諸国の不満分子は「薩摩に久光公あり」と政府への不満をもって陳情にやって来る者も多く後に引けないのだと。




程なく、久光がやって来る。平伏する西郷。



「吉之助・・・!その方どげな顔で儂の前にまかり出た!!!」

「帝に供奉して帰国のおり一遍の挨拶もなきは代々の主君を軽んじた諸行じゃ」

「切腹はおろか、打ち首に相当する大罪である!」

「帝に上程した我が14箇条の意見はどうなった!?」

「未だ返答がないのは返答の用無しと其の方共が申し上げたに相違ない!」



久光は身分の上下を明らかにする事や帝のお召し物は日本古来の伝統によること、人材を広く登用し、政府の役人の信賞必罰を・・・。




そこまで言うと書状を西郷に投げつけ今の政府のありようでは国が滅びると怒鳴る。




そして。



「その方今すぐ職を辞して元の身分に戻れ!」

「そもそもその方の今日あるは亡き兄君の寵愛を受けたのが始まりであろう!」

「それを忘れ薩摩の兵力を操り九州の領地を奪う名度泉下の兄気味もお嘆きじゃろう」

「その方は恩を忘れた大戯けじゃ!!恥を知れ!!!」



→西郷大久保の身分は低くない?薩摩身分制度



西郷は「斉彬」という言葉にハッとした表情を浮かべる・・・。




久光はこの後も明治政府を批判し続ける事でその生涯を全うしますが、隆盛は国家の為に尽くしながら不忠者と罵られる死ぬより辛い人だったのです。

翔ぶが如くの感想36話「破裂弾中の昼寝」

今回副題を付けるとしたら「再会」でしょうか?千絵と姉の千草が矢崎八郎太の機転もあって再会。そして。西郷は最も顔を会わせたくない、会わせられない久光と再会。西郷は傷つかなければ生きてはいけない性分なんだ・・・。

翔ぶが如くの感想36話「久光と西郷」

何度か触れていますけど久光と西郷はよく似ている。考え方が似ている部分もあるのですが、なによりも「性質」が似ている。面白いのは斉彬と西郷の性質は、つまりは斉彬と久光も、あまり似ていない。




久光が帝に上申した意見書についても西郷はそれを全てが、



「世迷言」



とは思わなかったと思います。しかし、だから辛いんですよね。




久光の怒りに西郷の魂は「共振」してしまう。




因みに、大久保はそんな事はないと思います。大久保にとって「西洋化」は国を強くするための「信念」であり、それの邪魔になるものは容赦なく斬り捨てるドライさがある。




久光も本能的に「大久保に言っても響かない」事を分かっている気がします。確かに西郷も大久保も久光からすれば「裏切り」、控え目に言って「利用された」という気持ちになるのは十分理解出来るところですが、その相手は本来西郷というよりも、



「自らが取り立てた大久保」



にこそ最も厳しく問い詰めねばならないものであると思います。しかし、大久保に言った処で残念ながら響かない。
なので、西郷。



「そもそもその方の今日あるは亡き兄君の寵愛を受けたのが始まりであろう!」



西郷にとって唯一無二の主君斉彬。




久光に斉彬の名前を出され「不忠」と罵られた西郷の気持ちは察するに余りあります。




しかし、久光もまた「辛い」立場である部分もあるんでしょうね。大山がいみじくも西郷に説明をしていたように、新政府のやり方に不満がある者達が久光を詣でる。



「薩摩に久光公あり!」



久光公ならこの新政府の体たらくをなんとかしてくれる。ここもまた、似ていると思いませんか?




桐野利秋たち御親兵改め近衛兵たちは新政府への不満、変化への不満、を西郷ならなんとかしてくれると、こぞって押しかけてきます。




ただ、久光は糸が言っていたように、



「新政府許すまじ!」



と、徹頭徹尾反対をするだけで「気持ち」と「行動」が引き裂かれていませんでしたが、西郷は「気持ち」と「行動」が引き裂かれています。例えば、桐野達の「戦を百姓と一緒にするなんて許せん!」という気持ちには共感しながらも、「国民皆兵」が国家の為に必要であることは理解している。




最期、斉彬から下賜された短刀を抱く西郷の様子がその引き裂かれた西郷の苦悩を象徴しているようでした。

翔ぶが如くの感想36話「姉妹」

山城屋事件は山城屋が陸軍省内で自決する事で一応の決着を見ました。そして、山城屋に「身請け」されていた千絵の姉千草は矢崎八郎太の「お節介」が功を奏して再会、さらには山城屋邸の家宅捜索で捕縛されずに助かります。




山城屋と千草の関係は悪くないものでしたね。視聴者はそれを知っていますが、千絵からすれば、心ならずも山城屋に・・・!と思っていたんでしょうね。



「山城屋には感謝している処もあるの」



千絵は驚き理由を尋ねた時の千草の一筋の涙がね・・・。



「夜ごとの客を取らなくて済むようになった」



千絵は千草が病身の父親の為に「身を売った」事は想像していました。でも、この言葉を聞いて、自分の想像を、



「遥かに超えて」



辛かったのだという事を理解した、いやその辛さは自分には「分からない」事を理解したように見えました。




あと、千絵は零落したとは言え「お嬢様」のままで、気位は高いままですが、千草はそれなりに、いやかなり「世間の辛酸」を舐めているだけあって、「見た目」で簡単に人を判断しないようになっているように感じます。




梅乃家五郎八への対応がそれを象徴しているように感じました。




以上、翔ぶが如くのあらすじと感想第36話「破裂弾中の昼寝」でございます。

大河姫

今宵は此処までに致します。

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